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【連載小説 短篇予定】美の骨頂⑮Stay with me......Stand by Me,my Precious

 ジンジャーエール二本で、凪子はべろべろに酔っていました。イキフン(雰囲気)によったのでせう。こういう状態は、うちにも覚えがあります。

 路地裏の裏で嘔吐する凪子を世話して、ふたりで歩きました。方向(が)よくわからなくなり、逆に進んで、大久保あたりに出ました。そこでうちは会ったのです。

 ダブルタン・ブラックに。この白人種少女は当時15歳でした。

 タンは、沖縄で仕事をしているシングル・マザーのクリトリス・ブラックの一人娘で、ハイ・スクールかジュニア・ハイ・スクールかわかりませんが、授業がだるいのでキャンプ瑞慶覧の宿舎を抜け出し、売春をしながら琉球海運のフェリーで鹿児島に上陸し、保護、売春、保護、売春、キャバクラなどをしながら九州を北上し、海底道路をあるいて下関に上陸し、そこでまた売春、バイト、メンズ・セラピスト、ヘルス嬢、恐喝、暴走族、トラック野郎、日米地位協定、誹謗中傷等を繰り返して東進し、岸和田のだんじりを挽き、奈良では尼僧になり、と思えば四国で桃子さんに会って酒を酌み交わし、また、和歌山では修験者となり、伊勢で真珠会社のモデルとなり、鰻や焼き蛤を食べ、貝塚の調査をし、藤枝では眼疾になり、三島では民宿の手伝いをし、富士山を登って笛吹川で拉致されたあげく結局温泉宿の女将になり、テレビにも出て、ある日、20時ちょうどのあずさ弐号で上京したのでした。

 うちと凪子がベンチに座っていると、

「あんた、オキナワのひとでしょう」

 と日本語でタンは言ってきました。

「はい」

「ふーん。お金ある?」

「ありません」

「(笑)ないわけないジャン。ここにあるヨ」

 といってタンはくるりと回転し、手を印を結んで結跏趺坐という感じになりました。

「覚悟は、ある?」

「え、」

「Live for nothing,or die for something」

「え?」

「貴女が決めて。今、ここで。Right here,right Now!!」

「えっと、なんの話ですか」

「お金無いんでしょう。お姉さんたちさあっ。途方に暮れているんでしょう」

 とタンは怒ったようにいいました。

「いや、あの、そうでもないです」

「え? お金あるの?」

「いや、は、まあ……」

 タンは急に笑顔になり、

「だったら奢ってチョ。あたしのどがかわいて死にそう」

「はあ、」

 とゆうわけで、うちと凪子とタンは韓国料理やに入り、サムギョプサルを食べました。全部吐いたので、凪子はもりもり食べて、顔が赤くなりました。

 タンは生ビールを連続的に飲み干しました。チビのくせに。うちは負けん気が起きましたが人種の壁とゆうのがあります。この白人女はしろいうわばみで、うちが4杯のむあいだに9杯のみました。

 そして、驚くべきことにその間に凪子よりも食べるのです。

 文明。

 とうちは思いました。


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