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「海に眠るダイヤモンド」を何度も見返している その1(ストーリー編)

みなさまいかがお過ごしでしょうか。最近はまったドラマのことを書きます。記事は少々長く(5555字)なりましたが、読んでいただけると幸いです。

はまったのは「海に眠るダイヤモンド」。最高のドラマでした!ネットで何回も見返し、何度涙したことか。2回目以降はもう最初の方から、要所要所で泣いていました。公式等のショート動画でも泣けてきます。解説版を見たり、さまざまな人の考察を読んだり、いちファンとして。そして、ドラマとしては初めてサントラを購入し、主題歌は何度も繰り返し聴いています。いい音楽と詩です。そして、今は、もう私にとって”軍艦島”ではなく”端島”となりました。そんなこのドラマを多角的に書き記すことができたらと思っています。

この記事は、ドラマの”ストーリー”について書こうと思います。この後”演出・小道具・名前編””現代と端島編”を書ければと考えています。どれだけハマったか。色々と調べながら書いているので少々時間がかかるかもしれません。この文章も書き始めてから推敲する時間も含めて数週間が経ってしまいました。

それほどまでになる前

しかし、ドラマに対してリアルタイムでそこまでの興味を抱くようになったわけではありません。2話で離脱した後、、放送が全部終わって、やっぱり気になって溜めていた録画を見返してからハマりました。

話を少し前に戻すと、軍艦島の遺構(廃墟とは言いたくありません。遺された構えかと。)は、その昔、20歳くらいの時にどこかの本でその写真を見て以来、35年越しでそれなりに興味がありました。また軍艦という呼び名に興味をそそられていました。そして、偶然このドラマが始まる数ヶ月前に”軍艦島超景”という写真集を古本屋で入手し、遺構と植物の、まるでラピュタのような風景や、台風の大波に島が洗われる様子(船が波をかぶるような)が写っていて、昔見た写真とは違う超風景(まさに超景)に驚いていたところでした。

しかし、その興味は写真の被写体としての遺構の風景であって、その背景にある産業や生活にはなかなか想いが及びませんでした。もちろん自分の勉強不足もあります。このドラマは、そんな軍艦島を舞台にしているということで大変期待していました。第一話ではその情景がとても活き活きとしっかり描かれていて、生きている端島(炭鉱とアパートの島)の映像に魅入ってしまいました。しかし第二話”スクエアダンス”で「ん?三角関係ならぬ四角関係の恋愛ドラマ?現代の謎のおばあさんとホストも絡めて?」(今思うと、それは何とも浅はかな考え。。ドラマ初心者ですみません。)その後は年末の仕事等の忙しさもあってリアルタイムでは続きを見ていませんでした。

そして一気に感動モードに

それでもやはり軍艦島のことが気になっていたので、年末の休みの時に一気に録画を見て、そして、イズミさんが朝子さんと分かったあたりから、とんでもなく引き込まれて、最後の10話では涙腺崩壊で切なさ等もあって感動して、その後は、コマーシャルなしのネット配信で、最終2話のディレクターズカット版も見ました。TVには無いシーンに痺れました。いやいや、ドラマでここまで作り込む?映画ではなくドラマだからこの長い様々なエピソードを盛り込んだ展開ができた?色々と調べると撮影(映像)に関して新しい試みもあったようで、並々ならぬ制作エネルギーが注がれていたことも知りました。

端島の風景・生活・産業が活き活きと

”軍艦島”という当初の認識は、回を追うごとに”端島”となっていきました。それはそこに暮らす人々のリアルな生活の様子、喜怒哀楽が島と共にあり、外からの呼称ではなく、リアルな内からの”端島”が見えてきたからです。ドラマとしての脚色はありますが、端島について調べたら、ストーリーの随所に、本当にあったエピソードや災害・事故が散りばめてあって、それらも含めて違和感無く、だんだんと自分の中に確かな感触となってきました。まるで一緒に生活していたかのような。そうして、現代の玲央と鉄平の対比もその意味を何となく理解していきました。

端島シーンの時代は”Always三丁目の夕日”と被り(朝子は六ちゃんより8歳先輩ですね)ますが、端島でのストーリーは、社会の闇までしっかりダークに、タバコの煙、写真現像のアンモニア臭(鋼市が荒木家を監視していた部屋)、さまざな料理等と共にまさに匂いが感じられるように描かれていて、それは玲央の現代の闇とも繋がって、とても良く組み込まれたドラマだと思いました。端島は一島一家で、当時の社会の闇の部分の他は、理想郷とでもいうべき、家族のような人間関係とその思い出の詰まった場所、そして、当時としては外界にはまだ無い近未来的な立体都市空間や家電製品による先端技術都市として活き活きとしていた様子もわかりました。

