【連載小説 短篇予定】美の骨頂⑬この話のエピローグを先に話しておきます、切りがないから
2024年、うちが上京してから一年と半年が経って、色々なことが変わりました。
ラサカさんは先物取引にハマり、儲けたりすったり、もんだりで、そのうち会社のお金も横領したのがバレて馘になり、東北に帰って横領系ユーチューバ―になり、最近フォロワーが3000万人を突破しました。川口市の高級マンションを買い、助手のクルド人家族を住まわせ、そこを根拠地に小口の融資をしているそうです。無許可で。
凪子は清流さんを色仕掛けで篭絡し、今はふたりで町田で喫茶店をやっています。来月が臨月です。
時間軸でいうと、その前に、桃子さんが突然家出し、新幹線と電車で四国に行き、四国では徒歩(杜甫)で旅行をはじめました。なんとか巡りというものだそうです。そのうち消息が途絶えました。
弱男さんは今、氷河亭(古着屋)の店主です。七十七万の返済を求めて那覇に行き、エーリー先輩と会ったそうですが、ガールズ・バーで豪遊し、そのときの会計が丁度七十七万円也でした。店にいたベトナム人の見た目は中学生のような女の子(ホー・ペミ)を連れて帰って、店の手伝いをさせています。ちなみにホー・ペミは日本語は一切話せませんが、可愛いです。さらに、最近聞いたところによると、ホー・ペミは満年齢で6歳だそうです。
氷河亭の猫は相変わらず、店のどこかで寝ており、ときどき姿をあらわして「ニャー」と鳴いています。
「あせちゃん、あんた、店手伝ってくれない?」
と弱男さん。
「無理ですよ。仕事もあるし」
「辞めればいいじゃん」
「いまの仕事、たのしいんです」
「なんのしごとなの?」
「ひみつです」
うちはShhhhhというようにして指を口の前に立てました。
「こいつも学校に通わせないといけないし、たぶん」
と言って弱男さんはホー・ペミを見ました。ホー・ペミは鏡をのぞいて化粧をしていました。子どもの描いた落書きのような顔になっていました。
連れて帰ったといいましたが、実際は、弱男さんの、あの、ごろごろのついたトランクの中にホー・ペミは入っていたのでした。なんか重いなと思いながら雑司ヶ谷のアパートについて、トランクを開けるとホー・ペミが飛び出して弱男さんに抱きついてきたそうです。ちなみにエーリー先輩の経営するガールズ・バーの、ガールズの時給は498円で、沖縄県内で見ても最低時給です。一方、8万8千円のシャンパンをあけさせると歩合で4989円を支給しています。中国人や台湾人、韓国人の観光客は簡単にそれを注文するそうです。ずいぶんと円も安くなったと思います。
うち。
よそはよそ。
うちの話をすると、そのはなしは時間軸を戻して、またトークをしたいと思います。
お時間のある方は付き合ってくださると幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?