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「やさしさに包まれたくなっている人のための本」を、手紙社の部員が選んだら

月刊手紙舎9月号で花田菜々子さんがセレクトした「やさしさに包まれたくなっている人のための本」を、手紙社の部員が選んだら? 今回もバラエティに富んだ本が集まりましたが、特徴としては、猫の登場率高し(笑)。

✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!

1.『消えそうな光を抱えて歩き続ける人へ』
著/安達茉莉子,発行/ビーナイス

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まぁ、もう、表紙から優しさがダダ漏れて、あらせられる。どんな本か、ちょっと説明が難しいので、以下、「ビーナイスの本屋さん」より引用。

リトルプレスや挿画、イラストエッセイなどで活躍を続ける安達茉莉子の、2017年に谷中ひるねこBOOKSで開催された同名の個展をベースに、新たに描き下ろすイラスト詩集。

読み進めていくうちに「これは私のことだ」というページもあれば、「なんだかよく分からないなぁ」というページもあるだろう。そんな時はのんびり昼寝をする猫の様に、いつか分かる日が来るのかなぁと、ゆっくり待つ楽しみも持てる一冊。
(選者・コメント:猫占いはシャム族/S)

2.『ねこでよければ 』
著/やまもと りえ,発行/ホーム社

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関西弁のねこさんの「話聞きます屋」さん。やまもとりえさんのイラストの可愛いタッチ、優しい表情……漫画なので気軽に読み始めましたが! ずんずんと、その世界へ惹き込まれます。

きっとお話の中で、自分に重ねたり、あの人に重ねたり、たくさんのストーリーに出会えます。“あの人”のことを思い出したら、実際にお話してみるのも良いかも知れません。

リラックスして話を聞く、聞いてもらうって、いつまでも大切にしたいことですね(久しぶりについつい明け方まで話しちゃう夜更かしトークも体力は奪われど、凄くパワーが貰えます・笑)

暖かい飲み物をお供に、優しさの毛布にふわふわぐるりと包まれてください。ねこさんの「おっちゃんで良ければ、話聞くでー!」が聞こえて来そう?!
(選者・コメント:あんぬぷり)

3.『椿山課長の七日間』
著/浅田次郎,発行/朝日新聞出版

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働きすぎて突然死した、デパート社員の椿山課長。そんな主人公が極楽往生する前に、突拍子もない姿で現世に戻ってきて起こるドタバタ劇です。久々に読み返したら、現代的な冥土のシステムにクスッと笑っちゃいました。悲壮感がなく明快(笑)

そして、同様に事情を抱えて現世に戻った人たちの人生と交差しつつ進む話の中、各々が生前に気づかなかった秘密や嘘が浮かび上がります。そのやるせなさに嘆くだけでなく、亡くなった人も生きている人も、これからの未来を考えてとった行動とは…。

涙と笑いに包まれながら、周囲の人を思いやって生きている(&生きてきた)人たちのやさしさに、じんわりと心が温かくなる小説です。
(選者・コメント:はたの@館長)

4.『卵の緒』
著/瀬尾まいこ,発行/新潮社

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表題の「卵の緒」と「7’s blood」2編とも、家族の底に流れる哀しさを、それ以上の努力を込めた“家族”の優しさで上書きしていく物語です。

「卵の緒」の育生や「7’s blood」の七生のように、家事を自然に手伝って、大人な説明にあっさり誤魔化されてくれて、キョウダイで助け合うようなイイ子、では、なくても、子どもは大人の努力を汲もうとするし、自分の狡さを自覚してもいます。まったく子どもとは腹立たしいものです。

瀬尾さんは子どもらしくない七生や、へその緒にこだわる育生から、子どもの狡さや逞しさ悲しさを描きます。だから子どもから見える大人の優しさに、うっかり感動してしまいます。私はこんなふうに、子どもの疑問を受け止めて、笑かしてかわす、カッコいい親でいたい。すっごくすっごく難しいけど!
(選者・コメント:まっちゃん)

5.『ブルックリン・フォリーズ』
著/ポール・オースター,訳/柴田元幸,発行/新潮社

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人生って、時に思い通りにいかなくて、悲しくて惨めなもの。でも、かけがえがなくコメディのようで愛おしい。

肺ガンを患った60歳目前の元保険外交員、ネイサン。余命を故郷ブルックリンで過ごそうと独り引っ越して物語が始まります。そこで甥のトムと再会してから思いもよらない出来事が起き、出会いが生まれそして幸せが訪れる物語。

翻訳の妙で、読みやすく夏の生ジョッキみたいにグイグイ進みます。何気ない食事のシーンから、散りばめられる文化的背景、独特の言い回し(ジョーク)まで。心地よい読後感で楽しめます。

登場人物が個性的で、どうしようもなくて切なくて滑稽です。愛すべき仲間達だと思えます。全体を通して「やけっぱち」とは違う「それでも」という希望や笑いが、躍動感のある通奏低音として流れています。

