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【連載小説 中篇予定】愛が生まれた日(76)愛別離苦
頼んでもいないのにこの世に生まれ落ちて、誰かを愛する。愛着執着する。
何の意味もないのに。
愛した、執した者たちは必ずほろびる。いなくなる。どこかに消えて。
ヘリも何処かに飛んでいった。
静けさや。
おれは店の外に出た。深夜の冷たい空気。いちおう季節はまだ夏が終わったばかりだとおもうが、もうずっと、先の話みたいになっている。
どうしよう。もう終わろうか。
というかそもそも終わる話なんてあるのだろうか。
ない。
有り得ない。
離れて別れてくるしむが、それでも人生は続いてゆく。
つーかおれは話を創れないので、目の前で起きていることを記録する。見たまま聞いたまま。機械みたいに。しかし機械とちがうのはDNAレヴェルの記憶量。何度も生まれ変わっているので、この眼前の現象に対する反応というものが起こる。感情とか気持ちとか。
いわゆる「詩」である。
堀口大學によると、これは水に映った月のやうなもので、掬う網はことばしかない。慎重(清朝)にせねばならない。
雪子。
雪子の話をしよう。
一言すればこの人は、女優である。声が大きく太い。度胸がある。乳も大きい。健康。体力が異常にある。食べることが何よりも好きでどこでも寝ることができる。金の計算が得意で、スケジュール管理も完璧。頼もしい相棒である。
つぎ、由希子。これは看護婦。今は労災病院にいる。おれの中高の同級生。愛嬌もあって明るくて口が大きい。よく笑う。バツイチ。あとは、何か事情があったけど、忘れた。
ユキノシタ。さっき、子を産んだ。帝王切開で。ゆきむらゆきひこの妻。市役所勤務。臨月で婚活パーティに来た。どいうこと?
西村。医者。同性愛者。パートナーはゆきむらゆきひこ。霊視ができるがきほん普通の人。
雪美。いま、ソファで寝ている。やる気はある若者だが、何をやりたいのか、おれには皆目見当も付かない。というかノロ・ウィルスはこの体から去ったのか、不明。
メイ。霊能力者(未来を見る人)。この人の話は幾つかしたはずだ。子どもの頃に生んだ子どもがいる。おれは当初、この人をサポートすれば場は丸くおさまると思っていたが、全然違った。いわゆる聖女。指導者にふさわしい人物である。そう思って見れば、そうみえる感じがする。可愛らしいし。
というわけで、どうにかしないといけないのは、ゆきむらゆきひこ。YYである。
さて。この父になったばかりの同性愛者(バイ・セクシャル?)をどうすればよいのか。
ほっておけばよい。という意見もあるだろう。
かんけーないし。
たしかに。
しかし世の中こういう、ちょっとしたことを放置することで三百万人が死ぬ事態を招くこともある。因と果というはそんなに分かりやすいことではない。
何かできることがあるなら、やっておいたほうがいい。
おれはそうしてこれまで生きて、そうやって生きようしてきた。
だって、ほかに何かやることがあるのかい。
ねーらん(無い)
本稿つづく