鉄平は幸せだったか

そのような端島での濃い生活の後の鉄平の逃亡人生は、観ていてかなり辛く感じました。なぜ人の良い鉄平が逃げ回らなければならないのか。なぜ朝子や端島と分たれてしまったのか。初めはかなりショックを受けました。一瞬、もし、リナが端島に来ていなければ、、、と思ったりも。しかし、そういうストーリーなのです。その上で鉄平や皆がどう生きたか、かと。リナも一生懸命生きました。みんな運命や業に押し流されています。そして、朝子と玲央と誠は出会ったのです。

しかし、何回か見て、さまざまな考察等も読んで、全ての運命の流れをそのまま受け止めた鉄平は後悔はしていなかったと思うようになってきました。鉄平がただ一つ心配だったのは朝子に済まないことをした。朝子が後悔しないようにしなければいけないと、リナとの脱走を偽装し続けた。しかし、最後まで独身で、庭にコスモスを育て、朝子たちや端島のことを遠く見守って想っていたのだと思います。鉄平は100点満点の幸せでは無いかもしれないけど、その時できることを精一杯した。その時の最善の選択をした進平兄と同じような。その鉄平が貫いた信念は、長い時を超えて朝子に伝わり、だからこそ誠と朝子は再会でき、朝子を通じて玲央にも伝わり、結果的には報われたと思います。

鉄平は長い時間をかけて端島にまつわる人々を幸せにできた。朝子や玲央や誠、池ヶ谷家、古賀孝明さんにも玲央を通じて鉄平の思いが伝わったのでは無いでしょうか。鉄平本人は信じていたこと(父の思い、兄の思い、家族への想い、端島への想い、朝子の幸せ、未来の幸せ)を行動に移したので、結果、辛いこともあったけど全体として幸せに生きたのでは無いでしょうか。

特に端島を眺めて暮らした晩年の20年弱は、ささやかなご褒美でもあったかもしれません。そして、自身の寿命の2年前に端島にダイヤモンドを置きに戻りました。きっと、朝子が十分に成功したのをメディア等で見届けて、自分の人生の残りが少ないであろうことも悟って、端島に自身の想いを置きに戻ったのでしょう。悔いは0では無いかもしれませんが、成し遂げた、仕方なかった、十分に頑張ったと思います。端島のすべての人の幸せを願った鉄平でしたから。

やはりストーリーとして、玲央と鉄平が、実は微妙に似ているようで似ていなかったのはとても良かったと思います。これで玲央が鉄平の遠縁だったりしたら、”血縁だから”という閉じたストーリーになっていたと思います。血縁では無くても、それでも鉄平の想いは伝わる。”想いこそが大切”という希望が残ったと思います。だって、玲央が受け止めた鉄平の想いは、端島のすべてを愛したこと、家族や仲間を信じたこと、未来を信じたことと言ってもいいかもしれません。鉄平は端島の見える家で晩年を過ごせて幸せだったと思います。

朝子と鉄平

鉄平は端島の幸せを願っていた。朝子のことも大好きだったけど、ちょっと鈍い鉄平は、運命に翻弄され、朝子の想いに応えることができず、しかし、端島に生きた人々全員を幸せにするために、進兄のようにその時のベストを選択したのだと思います。鉄平が鋼市に追われれば、端島の人々は追求されなくなるし、誠もリナもハルも”朝子”も守ることができる。”端島の全てを背負った”のだと思いました。

それは朝子のセリフからもわかります。朝子が、端島の屋上緑化の作業の時に漏水した家の対応に当たっている際、手伝いに来た鉄平のことを「端島の事は全部自分の仕事だと思うとるとです。」って。(若干、嫌味っぽく。)しかし、そんな鉄平を好きになった朝子。最終回の一面のコスモスと端島の風景で、イズミは「あぁ、私の好きな”端島の全てを愛した”鉄平は、そのまま”全て”の想いを貫いたのか。」と思ったのではないでしょうか?

