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【掌編400文字の宇宙】自動体力失い装置

 子どもが2、3歳だったころ、これぐらいが一番手がかかる。体力もついてくるので相手をするのも大変。

 この頃は鳥堀の実家に住んでいて、居間に炬燵机があった。ある日「おにごっこしよう」と言われたとき、ふとおもいついた。つーかおにごっことかだる過ぎる。ゆっくり酒をのんでいたい。

「よし、じゃあおとうがおにな」

 といって子どもも追いかけ回した。「ぐへへへ」「きゃー、きゃっきゃ」

 何となく子どもを炬燵机の方に誘導する。そしてつくえの周りをぐるぐるまわるように仕向ける。

 こうなったら、後は放っておけばいい。子どもは自動で机のまわりを回りつづける。ときどき「ぎゃおー」とか「うまそうなてあしだな」などと言えばいい。どんどん体力がうしなわれ、しばらくすると疲れてやめる。寝る。

 思うのだが、人の一生というのはこういうものではなかろうか。私たちは色々なことをしているが、何故それを為すのか、理由など殆どわからない。

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