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【連載小説 中篇予定】愛が生まれた日(56)集中講義‼政教分離は有り得ないということと廃仏毀釈

 この話、いつまで続くん?

 とゆきむらゆきひこが大声を出していた。

「西村さん」

 とおれも大声を出した。

「その人を帰さないでください。おねがいします。ぜったいに」

 西村とゆきむらが揉み合いになった。おれも加勢に行った。

 なんでや! 明日から仕事もあるし! なに言っているんですかゆきむらさん、あなたあの子の父親でせう? そうとも限らんやろ。ゆきひこおまへいい加減にしろよ。離せや。話しましょう。ダメですよ。絶対に帰しません。しゃーしぃわ! やめろ。ティキトイージーメン。何やこのガイジンは。ゆきむらさん! 落ち着けゆきひこ。あいた。グッドマン、プリーズ、カームダウン。ノー。アイムカルム。テンキュー。

 ゆきひこはグッドマンに羽交い絞めにされ、おとなしくなった。立ちバックのような体勢であったが、ぐったりしたので窓際のソファに座らせられた。

 メイじゃなかった。そう。1はこいつだ。おれとしたことが。ひとつの完全な勘違い。メイは真逆の聖女だった。

「メイさん、こっちに来てください。あなたの助けがひつよう、」

 と言ううちに、メイはゆきむらの隣に座っていた。

「ありがとうございます」

 と言って、ごめんなさい。何たる失敗。大失敗。修行不足。

 しっかりしろ、JJ。ここからだ。心機一転。やり直そう。何といってもこの場のリーダーはおれだ。おれが。

 心細い。おれは雪子を探した。雪子はすぐ傍にいた。もう大丈夫。

 さて。

 おれは手帳をひらいて、大昔(未来)に書いた詩を黙読した。いそいで。時間は有限だから。

……………………………………………

 管理する者とされるもの。

 その攻防は大雑把に、しかし全てを覆い尽くす言葉でいうと、政治VS宗教である。宗教というのは、細かい。政治は笊(ざる)のようなものである。

 富を一極に集中させようとする(政治)。分配する、あるいは富を無効化する(宗教)。

 トリクル・ダウンというのは元々田舎のうだつの上がらない田舎侍の子孫が提唱した理論である。これは間違っている。この三層構造は、最上層が滅茶苦茶である。統一した行動を取れていない。それぞれが、ぞれそれの思惑で勝手に行動している。貰えるものは一滴たりとも下層に垂らすつもりはない。うちはうち、余所はよそである。

 第二層においても、事情は変わらない。全く同じ。第一層の糞便、涎、御家取り潰しにおけるワンチャン。相続人不明の一等地。区画整理。性交はするが避妊しつづける被疑者たち。

 子どもを殺す元官僚。私は夢を持っていたが、誰もそれを理解しなかった。お金なんて持っていても何にもならないというシンデレラ・ストーリー。お盆と死者の日。イルミネーション。赤い羽根共同募金。愛。地球。

 最下層に降りてくる輝くフィクションたち。

 哄笑。大笑い。噂話。ロック・アンド・ロール。それと歌謡曲。除夜の鐘。108の平等。

 さあ、行こう。もっと下層(仮想)へ。

 純粋なフィクションを求めて。ニルスの不思議な旅。

 滝つぼの傍らにある茶屋。パンの耳を貰う若い女。

 もっともっと。もっと。

 売春する者とそれを買うもの。どこにも居場所がないのか。

 みなしごと余りにも遅い構造。ほぼ無力な世界連合もしくは世界連盟。

本稿つづく

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#愛が生まれた日

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