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『ベルファスト』見た直後の雑記

ユナイテッド・シネマ浦和にてケネス・ブラナー監督・脚本作品『ベルファスト』を見てきました。


要はケネス・ブラナーの北アイルランド・ベルファストでの思い出を映画化したもの。

タイプとしてはアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』が時代もモノクロという演出までも近いが、『ROMA/ローマ』はメイドの目線もあったが、『ベルファスト』は幼き日のケネス・ブラナーを投影したバディ少年目線が大半で、そのバディ少年目線によるアイルランド紛争を描いている。


そこが(時代は違うが)アイルランド紛争を扱ったケン・ローチ監督の『麦の穂をゆらす風』やニール・ジョーダン監督の『プルートで朝食を』とは違い、街中で起こる紛争がいまいちわからないという感覚は劇中のバディ少年も映画を見ている我々も同じだったりするので、そこの部分がケネス・ブラナー監督の上手さじゃないかな。


カトリック/プロテスタントの紛争・暴動もあれど、それ以上にバディ少年目線による小学校でのキャサリンとの淡い恋、いとこのお姉さんやおじいちゃん、おばあちゃんとの楽しい思い出や、父親の仕事で家族と揉める話など、思い出のベルファスト、1969年という時代をモノクロで存分に楽しむ。


幼き日のテレビで見た映画や家族で映画館で見た映画のシーン、クリスマスのおもちゃで遊ぶシーン、キャサリンとのやり取りなど少年期の楽しい思い出をふんだんにいれながらも、ラッセ・ハルストレム監督の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や少年少女映画の傑作『小さな恋のメロディ』にはならない。あくまでも、アイルランド紛争で揺れた北アイルランド・ベルファストという地こそが中心である。


こうした政治背景や父親の仕事の関係から思い出の地・ベルファストから移住をするかどうかのバディ少年、母親、父親、おじいちゃん、おばあちゃんなど家族全員が葛藤する。そこが痛ましいというかね。


しかも、今公開というのがタイムリーというかね。この映画におけるベルファスト、アイルランドの問題って、モロに今のウクライナに被らなくないかな? まあ、北アイルランド問題はほぼ内戦に近い問題やはりね、そこは頭によぎったよ。


音楽は北アイルランド・ベルファスト出身のヴァン・モリソンに任せ、この時代らしいオールディーズナンバーで彩っている。その中で個人的にグッと来たのが後半のダンスパーティーシーンで歌われるラブ・アフィアの「Everlasting love」。これ、この当時のイギリスでのヒットナンバーで、60年代のポップスのクラブイベントではたまにかかる曲だったね。


思い出ヒューマンドラマに寄せながら60年代の社会派ドラマを織り交ぜた秀作。

タイムリー要素を考えれば、アカデミー賞の作品賞受賞も十分にあり得るかも。

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