【掌編400文字の宇宙】口淫届

　２０３０年代、婚姻届けが廃止され、かわりに口淫届制度が新設された。提出する者はほとんどいなかった。

　結婚はもちろん残った。姓に関しては改名するものも、めんどくさいのでそのままにするものもいた。家族は勿論解体しなかった。ミドル・ネームも認められた。

　結婚式場は大繁盛した。祝儀は最低千円、最高でも１万円が礼儀とされた。式や披露宴のために自己破産する親たちもすくなからず居た。

　経済は停滞したものの、別に下がりはしなかった。生活保護受給世帯が大幅に減少した。

　寿命は高止まりし、自殺者数が減った。

　婚姻届けがなくなり（無論離婚届けも）、口淫届は激減したので、担当の公務員たちは別のもっと忙しい部署にまわされた。ちなみに離淫届というのは無かった。

　不倫が横行したが出生数があがった。性病が増えたので岡本ゴムが儲かった。ハーフが増えた。

　お互い様なので痴話喧嘩も減り、弁護士や警察、家庭裁判所が暇になった。

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