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【連載小説 短篇予定】美の骨頂③開南の仏壇屋と性行為と南池袋公園

 仏壇は去年、おとうとおじいが開南の仏壇屋に行って買いました。店に入って十五分で、十六万円の、チャーギ材のぶつだんをかいました。

「おじい、あのね、十五分で買ったと言う事実は伝えないほうがよい」

「うん」

「女を連れてこなくて本当によかった。おんなというのは決断力に欠けており、きめるのに時間がかかるから。半日仕事になる」

「うんうん。お母さんがいたらよ、二三軒回ることになってた」

「ほんとにそう。しかしまあ、モノはよい」

「うん、うん。この上ない」

「二時間は居て、商談してたことにしよう」

「うむ。しかし、このまま帰ったらバレるなあ。お母さん家にいるし」

「じゃあ、どうしよ。昼ごはんたべようか」

「お腹空いてない」

「茶でものもうか」

「イラン。暑いしかえりたい」

 という遣り取りがあり、結局南極15分で買ったという現象は顕かとなりました。数日後仏壇が届き「これはよい」ということで一段落しました。

 そのころ、うちは短大生で就職活動真っ最中でした。

 女の就職先は、保育士、介護士、観光産業、売り子、配膳、学校の先生(幼稚園含、狭き門)、公務員(狭き門)、派遣、水商売などでした。私は当初ホテルに就職しようと思っていました。沖縄にはホテルもいっぱい、口も選び放題。イギリス英語も活かすことができると思ったのです。

「ホテトルか」

 とおとうが言いました。

「え?」とおかあ。

「クロークとかよ」とうち。

「家にいたらいいよ」とおとう。「かじ手伝い等をして、週末合コンとかに行って公務員と結婚すればよい」

「働いたほうがいいよ」とおかあ。「せっかく大学まで行ったんだから、何で家に居るのよ」

「ていうか、あせこはかれしいないの? 無職じゃなければター(誰)でもいいけど、おれは」

「いない」

「女子大なんかに通うからこういう顛末なわけよ」

 おとうはため息をついた。

「男もいるし」

「でも彼氏はいないさ。おまへ、まさか処女じゃねえだろうなあ……」

 シーンとなった。

 処女ではなかった。が、うちの場合は早過ぎたのかもしれない。一回しかヤってない。

 ここらへんの性事情はおかあには話してある。

 おかあ(Eカップ)は黙々とご飯を口に運んでいる。うちはBカップしかない。けどお尻はおかあより大きい。

 おとうによると、女は顔はどうでもよくて、身体が大事らしい。乳と尻は大きく。よく食べよく眠り、生理不順もなくほどよく健康でよく働くこと。金勘定にあかるく、少な過ぎずに、しかし多過ぎない小遣いを男に渡すこと。

 男は顔と背中。ほどほどに働き、よく遊び、酒をのんでギャンブルをして歌がうまいこと。持っている現金はすべてその日のうちに遣う。商談で最初に一万円ですと言われたら一万五千円を渡して話をつける。ほどよく健康。兎に角よく眠る。

 病気知らずというのは男女問わずよくない。大病の元。

 こういう原理の元にうちは育てられた。

 美醜はどうでもいいが女は顔はひろくなければならない。

 そういえばおかあも、おかあのおかあ(東京の祖母)も、顔がひろい。

 うちはどうだろう。

 おとうに似ているような気がする。外よりも内のほうが気が楽。

 いつしか、そのことに気づいたおとうは言った。

「おい、おまへな、島を出ろ」

「えー。どこによ」

「東京に行け。そもそも、おまへ、東京で生まれたのよ。故郷にかえれ」

 

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