手紙社リスト映画編 VOL.2「キノ・イグルーの、観て欲しい『ニューヨーク(N.Y.)』な映画10作」
あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「ニューヨーク(N.Y.)」。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーのおふたり。5本ずつ、お互い何を選んだか内緒にしたまま、ライブでドラフト会議のごとく交互に発表しました!
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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。
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−−−まずは今回もジャンケンで先攻・後攻を決めました。勝ったのは有坂塁さん(以下・有坂)。やはり先攻を選択し、後攻は渡辺順也さん(以下・渡辺)に。収録スタート時点で実は2杯目のビール! 先攻を取った方はどちらも最初はこの監督の作品を挙げるつもりだったよう!?
有坂セレクト1.『マンハッタン』
監督/ウディ・アレン,1979年,アメリカ,96分
有坂:まずは王道中の王道。
渡辺:んー!
有坂:これ観たことある人いますか? ウディ・アレンて、もともとスタンダップ・コメディアン出身で、日本で言う芸人さんですよね。で、映画監督になって、最初はコメディ映画をね……
渡辺;うんうん。
有坂:わかり易いドタバタコメディを作っていたんですけど。この2年前、『アニー・ホール』を作った時に、人間ドラマがメインでその中に笑いが入ってくるっていう、割とその、シティ・コメディみたいな、そういうものを確立してアカデミー賞も獲り、いよいよウディ・アレンがアメリカ映画の新しい監督の第一人者みたいになって。で、その次に作ったのが『インテリア』っていう、笑いの要素ゼロのどシリアスな映画。家族崩壊の。その『インテリア』に続いて撮ったのがこの『マンハッタン』です。
渡辺:ね。
有坂:で、この3本の作品がやっぱりウディ・アレンが一番勢いがある時期に作った作品として語り継がれているんですけど、この『マンハッタン』はニューヨークへのラブレターとして作った作品です。生粋のニューヨーカーなので、その自分が愛するニューヨークの、もう存分にその魅力を発揮させようということで作られているんです。とにかく最大の見どころは、オープニングです。この映画ってモノクロなんですね。モノクロのニューヨークの風景をオープニングでは4分間にわたって、例えばヤンキースタジアムとかのニューヨークの名所がですね、次々出てきます。そしてそこにウディ・アレンのナレーションが被るんですね。小説を書こうとしているウディ・アレンが書き出しがなかなか上手くいかないというような。そのナレーションとニューヨークのモノクロームの風景。そこにかかるBGMがジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。
渡辺:うんうん。
有坂:あの名曲。
渡辺:これがいいんだよねぇ。
有坂:これもうたまらないですよね。
渡辺:ハマるんだよね。
有坂:すごいよね! で、この4分の最後に花火が打ち上がって、いよいよ本編がスタートなんですけど。この最初の4分間だけでひとつの短編映画と言ってもいいんじゃないかなというぐらい、魅力的なシーンになっています。本当にもう絵葉書のような、ノスタルジックなニューヨーク。こういうニューヨークが見たかったんだっていうシーンに溢れたオープニングにぜひ注目して観て欲しいなと思います。で、途中も、クイーンズボロ・ブリッジとか、グッゲンハイム美術館とかもう名所の数々が出てくるんですけど、僕の好きなシーンは、まさにこれから梅雨に入りますけど、雨のシーン。
渡辺:うんうん。
有坂:ウディ・アレンって言ったらもうね、だいたいの映画に雨のシーンが出てきます。彼はこう、スカッと晴れた日よりも雨の日の方が心が落ち着く、ということで、雨のシーンをけっこう物語の中で効果的に使うので有名な人です。で『マンハッタン』は、えーとね、自分が好きになった相手と公園でデートしている時に、ゲリラ豪雨みたいな雨に見舞われて、逃げ込んだ先がプラネタリウムっていうね。