最後のページを読み終わった時。優しさに包んでくれるのは、他でも無い「ありのままのあなたを受け入れ、今を生きるあなた自身」なんだと気付きます。
(選者・コメント:田澤専務)

6.『みさおとふくまる』
著/伊原美代子,発行/リトルモア

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文章は殆どなくて、ページをめくってもめくっても、ふたり(本当はひとりといっぴきだけど、ここでは敢えて「ふたり」といいたい!)の写真の連続。

「みさお」おばあちゃんと猫の「ふくまる」は、家でも畑でもいつも一緒に、同じ方向を見ていたり、見つめあったり、寄り添っていたり。みさおおばあちゃんは、笑顔も寝顔もチャーミングで、ふくまるの左右色の違う瞳はいつだって真っ直ぐだ。そんなふたりの日々を写真で見ているだけなのに、優しい気持ちが流れ込んでくる。

ああ、こんなふうに書いていても、この本の優しさは伝わらない。仕事や人間関係やいろいろなことで、心が凹んだ時、誰かの励ましや優しいコトバさえも素直に受け取れなくなった時には、ただ、ただ、この本のページをめくってほしい。コトバが無くたってじんわりと包み込んでくれる優しさが、ここにはあるんだ。
(選者・コメント:KYOKO@かき氷)

7.『七十二候の食薬レシピ』
著/大友育美,発行/学研プラス

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「薬食同源」とは、体質、体調、季節に合わせた食材を食べて、余分なものは排出し必要な栄養を吸収することで、心と体を整えること。薬膳や漢方が思い浮かびハードルが高い印象を持ちますが、この本には日本の気候風土にあわせ一年を72で割った七十二候をカレンダーにして、その時の旬の食材を使った家庭的で簡単なレシピが載っています。

例えば胃腸が弱ってる人にはお粥など負担のない優しいごはんを作ってあげますよね。それと同じことを自分にしてあげる。それが薬食につながっていくのです。

「秋は肺が乾燥してくる季節なので、潤す食材のれんこんを食べよう」など、体のことを知りながら作る楽しみもあります。なんといっても旬のものは美味しいですしね〜(食いしん坊は良薬に勝る?)
(選者・コメント:みやこ)

8.『ぼくとねこのすれちがい日記』
著/北澤平祐,発行/集英社

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イラストレーターの北澤平祐さんと飼い猫のホワンちゃんの暮らしのワンカットを、絵日記のように描いてある本書。人間の世界とネコの世界を、見開きを使い、同じシーンを、だけど違う目線で描いています。

北澤さんが描くかわいいイラストをたっぷり見ることができるだけでも楽しいのですが、猫に関する英語のことわざが書いてあったり、ピンクの猫のおばけが絵に隠れている仕掛けも、また楽しい!

動物を飼っていると、この子は今何を考えているだろう? とお話をしたい気持ちになりますが、ホワンちゃんが代弁してくれているので、少し夢叶った気持ちになります。そして、とても優しい気持ちになるのです。
(選者・コメント:三重のtomomi)

9.『マカン・マラン』
著/古内一絵,発行/中央公論新社

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ドラァグクイーン(女性の姿でパフォーマンスを行う男性)のシャールさんが、夜だけ開店する夜食カフェ『マカン・マラン』。様々な悩みを抱えた人が集まってきます。

ここに来るお客様はマカン・マランで提供されるシャールさんの優しさが溶け込んだお料理と言葉に癒されていく。人は一面だけで出来ているのではないと気付かされる。強い部分と弱い部分。意地悪そうな人も優しいところがあって。悩みを抱えるのは自分だけではない。

「一人じゃないんだよ」と、そっと寄り添ってくれるシャールさんの優しいお料理と、特別ではないけれど暖かい優しい言葉に、一歩前に進める気持ちになる。私も、そんな優しさが溶け込んだお料理が作れる人になりたいと思う。

疲れた心と体をほぐし癒されていく……そんなお話『マカン・マラン』の扉を是非開けてみてください。
(選者・コメント:ともこ)

10.『最後は会ってさよならをしよう
著/神田 澪,発行/KADOKAWA

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「さよなら」は、別れの意味だけではない。はじまり、終わり、愛情、笑い、切なさ、意外性、ヒヤリ……様々な物語の、様々な場面で用いられます。

可愛い装丁の本を開くと、140文字のお話と、ゆる可愛い挿絵がスパイスになっていて、どんどん読み進められます。なんといっても、物語の最後の一文が見事!(是非実際に読んでみてください!) 

読んでいると、人生の甘い思い出や苦い記憶がよみがえり、これまでに出会った周りの人を大事にしたくなってくる。そして、自分のことも大切にしたくなる。長い文章を読むのが苦手な人にも、是非オススメしたい本です(選者・コメント:進撃のジャスコ)


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