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【CSR・SDGs取組み事例】遺品整理と釣具店。互いのビジネスに相乗効果を生む買取企画

 遺品整理を手掛けるココピアと、釣具用品店のタイムがコラボして買取企画を行った。
 両社の出会いは2022年6月にTEGO-LABで実施したSDGsのワークショップがきっかけだった。ココピアは遺品整理の現場で発見した課題解決のため。タイムは釣具の買取需要を掘り起こすため。SDGsに通じながら互いのビジネスを一歩前進させるコラボとして2022年10月に試験的に実施された。ココピア取締役の藤原真由美氏(写真右)とタイム代表取締役の上田茂則氏(写真左)に話を聞いた。

話し手:
 株式会社ココピア 取締役 藤原 真由美 さん(写真右)
 株式会社タイム 代表取締役社長 上田 茂則 さん(写真左)

●企業紹介
株式会社ココピア

 岡山県岡山市に本社をかまえる。遺品整理・生前整理・特殊清掃の専門家として2012年に創業。片づけ・清掃という技術的なものだけではなく、お客様一人ひとりの人生や歴史を大切にした丁寧で心のこもった仕事が注目され、多くの顧客から信頼される企業に成長。2019年からSDGsを意識した取り組みをはじめ、就労支援事業所への研修や、SDGs推進コンサルタントとしてメディアを通じた啓発活動を行っている。

●企業紹介
株式会社タイム

 「釣具のタイム」を福山と岡山に直営7店舗展開。地元密着の釣具店として、瀬戸内海の魚を釣るのに適したオリジナルブランド「あんびっと(αmbit)」「STUCシリーズ」等を開発・販売している。
コロナ禍における釣り需要の拡大で釣り場のゴミ問題が深刻化したことを受け、エサパックやビニール袋を有償化。また、店内に衣服の回収ボックスを設置する等、環境に配慮した取り組みも展開している。


きっかけは遺品に釣具が多かったこと

――コラボの発案はココピアさんと伺いました。今回の取り組みを考えたきっかけを教えてください。

 藤原真由美さん(以下、藤原):弊社は、普段の遺品整理とかお片付けの現場に入るんですが、お客様の趣味にまつわるものを片付けることが多いんです。今までだったら、ほとんど廃棄をしてしまうことが多かったんですね。

 着物や基金属などは先に買取してしまうこともあるんですけど、釣具は亡くなったお父さんのものとか、親戚の方のものが一式残っていることもあって、家族の方もどれだけ価値があるものか分からず、処理に悩まれることが多いです。且つ、釣具はどの現場でも遺品として結構出てくるんですね。これまでは買取に重きを置いていなくて、廃棄をすることが多かったんですけど、コロナ禍で釣り需要が増えてきてますし、遺品として出てくることがあまりにも多く、それを捨ててしまうことに悩まれる遺族も多いと感じた時に、「釣具ももしかして買取できるんじゃないかな」って色々調べ始めたことがきっかけです。私たちもお役に立てることがあるのではないかと。

――そこでタイムさんとのコラボを思いつかれたのですね。

 藤原:釣り需要の高まりから、釣具屋さんと連携できれば、お互いにプラスになることがあるんじゃないかと思いました。

 そこで、セミナーでご一緒したタイムさんにご相談させていただいて、店内のスペースをお借りして買取の催事をやってみようということになりました。

 上田茂則さん(以下、上田):業界では他の釣具店は既に買取をされているところも多いんです。

 ただ、うちでやろうと思うと査定がネックで。今回査定はココピアさんと関係のある会社さんとでしていただけるということだったので、それならばお願いしたいなと思った次第です。

――もともと買取はしたいと思われてたんですね。

 上田:そうですね。釣りって1種類の魚をとっても、釣り方が年代や流行でずっと変わっているんです。それに伴って竿やリールといった道具も変わる。道具を揃える人はとことん揃えますから、どんどん道具が増えていくんですよね。

 なので、弊社としては買取を通じて買い替え需要を掘り起こすことが一番の狙いでした。

 さらに、景気があまり良くないときは、新しい商品をどんどん買っていくことって少ないと思うんです。持っている物を売って、お金を作って買っていくスタイルの方が新しい商品を買いやすい。うちの場合、自社だけだけそういったサイクルが作れなかったものですから。お話しいただいたときはいい流れが作れるのではと。とりあえずやってみようという気持ちでした。

試験的に柔軟に、条件を変更しながらの実施を

――今回の買取企画の仕組みはどのようになっているのでしょうか?

