【短篇】花の金曜日事件
あるとき、東恩納照子は気づいたので世界言語学会でこう発言をした。
「あのう、花金(はなきん)と玉金(たまきん)て母音が全部いっしょなんですけど、どう思います?」
ざわ……ざわ……
「だれですか、これ考えたの?」
フッ、と鼻(花)で嗤う音。アングロ・サクソン人たちだった。
「カンケーナイね」
「いや……でも、アナキン(スカイウォーカー)もそうですよ」
!ッ………ざわ……ざわ……
「トールキン? ジャーキー? ウォーキン? スリッピン?」
「……フィリピンは、あ! よかったちがうッ」とフィリピン人たちはつぶやいた。
「ア、ナ、ア、キ(穴開き)……あ! よかったちがうッ」とアナーキストたちはつぶやいた。
「いや、ちがうからいいとかではなくて」と東恩納照子。
「はい、わかりました。お答えしましょう」と、仏人言語学者のカタキン・フクランデルはその場をおさめるように発言した。
「このばやい(場合)、Face/Offと呼ばれる言語学的な手法を使いましょう。花金、玉金、それぞれの頭二語を入れ換えるのです。それで解決しましょう」
ざわ……ざわ……タシカニ……サスガ……
いやいや、玉金と花金になるだけで一緒じゃん。と東恩納照子は思った。
「それはちがいます」
と、漢人の玉玉玉(タマタマ・タマ)が言った。
「たまたまは、タマ↑タマ↑、と、タマ→タマ→、の二種類があり、意味が違うわけです。ようするにイントネーションの違いです。このイントネーションのちがいに着目し、区別しましょう」
ざわ……ざわ……ナルホド…サスガ……
いや、花金と玉金、いっしょじゃん。と東恩納照子は思った。
「間に『イ』と入れたらいいんじゃないの」と菅井きんが言った。
タシカニ…
花金→はないきん
玉金→たまいきん
ざわ……ざわ……
ようわからんけど、何かいい感じだな。とみんなが思った。
まあ、いちおう、なっとくするかも。と東恩納照子も思った。
というわけで、この日久しぶりにみんなが菅井きんのことを思い出したのであった。