おねーちゃんと話す、将来のこと。
「てーくんはさ、彼女できたらどうするの?」
食後のコーヒーを持って、スワイプスワイプいいねメッセージなどをしている僕の膝の上に座る…のを今日は遠慮してもらった。
「これ見られるのはさすがにおねーちゃんでも恥ずかしい。ので。」
「そっかー、まぁそうだね。ごめんごめん」
膝の上に座られると、触っているスマホを見せないのは無理だ。
さすがにスワイプスワイプいいねメッセージはちょっと…見られたくない。
「ほんと、がんばるよねー。年齢的に言ったら私の方が頑張らなきゃいけない気もするのに。」
テーブルを挟んで向かいに座り直したおねーちゃんが、からかいモードの笑顔になっていた。
「で、調子はいかがですかどうよ。昨日も『話進んでた人がメッセージリストから居なくなった…』って凹んでましたじゃないですか。」
「仕方ないよ、こればっかりは合う合わないが顕著に出るから。いい人に出会えるまで頑張らないと。……がんばらないと。」
「……結婚ねえ。」
「おねーちゃん、なんか家から言われたりした?」
「うーん、特にかなあ。よっぽど同僚のみんなのほうがあれこれ気を遣ってくれるくらい。危機感もまだそんなに。」
というか、とおねーちゃんが続ける。
「てーくんがどっか行かないと私本気でそういうのに向き合えなさそうだし、でもてーくんにはどこにも行ってほしくないし、それこそ結婚でもしてくれたら泣きながら出ていくかなあ。」
泣きながら、は無いかー。って言い直すけど、あまり冗談っぽくはなさそう。
「……結婚ねえ。」
「それこそ、てーくんは何か言われたりしたの?孫の顔うんぬんとか」
「んー、特には?」
「そっか。でもそういうことしてるんだね。」
「結婚したいというか、彼女欲しいというか… まぁ、好きになれる人見つけたいってところかなあ。」
「ふーーーーーーん。」
「結婚したいfrom:teina1017はやめよう?」
・・・
「彼女出来たらさ、おねーちゃんはいない方がいい?」
なんとなくお互いがスマホを触り始めて、なんとなくお互いがスマホから目を離したあたりで、おねーちゃんはそう訊いてきた。
「家からってこと?うーん、別にいいんじゃないかなあ。ダメって言われたら一瞬考えるかもしれないけど…」
「そっか、じゃあとりあえずそれでいいや。でもさ。」
「さすがに結婚とか、そうでなくても同棲とかって話になったらさ?」
「……まあ、一緒に住めなくはなるよね。」
「ふふ、ごめんね。困らせちゃって。そんなの当たり前だよね。」
この話おーわりっ!と笑顔に切り替える前の、一瞬の悲しそうな顔を見て、それでもそれは僕にどうにか出来ることでもなくて。
「ま、そうそうしばらくそんなことにはならないからさ。とりあえず今のふたり暮らしを楽しもうよ。」
そんな風に濁すことくらいしかできなかった。