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【読書記録】「映像研には手を出すな!」大童澄瞳
実家にいて NHK でやっていた頃はその真価を知ることなくスルーしてしまっていたが、そこかしこで聞こえるハイクオリティな作り込みに惹かれて読んでみれば、期待を何倍も上回るとてつもない作品であった。
女子高生がアニメーションを作るという、今時流行りのマイナー×JKスタイルと思いきや、雑なビジュアルと一般大衆読者置いてけぼりの情報量で圧倒する。特に脚本・監督担当の浅草みどりがイメージボードに書き込む設定は目を見張るものがある。架空の飛行艇に飛行速度を計測するピトー管を書く人間がどれほどいるだろうか。そのあまりの情報量から用語集を作成しなければならない始末である。これを読めばすぐに博識を手に入れること間違いなし。
何も設定の緻密さだけでなく、アニメ制作にまつわる産みの苦しみ、追い求める理想とコスト・スケージュールという残酷な現実問題、自由人を束ねるプロデューサーの苦労といった、ものを作る現場につきものの厄介ごとをこんもりと盛り合わせている。何かものを作る人間は是非とも読むべき作品。