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【連載小説 短篇予定】美の骨頂

 うちの名まえは乳之下吾背子(ちちのしたあせこ)。辰年うまれの24歳。オー・エルです。

 いまは母の実家の阿毘薬品(あびやくひん)に勤めています。父と母は那覇の久米というところにいて、うちは那覇東高校を出て、OKJ短大へ。そこでイギリス英語を勉強して、二年前に上京。I袋にある阿毘薬品本社に勤務しています。

 いま居る部署は、治験をしたデータの統計をまとめる薬効課というところ。そこでエクセルを使って何だかよくわからない数字を打ち込むのがうちの仕事です。

 さいきんの若いひとは(男も女も)あまりお酒をのみませんがうちはうわばみです。父も母も大酒のみでしたので血筋だと思います。

 親よりもすこし上の世代のひとたち、バブル世代でもうすぐ定年の人たちは(男も女も)酒をのむのが大好きで、うちはよく、というかほぼ毎日さけの席に誘われます。

 のみっぷりがいい。

 と毎日言われます。

 大きな声ではゆえませんが、生まれた島では高校生になったら飲酒してもよい、ただし家で、といわれて育てられました。というかお爺ちゃんはうちの十三祝いの夜に「あっちゃん、もういっしょに飲もう」と言いました。

 お爺ちゃんもひいじいちゃんも大酒のみだったそうです。

 いっしょにのんで、お爺ちゃんはすぐに潰れました。お婆ちゃんに怒られました。

「あっちゃん、あんたなあ。水のませとけばいいのにさー。オジーはもう味もなにもわからんのによ」

 と言われました。

 うちはつぶれるのはおろか、酔うという現象も経験したことがありません。おとう(父)は、普段から口うるさい人でしたが、さけをのむと矢鱈に声が大きくなったり、早口で意味のわからないことをゆいました。歌をうたって。

「ことばは邪魔しかしない。おれの想いの3パーセントしか表出できない。ちなみに3パーセントというのは最初の消費税な。あせこ、おまへラッパーになれ」

 おかあ(母)は顔がひろくて、よく酔いつぶれて、仲間のひとに肩をかつがれて帰ってきました。

 すると、おとうが火のついたように怒り、喧嘩が発生しました。

 うちには兄がいたそうですが、生まれるまえに流れたそうです。妹か弟もできたのか、できてないのか、よくわからないそうです。

 ようするにうちは一人っ子で、女です。

本稿つづく

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