 藤原:弊社は元々、買取がすごい強いわけではないので、今回は釣具の買取実績のある買取業者さんに協力をしてもらいました。基本的に買取は「古物商」の資格がいるんです。こちらは弊社も協力いただいた買取業者さんも持っていて。加えて弊社は産業廃棄物の資格を持っているので、もし買取ができず廃棄する場合も、こちらできちんと廃棄させていただく流れは作ることは出来ました。会場はタイムさんの店内スペースをお借りしてブースを設けて、そこで実施したという流れです。

 上田:買取企画は3店舗で実施しました。10月の土日を使って、1店舗あたり土日の2日間で実施して合計3週に分けて行いました。

 店舗では会員カード「タイムフレンドリーカード(TFカード)」を導入してまして、お客さんに購入金額に応じてポイントを付与しているんです。弊社として今回の企画の狙いは買い替え需要を掘り起こすことだったので、買取も現金ではなく、TFカードへのポイント付与という形でやろうと思ったんです。

 しかし、いざ蓋を開けてみれば、持ち込みされたお客さんから「現金の方がいい」という声がとても強くて。最初から「イレギュラーなことがたくさん起こるだろうから、臨機応変にやっていきましょう」というスタンスだったので、すぐに現金対応に切り替えまして、現金+ポイントという形になりました。

――現金orポイントではなく、現金+ポイントなんですね。

 上田:これはココピアさんからの提案だったのですが、全て現金ではなく、20%くらいはポイント付与にするとか、「少しでもタイムさんに貢献できるような形にした方がいいと思うのでということでした。現状、定期的に開催しようという話になってますが、今後、全部現金がいいというお客さんが多いようなら変わるかもしれません。

 藤原:本当は、その場で買って帰ってもらえる仕組みにできると一番いいんですけどね。

――実際に3店舗でどのくらいの方が買取サービスをご利用されたのでしょうか?

 藤原:実際に買取されたのが約30名でした。

 上田:初日なんかは、ポイントのやり取りしかしてなかったので、「じゃあいいです」と断って帰られた方が5・6人いたと聞いてます。

 それと、店舗によっては安いものをたくさんお持ち込みされてたり、値段がつかないような商品もあって、持ってきていただいたけども買い取れないケースもありました。別の店舗だと良い商品を持ち込みされて、高額で買取ができたといったように、店舗ごとにそういった差はありましたね。持ってきていただいても全てが買い取れるわけではなかったです。

 藤原:3店舗の合計人数としては、買取できなかった人の数も合わせると、50人くらい来られたと思います。

買取をブラッシュアップして来店促進へ繋げたい

――今後は定期開催されることになっているんですか?

 上田:そうですね。明確な日程までは決まってませんけど。

 藤原:次のタイムさんのDMを打つタイミングにも合わせて、今回開催した店舗さんに加えて、他の店舗でもやってみるかって話もしています。新しく違う店舗でもやりつつ今回よかった店舗でもできらたなって。

 上田:比較的良い商品が売れている店舗が今回買い取りを実施しなかった店舗でもありますので、そういった店舗でも開催できればと思います。実際にスタッフから「うちの店舗でやってください」という要望もありましたし。

 藤原:弊社のスタッフは「めっちゃ楽しかった」って言ってました。普段入らない釣具屋さんで実施できたこともそうですけど、ポイントより現金の方がいいというお客さんがいたりとか、いろんなニーズがあるんだなって言うのは思いました。逆に言ったら、今度私たちが別の場所で告知をすると、今まで釣りをしてなかったけど、この機会に家にある道具を売って、新しい道具で釣りを始めようかなとか、いろんな入り口があるのかもしれないです。

 上田:釣具以外のものを買い取ることも検討しています。例えば、今回協力いただいた買取業者さんはお酒をメインで買取されているところで、弊社のお客さんは高齢の方が多いので、良いお酒を家で眠らせている方ももしかしたらいるかもしれない。それが現金やポイントに変わるのであれば持ってこようという人もいるのではないかと。今後は釣具はもちろんのこと、それ以外のもの買取できないかなと思っています。

 藤原:実は、釣具以外をどう提案しようかなという話をしてたんですけど、上田社長にそれを聞いていただいた時に「それもそうですね」って受け入れてくださったんですね。最初は反対されるかなと思ってたんですが。(笑)

 上田:結局、お客さんにお店に来てもらうことが大事なだと思っているんです。来店する動機が一つでもある方がいいと思うので、ちょっと様子を見るだけでも来れたら良いなと思いますよね。

――それぞれ、今後の展望を教えてください。

 上田:メインは釣具の買い取りですね。10月に開催しましたけど、結構急ピッチにとりあえずやってみようというスタンスで実施したんです。最初は蔵王店から始めたんですが、お客さんが少なかったんですね。原因の一つが告知不足だったと思うので、この企画を続けていくことで、タイムは買取やってるよねって形になってくれば、もっと釣具の買取の循環が良くなっていくと思いますので。続けていくことで、そういったものが大きな輪になるかなと思っています。

 藤原:買取ということでいえば、弊社としてはタイムさんとのコラボを皮切りにどんどん実施していこうということも考えられると思います。

 買取は自社の中の取り組みで一応あるので、そこのブラッシュアップとちょっと仕組み化しようっていうふうになってて、買取ができるスタッフが増えていくと販売部門とかそっちの流通部門を障害者の方に行ってもらったりとか、その雇用をつくろうかとは思っています。

(記事初出:2023年1月12日)


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