渡辺:うんうんうん。
有坂:そんな最高のシーンもありますので。この映画観るとニューヨークに行きたくなること間違いなし。ちなみに……僕と順也はふたりともニューヨークに行ったことがありません(笑)。
渡辺:ふふふ(笑)。
有坂:そんなふたりが紹介するんですけれども、本当に僕はこの映画を観て「次行くならニューヨーク」って思える。まだ行けてないんですが、コロナでなかなか海外旅行もできない時期には、本当にショート・トリップできる1本でもあるかな、と思いますので、ぜひ『マンハッタン』観てみてください。
渡辺:やっぱね、ニューヨークと言えばウディ・アレンなんで、これはもう先攻した者勝ちというかね(笑)。いきなり取られたウディ・アレンは外してセレクトしたいと思います。
渡辺セレクト1.『キャロル』
監督/トッド・ヘインズ,2015年,アメリカ,118分
有坂:あー! 来た……。
渡辺:これはですね、1950年代のニューヨークが舞台になっています。当時のデパートで働いている販売員の女性、ルーニー・マーラと、そこにお客さんとして訪れるマダム……これがケイト・ブランシェット。このふたりの女性が恋に落ちる、というお話です。で、本当はそれぞれふたりとも旦那さんだったり恋人だったりがいるんですけど、ある日、このデパートにマダムが買い物に来て、販売員が一目惚れで恋に落ちるというね。それがニューヨークのデパートでのシーンなんですけど、この一目惚れに落ちるシーンっていうのがすごくドラマチックに描かれていて、人がなんかこう恋に落ちた瞬間を見事に捉えている作品なので、ラブストーリーとしてもすごくいい作品ですし、あとこの映画のパンフレットに書いてあったのが、舞台の1950年代ニューヨークの再現性がすごいっていう評価でですね。まだその当時だと男性はみんな帽子を被ってスーツを着ているみたいな、みんな同じような格好をしているような時代なんですけど、その、クラシックな雰囲気のニューヨークと、ちょっとザラついたフィルムのような映像の感じだったりとか、その辺がその時代の、なんかちょっと古いニューヨークみたいなところを表していて。で、作品としてもめちゃくちゃ素晴らしい映画で、これはもう自分の中でもかなり大好きな作品なので……
有坂:順也この年のベスト1映画に挙げてたよね。
渡辺:そうそうそう。
有坂:『キャロル』はあれだよね、もうその作品自体に品格があるというか、とにかく上品で、音楽もそうだし衣装もすごい美しいし、観ててうっとりするような映像なんですけど、そこで描かれる人間ドラマっていうのがすごく泥臭いというか。頭では「いけない」とわかっていながらも人間ってこうなってしまうことってあるよね、というね。
渡辺:ね。そう、割と最近の映画なんですけど、なんというか名作の佇まいがあるというか。
有坂:そうだね、風格があったね。
渡辺;そのぐらい堂々とした威厳のある作品でしたね。なんで、ちょっとこの古い感じの昔のニューヨークが楽しめる作品なのでおすすめです。
有坂:『キャロル』は絶対挙がると思ったから、あえて外しました(笑)。僕も大好きな1本です。
有坂セレクト2.『ビル・カニンガム & ニューヨーク』
監督/リチャード・プレス,2010年,アメリカ,84分
有坂:2003年のアメリカのドキュメンタリーです。これは「ニューヨーク・タイムズ」で人気コラムを連載していたビル・カニンガムというフォトグラファーがいます。で、彼に密着したドキュメンタリー作品なんですけども、ビル・カニンガムっていう人自身がすごく華やかなファッションを中心とした世界に片足突っ込みながらも、なんて言うんだろう、町工場にいそうなね、気のいいお爺ちゃん。で、自分が目立ちたいっていう気持ちがほとんど無い人なので、実はこの監督さんが「映画を撮らせてください」って言ってからなかなかOKが出なくて、結局交渉だけで8年かけたという。
渡辺:ふふふふ。
