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カバー株式会社は勧告を是正できるのか?

(令和6年10月25日)カバー株式会社に対する勧告等について、と題して公正取引委員会から勧告を受けたカバー。

内容は下請法違反。無償リテイクや支払い遅延とのこと。

谷郷社長は謝罪し、是正と再発防止を誓った。

ではなぜこのような事態になったのか。是正は可能なのか?


内容を見ていくと、どうやらLive2Dの製作で起きたことのようだ。(引用先:事例1~3)

Live2D製作はイラストレーターから上がってきた原画をモデリングし、髪を揺らしたり表情を付けたりと、2D絵を立体的に動かす作業である。その仕上がり次第では不自然にカクカクしたり、モデルの干渉が起きたり、違和感のある動きになったりととにかく大変な作業だ。

通常は仕上がった成果物を発注者が確認し、問題無ければ納品、モデリング料を支払って終わる案件である。

ではなぜ支払いが遅れたのか、無償リテイクが発生したのか。

 

①確認が発注者だけではない

報告書を読むと分かるが、確認は発注者だけでなく使用するVTuberも行っている。使用者に確認するのは当然かもしれないが、VTuberが修正を希望したら、リテイクが発生する。違和感のあるモデルは使いたくない。当然の感情である。

つまり確認とは、VTuberが使用してOKが出て初めて確認終了なのである。

 

②発注書等からは作業が必要であることが分からないやり直し

確認が発注者とVTuberだと分かったところで、発注書等からは分からないやり直しというのが無償リテイクになっている件。これはそもそも発注書に不備があったのかどうか。

発注者も苦労するだろうが、モデリングの出来という抽象的なものを具体的な言葉にするのは難しい。

発注者の気持ちになって書いてみる。表情差分は喜怒哀楽4つで、モデルの破綻が無く、左右の可動範囲は30度以上で、モーションは○○を参考に――。と、色々書くだろうが結局はモデラー任せだろうと想像がつく。クリエイティブな内容を発注者が100%具体的に書くのは難しい。

(モデラー頼りの発注書。その発注書に書いてないから有償リテイクだ!とは言い辛いかもしれない)

また、ココナラ等を見てみたがヒアリングして見積り、発注となっている。ヒアリング部分で細かい条件を詰めるはずだ。

で、大事なヒアリング時に使用者のVTuberは同席していたんですか?

まあ同席していても結局は使ってみないと分からないかもしれませんが……。発注時点で要望が出せていないから後から不満に思うんじゃないんですか?ヒアリング不足が無償リテイクにつながってる可能性がある。

 

③支払いはいつになるの?

モデルが完成して、検査期間(納入後5~7営業日以内)を経て、給付を受領となっている。カバーは給付を受領してから60日以内に支払いをする必要がある。

が、実際に支払ったのはカバーが納品完了と認識してから60日以内だ。(経理処理失念は論外なので除外する)

これ下請法知らなかったんじゃないの?ってツッコミたくなるな……。

そしてここでいう納品完了とは社内、使用するVTuberの確認が終わり、実際にお披露目(配信で使用)して、何の問題もないことを確認したらだと推測する。(お披露目した後もやり直しさせている事例1より推測)

これじゃ、いつ支払われるか分かったもんじゃない。

 

①~③を経て、これらを是正するにはどうしたらいいか考えてみる。

発注者、モデラー、VTuberが同席するヒアリングミーティングを行い、可能な限り発注書、仕様書に反映する。発注書に反映されなかったものに関しては全て有償リテイクとしてモデラーがきちんと請求する。

モデルの検査期間中にVTuberに確認させる。忙しい中大変だと思うがモデラーも死活問題なのでお互い様である。

検査が終わったら速やかに給付を受領し、60日以内に支払う。

検査期間後は全て有償リテイクだとモデラー、発注者、共に認識する。

 

カバーとクリエイターは距離が近い分、なあなあの関係になっていたのではないだろうか。

少しくらいの修正で請求するのはちょっと、みたいな遠慮は必要ない。

カバーは本件を是正したと報告しなければいけない立場だ。

関わった全てのクリエイターが案件を振り返り、発注書にない無償リテイクは請求すべきだろう。


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