絵本ゼミ振り返り(第3回目)
ガンピーさんとの再会
「ケイト・グリーナウェイ賞」受賞作品の中から1冊を選ぶこと、それが絵本ゼミ第3回目に向けて出された宿題だった。
私が受賞作の中で知っていたのは唯一、「ガンピーさんのふなあそび」。
(ジョン・バーニンガム著。1970年ケイト・グリーナウェイ賞)
Mr Gumpy owned a boat
and his house was by a river.
30年ほど前に、英語と日本語で交互に読んだ「ラボパーティー」での記憶が音楽や言葉のリズムまで、まるっと蘇った。
そして、ガンピーさんのようなおおらかな大人にはなれないな、と、子育て渦中には自己嫌悪にさいなまれたこと、非現実世界のガンピーさんのことを、少し憎らしいとさえ思ったことまで思いだした。
私には与えられていないヒマと余裕をもってる大人だから・・・。
ジョン・バーニンガムへの親近感
ジョン・バーニンガムは、ガンピーさんのふなあそびで1970年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞しているが、1963年にBORKAで本賞を受賞している。
BORKAの7年後につくられたガンピーさんの絵本は、絵の作風ががらりと変わって、柔らかで、おおらかで、繊細で、愛に満ち満ちている。
ミッキー先生の解説で、この7年間に作者のジョン・バーニンガムは二人の子どもに恵まれ、子育てに追われていたことが分かった。
なんとまぁ、ガンピーさん、実はそうだったのですか、と、一挙に親しみを覚えた。
子育てのわちゃわちゃが、そのまんま絵本となったのがガンピーさん。ジョン・バーニンガムもきっと、宮沢賢治のように「そういうものにわたしはなりたい」と、理想を描いたのだろう。
忍耐の限りを尽くした末、転覆して水浸しになり何もかも台無し、という事態が子育てでは何度起こることだろう。
とにかく岸辺まで泳ぎつき、お日様に温めてもらい身体を乾かし、一息ついて、気を取り直す・・・。そんなことの繰り返しが、子どもに翻弄される子育て渦中だったよなぁ。
作者の背景を知って読むと、それまで見えてなかったガンピーさんの絵本の魅力と奥深さを味わえて、心が弾んだ。
今回の講義で心にのこったこと
「幸せ過ぎると創作する時間がない」
ミッキー先生がさらりと言われたこの言葉は、ローズマリー・サトクリフの人生について語られた中で強烈な印象として心にのこった。
ハンディがあるから何もできない、そんな中で、想像し、創造する力を発揮できるのが、魂をもった人間のすばらしさだ。
「私には不幸になる(傷つく)権利がある」という、サトクリフの言葉も味わい深い。
課せられた現実と自分の選択した結果を、潔く受け止めて、びしょぬれになりながらも、できることならばこうありたいという理想の在り方を想像し、どんなにささやかであろうともより良いもの、こと、を創造する・・・。
そうすれば、たとえ絶望の中にあっても命が輝きだすのだと思う。
そんな魂の力を、絵本から学ばせてもらい、講座のお仲間たちから紹介された絵本に次々と魅了されて、たくさんの絵本を注文してしまった。
魂こめてつくられた本の1冊1冊から、果てしない魂の冒険が始まりそうで、ドキドキする。