有坂:そして撮影で2年かけてるんですね。なので、監督としては渾身の10年越しの1作として撮られた作品です。もうとにかくですね、この映画はビル・カニンガムの仕事風景に密着してます。で、彼が自転車に乗ってニューヨークの街を走ってるシーンとかね。もう存分に出てきますし、さらに彼は編集にも自分が携わってますので、そういった編集しているような裏側のシーンとかも記録されている貴重なドキュメンタリー作品なんですけれども、なんかいつも水色の作業着みたいなのをね、着て、それがユニフォームみたいな感じなんですけど。で、いつも街に出てお洒落な人たちをとにかく撮っていく。
渡辺:ファッションフォトグラファーなんだよね。
有坂:そう。面白いのが、結果的に誌面の方に紹介される写真はただお洒落な人たちを並べるんじゃなくて、例えば「青」だったら「青」っていうテーマを決めて、青いお洒落な人たちだけを並べる号があったり、その撮ったものをどういう風に見せるかっていうところにまでアイデアを持っている人なんですね。だから「こういう人がいるよな」とか「こういう思想で写真を撮っている人なんだな」っていう気付きもある一方で、そういうアイデアの出し方とかね、クリエイティヴなところでもすごく刺激的な1本かな、と思います。で、社交会のチャリティーパーティーとかそういう所にもビル・カニンガムは繰り出して、それこそ『プラダを着た悪魔』のモデルになったアナ・ウィンターだったりとか、そういうセレブの中でも写真を撮るんですけど、彼はとにかく写真を撮りに行っているだけだから、そこに出されているフードとかには絶対に手を出さないというルールを決めてるんだよね、自分の中で(笑)。
渡辺:ね(笑)。
有坂:そういうところも本当に人間として信頼できる人だなと思いますし、なんかそんな自分の活動、仕事? のことをビル・カニンガムはこう言っています。「私のしていることは、仕事ではなく喜び」。
渡辺:うんうんうん。
有坂:だそうです。なので彼は自分の喜びを日々感じながら写真を撮り、編集し、世の中にそれが伝わってまたそのリターンがあり、っていうそれを何十年も何十年も続けてきた、幸せなお爺ちゃん。もう亡くなってしまっているんですけど、そんな彼のね、映像で観ると表情とか声のトーンとかで伝わってくる部分があると思うので、ぜひ「こんなカッコいいお爺ちゃんいたんだな」っていうのを観たいなという方にはおすすめの1作です。
渡辺:これね。いやー、大好きだよね。俺も一番最初に浮かんだもん、ニューヨークっていうので。で、ニューヨークの生のさ、ストリートの人たちを撮るから、「本当にこんな服で歩いてる人がいるんだ」とかね、そういうのが映されていて。そしてアナ・ウィンターが「私たちはビルに写真を撮られるために服を着てるのよ」みたいな……
有坂:そうそうそうそうそう。
渡辺:セリフがあるじゃん。
有坂:あるある。
渡辺:そのぐらい、あのアナ・ウィンターに信用されているという。
有坂:あの鬼で有名な(笑)。
渡辺:そんな素敵なお爺ちゃん。でもプライベートがちょっとミステリアスなんだよね。で、そこにもちょっと迫ったみたいな。
有坂:そうだね。
渡辺:そういう、これはなかなかいい映画。
有坂:おすすめです。
渡辺セレクト2.『スモーク』
監督/ウェイン・ワン,1995年,アメリカ,113分
有坂:やっぱり!!
渡辺:読んでた(笑)?
有坂:これは、2本目に挙げようと思ってたんだけど、絶対に来るなと思ったので。どうぞ(笑)。
渡辺:これは90年代のニューヨークですね。ニューヨークの中でもブルックリンを舞台とした映画です。ブルックリンにあるタバコ屋さんが舞台で、そのタバコ屋の主人の何気ない日常と常連たちとのやりとりみたいな、そういう話なんですけど、なんかこの主人が実はブルックリンの街角を10年間ずーっと写真で撮り続けてたっていうエピソードもあったりもして。ニューヨークの中でも、さっきウディ・アレンの『マンハッタン』が出ましたけど、そういう都会ではなくてニューヨークの下町なので、この下町の雑多な感じ。色んな人種がいて、主人公がハーヴェイ・カイテルなんですけど、ハーヴェイ・カイテルはイタリア系だし、お客さんは黒人もいるし白人もいるしみたいな。で、こう何かお金持ちとかがいるわけではなくて、本当に庶民が集まって他愛もない話をするっていう、そういう、タバコ屋なんだけどコミュニティみたいになってるんだよね。
有坂:うんうん。