少々悲しい見立てですが、鉄平があの時に朝子にプロポーズできても、その後、幸せになったかは不明です。その予兆もあります。何しろ、視ているこちらが心配になるくらい鉄平は鈍い。虎さんの方が敏感。鉄平は朝子に告白し、朝子からコスモスの種をもらった時、その意味を朝子に聞き、せっかくいい雰囲気だったのに朝子はちょっとプンプンしながら「コン、ふうけもんが。」と言っています。鞍馬天狗の件も「鉄平、ちっともわかっとらん」と嘆いているし。賢将は鉄平に「初恋はうまくいかない」と言って、鉄平は「俺にとっては初恋じゃないからセーフ」と、初恋がダメなことは認めつつ自分はセーフ。いやいや、朝子にとっての鉄平は初恋相手だから、暗に朝子側からはアウト?これは賢将からのアドバイス?と思ったりしました。鉄平はその辺りが本当に鈍い!!と思います。また、朝子は朝子で「端島の朝子じゃない朝子になってみたいわぁ。」とも。ソレは鉄平がいなくなったせいもあるとは思いますが、それだけではなく、朝子の切実な想いなのだと思います。二人とも若かったのかも。

朝子の想い

リアルにプロポーズができなかった鉄平は、ダイヤモンド(ギヤマン)を後生大事に持ち歩き不器用に朝子と端島への愛を貫いたようにも思いました。朝子は最後に、一面のコスモスを見て、鉄平の不器用で純な、あの時の想いを再確認したと思います。”道は分たれたけど、それぞれ頑張って生きたね”と。突然いなくなった鉄平を許し、自分の今の気持ちともしっかりと向き合うことができたのだと思います。「朝子はね。気張って生きたわよ。」と。

そして端島の追想シーン(朝子の夢=鉄平の夢?)は最高にいいですね。鉄平のプロポーズに「待ちくたびれた」と言える朝子がいる。あの時の自分と、今はいない鉄平を迎えに行けた。若かったあの時は、不安やら何やら処理しきれない感情で夜明け(朝)の空を見上げていたのが、今は「待ちくたびれた」と涙目で万感の思いを込めつつ「キラキラしてる。」と。まるで今のイズミさんですね。(あ、同一人物か。)このシーンだけでも泣けます。何しろ演者が皆うまいです。

そして玲央

「あの夜の朝子さんを迎えに行こう。」と言った玲央に想いが受け継がれていく。その時、玲央は鉄平の顔をしていた!朝子さんがハッとなったのは、その台詞の内容もさることながら、玲央の表情のせいだと思います。残念なことに、その少し前のシーンで警察に相談し、門前払いの鉄平は絶望感が滲み出て、玲央の顔になっていた。(涙)

この物語は、眠って(挫折、屈折して”孤独”で同じところをグルグルして)いた日下玲央が、イズミを通して鉄平の想いを知り、朝子の想いを知り、朝子の家族を知り、誠や様々な関係者と出会い、人間として成長する物語と受け止めました。「全てを抱えて、一生懸命生きていく。それが人間たい。」と言う説教和尚の言葉が全ての登場人物の生き様を現していて、心に響きます。玲央がツアコンになって、夢を広げ、世界を広げ、出会った人々に想いを繋いでいくであろうラストは生きる希望が持てました。

1話から見直すと、鉄平はずーっと同じ価値観で、端島の全てへの愛という”根っこ”で踏ん張って生きてきたのに対して、”根無し草”の玲央には、いずみの家族や仲間への愛情、自身のやりたいことという”根っこが生え”て誰かの花に育っていくかのように感じました。主題歌の通りですね。現代と過去の出来事を行ったり来たりしながらそれが描かれているのは、見れば見るほど見事です。

鉄平が走るシーンと玲央が走るシーンが重なったり。双方、警察に行くも・・・。アイリ(Airi)の立ち位置はリナ(Rina)と似てる?名前はアナグラムに、、、微妙になっていませんが。現代の教会で振り向く玲央、そこにいる賢将、そして鉄平。端島の屋上緑化が今の朝子さんの仕事(人生)とか。社会の裏側の部分は昔と今とどうなのか?原爆(ピカ)の話もありますし、戦地に赴いた話もあります。いづみと玲央と澤田の行動の影響があったと思いますが池ケ谷家がまた一つになる様子と、一島一家の話。

”鉄平と玲央が実は似ていないことが最高に良かった”と思います。似ていないことで、血縁的な話ではなく、外勤さんの”鉄平の想いに話がフォーカスされた”から。そして、だからこそ似ていない玲央は”鉄平の想い”をより強く意識するようになったのだと思います。。

様々な偶然や縁、そして人を信じる想いこそが結果的には必然としてつながっていく。一生懸命に生きていれば。

それが私の感じたことです。最高に素晴らしいストーリーでした。”そして、今”。その想いを感じて一生懸命生きようと思う、私、”Tegeed Odoo”です。

中学生の娘と、妻と、家族で泣いたドラマでした。
トップの写真は私のダイヤモンドです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
また、次の記事でお会いできれば。

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