スペイン語を勉強していたわけ

物心ついた頃、ラジオからスペイン語講座が流れていた。それが何故か、聞くのも野暮なくらい、当たり前のようにスペイン語とスペインの音楽が流れていた。

無意識のヒアリング体験を重ねたおかげで私は突然何かの拍子でスペインの地に放り込まれても何故か言葉が理解できるような気になっている。
そんな冗談はさておき、この機会に何故スペイン語にあんなにどっぷり浸かっていたのか、母に訊いてみた。

「ポルトガルの大使館で、お手伝いさんを探しているという話が高校の担任のところに来て。当時から真面目で先生にも気に入られていたので、真っ先に私に声がかかったの。
あの時代(1960年代初頭)に無条件で海外に行けるなんて、そんないい話、なかなかない。とても悩んだけど、早くに母を亡くした私には小さな弟や妹を置いて行くことはできなかった。」

その後結婚して私たちをもうけるのだが、子育ての喜びを噛みしめつつもポルトガルに行っていたらどうだったんだろう、という想像をNHKのスペイン語講座を聞きながらずっと巡らせていたんだと思う。

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