渡辺:だから地元の常連たちがくだらない話をしながらタバコを吸ってっていう。そんな日常を描いた作品です。これ90年代のミニシアターブームの時に、本当に大好きで。で、クリスマス映画でもあるので、クリスマスの時にたまに今もリバイバル上映したりするんですけど、そういう度に観に行ったりして。何て言うんだろうな、ニューヨークっていっても本当に色んな街の顔があるんですけど、こういうブルックリンっていう下町があるんだっていうのが、けっこうこの90年代の作品には描かれていたりして、その中でも一番好きな作品。
有坂:ブルックリンももう再開発で、多分今だいぶ変わって、
渡辺:あー、そうかもね。
有坂:倉庫とか使ってコーヒースタンドができたりとかしてるから、本当にこの再開発で変わる前のね、ブルックリンが観られる作品でもあるかな、って。
渡辺:ね、そうなんですよ。これは映画としてもめちゃくちゃ素晴らしいので。またこの90年代のニューヨークの顔が見られるので、すごいおすすめです。
有坂:いいよね、あの、なんか写真を撮ってるっていうのも、定点観測だよね。
渡辺:そうそうそうそう。
有坂:いつも同じ所にカメラを据えて、おんなじ時間にパチって撮ってるの。で、ただただ毎日それを続けているんだけど、やっぱり毎日同じ所でね、シャッターを押しても違う風景があって、そこから感じるものがあったり、そういうものをやりたいと思ってるタバコ屋の店主。そういう何だろう、どういう人かっていうキャラクターの説明も、そういう彼のね、日常的な行動から伝わることもあって、本当にそういう意味ではね、変に言葉で説明しないすごく上品な演出になっていると思んですけど。これポール・オースターだよね?
渡辺:そう、原作がね。
有坂:もう見事なね。で、これさっき順也が言ってた90年代のミニシアターブームで恵比寿ガーデンシネマで公開された作品なんですけど、あの当時のアメリカ映画って「アメリカ=ハリウッド」だったじゃない。
渡辺:うん。
有坂:それこそウディ・アレンとかジム・ジャームッシュとかスパイク・リーとか数えるほどしかインディーズ系のアメリカ映画ってなくて。スモークってすごく微妙な……、微妙っていうのとはちょっと違うか。メジャーではなくてインディーズでもない、中間層のアメリカ映画が出てきたなっていう新しさがあった気がするんだよね。
渡辺:そうね……。
有坂:…………え、違った(笑)?
渡辺:(笑)。でもジャームッシュとかさ、本当にそのタイミングで出たというか。
有坂:でもほらジャームッシュとかは個性がすごく強いじゃない。監督の個性があって、エッジが効いてるんだけど、『スモーク』の場合もうちょっとヒューマンドラマ寄りで。なんかこうアメリカで「こんなしみじみとした、心の機微まで描く人間ドラマが出てくるんだ」みたいな驚きがあったの。
渡辺:ふんふんふんふん。
有坂:…………違う? 大丈夫(笑)?
渡辺:(笑)。でも90年代のミニシアターって色んな作品が出てきた時だったんで、でも中でも本当にトップクラスで好きだった作品です。
有坂:また世の中がオンラインの時代になればなるほど、ああいった街の小さなコミュニティのね、意義とか。オンライン中心の中でも、ああいった場所でしか作れない、生み出せない何かっていうのはあるんじゃないかっていうのを考えるきっかけにも、もしかしたらなるんじゃ、とね。そういった意味でもおすすめの作品です。
有坂セレクト3.『ビッグ』
監督/ペニー・マーシャル,1988年,アメリカ,102分
渡辺:うんうんうんうんうん。
有坂:これはトム・ハンクスがブレイクする前、いわゆる彼の出世作と位置付けられている、笑いの要素もあるようなちょっと面白い設定のドラマになります。これ主人公は12歳の少年なんですけど、自分の体が小さいっていうことが彼はすごくコンプレックスで「俺おっきくなりたいんだ! 早く大人になりたいんだ!」っていうことを、ある移動遊園地の願いが叶えられるっていうアトラクションでお願いしたら20代の成人になってしまった。
渡辺:ははは(笑)。
有坂:「やばい、本当になってしまった!」って。で、なった大人がトム・ハンクスなんですね。それで自分の親友に説明したら、親友は彼が変身してしまったっていうことを信じてくれて、「もう一回子どもに戻んなきゃ!」ってことで、自分を変身させた移動遊園地を探しにニューヨークに行くっていう物語です。だから子どもふたりでニューヨークに行くっていう設定なんですね。
