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【読書記録】「数学は最前世界の夢を見るか?」イーヴァル・エクランド

やはり話はガリレイの振り子の等時性から始まる。古代数学者は定規とコンパスで空間に関する理解を深めたが、ガリレイは常に同じ間隔を刻む振り子によって時間を計量可能にした。運動物理学の始まりはここからとされる。

古代ギリシア人が空間の数学を発見したように、ガリレイは時間の数学を発見したのである。

第1章末尾

光の屈折に関する研究でフェルマーの原理が登場すると、モーペルテュイがそれを力学に転用するまでが早かった。フェルマー自身は「光はなぜ最短経路を探して通るか」といった類の目的因には興味を示さなかったが、神秘的な魅力を誘う理論であることには間違いない。実際には光路長が最小とならない経路が例示されることで「最小」作用の原理は潰え、作用が停留するという現代的な見方が大勢を占めることになる。またファインマンの経路積分が登場することで、より一層神性が覗かれた形で理解されることになる。

力学の主眼は作用停留から解の特定に移るわけだが、特に3体問題以上では現代なお解法がない。今では多体問題は統計的手法を使うのが常套で、物理の人間には2体問題のような厳密解を求める手法は諦められているが、シンプレクティック幾何的として数学では大きな分野を占め、今なお発展を続けている。例の一つに、相空間の任意の等エネルギー面上にて、周期解が少なくとも1つ存在し、多くの場合無数にあることが、20世紀末になってわかったことが挙げられている。

リウヴィルの定理によって、物理的に実現される系では相空間体積が不変であることが必要だが、特に4次元以上の相空間にて解が実現される必要十分条件の探索は未解決問題らしい。ガリレイが始めた物語は、当面解決を見ないだろう。

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