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【連載小説 短篇予定】美の骨頂㉑Viewing ten Thousands year,and always watching My Self.

 その瞬間、日付と月が同時に変わったので、うちは目を閉じて成長しました。経験値が限界まできて、自動的にステップ・アップしたのです。

 また同時に、それは老いのはじまりでもありました。うちは、ある種の、快楽の限界を知ったのです。同性との交合。ひとつの可能性を実現し、ケーケンしたわけです。まだ、若くして。

 酒池肉林といいますが、いくらうちでも池のようには酒はのめません。のんでも水溜まりぐらいです。限界があります。また、肉林といっても現実の林のように女体、あるいは男体があったとしても相手をできるのはせいぜい片手で数えられるぐらいでしょう。

「ときに意味もなくお金を持っている人がいる。毎食、オムライスを100人前注文してもお釣りがくるようなひとが。どうするつもりなのか。100人前のオムライス。完全に無意味な作業と咀嚼行動!」

 と、ある夜おとうが怒っていました。

「は? なんであんたは何もかも、そう則仏(則物)的にかんがえるわけ? 縄文人か。そんな無駄なことをせんがためにお金があるんでしょう。未来への担保やろ」

「はあ? タンポン? ばからし。一寸先は闇や」

「んなことあるか賭博やろうが」

「んだコラ」

「浮気もんが」

「あーん?」

「あんた、モテとるらしいの」

「はあ? だれによ」

「言うちゃろか、なまえ。はいはい、はい。まず、えーと、」

「まてコラ。証拠あんのか?」

「あるよ。Eメール見てみ」

「はー? あん……」

 おとうはそそくさと家を出て、海辺の、辻のほうに消えました。戦前は遊郭、現在は男性向けの遊興施設のあるあたりです。

「なーにが、闇よ。自分から消えとるらし」

 と、おかあは得意げに言いました。

 それはさておき。

 ヨガあけて、うちは支払いを済ませて宿を出ました。ひとりで。

 小田原の城に行くと、早朝散歩をしている老男女がいました。

「おはようございます」

 といわれたので「おはようございます」と返しました。うちとおかあは、老人に好かれます。おとうは、だれにでもすかれます。

 内地の秋は、もう肌寒いです。息を吐くとしろいかんじもします既に。

「あ」

 と思いました。

「仕事」

 と。

 電話をすると、誰もとりませんでした。どうやら今日は土曜日なのか、日曜か。休みみたいでした。

 ロマンスカーに乗って上京し、山手線と西武池袋線に乗って帰りました。

「貴女、見違えちゃった」

 と出迎えたお祖母ちゃんに言われました。

 石神井の池には、ラジコンの船が走っています。子どもたち。お祖父ちゃんは休日出勤をしていました。というか、なんとかいう会合らしいです。

 うちはもともとの、うちの部屋の二十畳に横になって、

「もう、こどもじゃない」

 と思いました。季節外れの台風が来ていて、よく眠れました。

 伯父さんの奥さん(ジャーガルさん)が冬用の毛布を掛けてくれていました。




 


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