【読書記録】「蝸牛孝」柳田國男
ここの中で相対論の導入にあたり「方言周圏論」の説明があり、興味を持ったので読んでみました。
みなさんこいつの名前なんて言いますかね。
有名どころではカタツムリ、デンデンムシ、マイマイなんてのもあるでしょうが、その分布を雑に取ってみるとこんな感じに。
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2012-03-07-1.html
四角く表されている日本列島にて、およそ京都を中心に同心円状に分布していることがわかります。これを最初に提唱したと言われるのが、この柳田國男の「蝸牛孝」です。
ただし、(少なくとも改訂版の序で柳田が言うには)方言周圏論のみに関するものではないとしています。実際、方言周圏論は方言分布の説明の one of them に過ぎません。方言周圏論と同レベルで、いやそれ以上に、方言を語る上で外すことのできない3つ(柳田は3つ目を分けて4つとしている)の事実を挙げたことに、この本の意義はあると思います。
方言量は言葉ごとによって大きく異なる
蝸牛や雀などは全国各地に数多の方言が存在するが、松や桜はどこに行っても松・桜である。
方言領域は単語ごとに異なる
二つの地域で蝸牛に対して同じ方言を用いていても、土筆では別々の方言を用いているなど、方言の分布は各単語ごとに異なる。従って「関西弁」「鹿児島弁」などは括りとして大雑把すぎる。
方言境界では特殊な事例が多い
数語併存、複合など。二つの方言を合わせて1つの単語とする。また、地域単位ではなくもはや家ごとに方言が変わったりする。
あとは「方言が発生する要因に大きく寄与しているのは子供だ」と、童謡などの存在を示唆しつつ、この手の書物によくある膨大な具体例で読者を圧倒しにかかっている。こういう具体例だらけの本って、結構読むのしんどいんだよな〜。