【読書記録】「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」安宅和人
この手の自己啓発本コーナーに並んでる話って、あんまり読む気にならないんですが、最近 YouTube のレコメンドでちょくちょく安宅さんが出てくるようになって、「ありゃ?この人そんじょそこらの啓発系とは全く違うぞ??」となったので、気になって読んでみました。
『はじめに』の中で「専門家じゃないですが僭越ながら...」みたいに言ってますが、こういった「未来を全般的に考える」系の話って、専門家を集めるだけじゃなくてハブが必要になると思うので、普段からハブの役割をしている著者の話が活きていたな〜と。特に象牙の塔に篭りがちな日本の専門家には、スタートラインに立つのも危ういかもしれないような話がポンポン飛び出してきますからね。
まずは現代がどんな時代なのかを、AI×データ、Society5.0、指数関数的な成長などの側面を持ち出して説くと同時に、現状維持は実質衰退の一途であると喝破しています。
次いで日本の現状について。人によっては本を置いて目を背けてしまうかもしれませんが、国際的なデータをいろいろ持ち出して、日本の実情をケチョンケチョンに非難しています。経済成長、産業構造、科学技術の急激な衰退といった諸問題を、データを通して痛烈なまでに力説しています。ここは本当に戦慄する。
ただ日本をボロクソに言って海外に逃げようぜ、なんて無責任な人ではありません。この本の大きなテーマ、これからの時代に必要となる人材育成を、本の1/3近くを割いて説明してくれています。根幹のイメージは「キカイ的な人間ではなく、異人となれ」の一点。これを軸にして、データサイエンティストや AI-ready の人材を育てるという点を強調しています。
そこで現れるのが「そんな人材育成に割ける余裕がないんだよ」という話。ただこれは著者に言わせれば言い訳に過ぎないとのこと。実際データを見せられれば一目瞭然ですが、根幹的な人材育成にかかるカネって、社会保障とか年金とかと比べるとホントに微々たる程度なんですよね。これは確かに人材育成にリソース割かない方がおかしいってなる。
この本を一貫して描かれているのは、「今まで日本ボロ負けでしたよ。考えを根底から改めないと更に負け続けますよ。ちゃんとした国になりたいなら未来に向けて適切にリソース割きなさいよ。」ということ。なんとも分かりやすいが、耳が痛くなるような話が続く分、果たして読破できる「愛国者」の方々がどれだけいるんだろうか。