渡辺:うんうん。
有坂:ニューヨークの中で色んな出会いがあって、トム・ハンクス演じる主人公はあるおもちゃメーカーに就職します。で、その企画を任されるというか、最初は社長と話している中でポンっと彼の「こんなおもちゃあったら面白いですね」というアイデアが「いいね、それ、採用!」ってことで採用されたら大ヒットして、彼はもうヒットメーカーみたくなるわけです。でも実はそれ彼が内面は子どもだから、子どもである自分が「こんなおもちゃがあったらいいな」って思ったものを大人のビジュアルで再現しているっていう設定なんですね。だから映画を観ている人は、彼がいつ子どもってバレちゃうんだろうとか、ちょっとしたハラハラがあったり、でも映画のトーンとしては割とコメディに近いような作品なので、本当に観ていて気持ちのいい、優しい気持ちになれる作品です。でね、名シーンとしてね、これは多分「アメリカ映画の名シーン」と言ってもいいぐらい語り継がれてるのが、トム・ハンクス演じる主人公とおもちゃ会社の社長が、床にある巨大なピアノをふたりでステップを踏みながら弾く、ダンスするシーンがあるんですけど、そこがもうね、この映画の最大の魅せ場です。これ観たら一生忘れないぐらい幸せなイメージが、観た人の脳裏に焼き付いて離れないような、素敵な……素敵すぎるシーンなんで、ぜひ、そこのシーンを楽しみにして観てもらいたいな、と思います。
渡辺:ふふふ(笑)。
有坂:で、ちょっとこれ裏話がありまして、これいわゆる子どもの心を持った大人をトム・ハンクスが演じるってすごいしっくり来るじゃないですか?
渡辺:はいはい。
有坂:なんですけど、実はこの配役、第一候補はロバート・デ・ニーロだったそうです。
渡辺:うんうん。
有坂:デ・ニーロは「やりたい」って言ったんですけど、色々と条件の折り合いがつかなくて、結果的にトム・ハンクスにこの役が回って、彼はこの映画で初めてアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされます。……獲れなかったんですけど、数年後に『フィラデルフィア』で主演男優賞を獲り、さらに2年続けて『フォレスト・ガンプ/一期一会』でも主演男優賞を獲るっていう、本当に彼のターニングポイントになった1作かなと。今のトム・ハンクスより軽やかな彼の姿が楽しめるので、ぜひ観ていただけたら嬉しいなと思います。
渡辺:トム・ハンクスもけっこうニューヨークものあるんだよね。割と象徴的な。……ラブコメとかね、けっこうあるんだよね。
有坂:やめて(笑)、タイトル言いそうになるから!
渡辺:(笑)。
渡辺セレクト3.『サタデー・ナイト・フィーバー』
監督/ジョン・バダム,1977年,アメリカ,119分
有坂:ふふふふ、なるほど、そう来た?
渡辺:1970年代後半のニューヨークが舞台になってるんですけど、この辺のニューヨークって、さっき『アニー・ホール』とか『マンハッタン』とか、ウディ・アレンの映画が上がったじゃないですか。ウディ・アレンの世界ってけっこうアッパークラスなんですよね。
有坂:そうなんだよね。
渡辺:割と文化人で教養のある人……裕福な人たちが、いい場所、いいレストランで会話しているみたいな、そういう世界だったりするので、『アニー・ホール』も……『アニー・ホール』本当は挙げようと思ってたんですけど、あれニューヨークの色んな所をデートするじゃん。ダイアン・キートンと。テニスしたりとかさ。
有坂:ね。映画観たりとか。
渡辺:いいとこなんですけど、70年代後半のニューヨークって本当はですね、もう落書きまみれ。地下鉄が犯罪の温床みたいな、そういうのが70年代から80年代のニューヨークなんですよね。なので、一番治安が悪かった時のニューヨークっていうのがこの時代で、それこそ『バットマン』で「ゴッサムシティ」のモデルになっているのがニューヨークだったんですね。この『サタデー・ナイト・フィーバー』は確かブルックリンだったと思うんですけど、下町の地下鉄が高架に出てきててガタガタ走っている、で、ジョン・トラボルタが落書きまみれの街を歩くみたいなオープニングなんだよね。で、ビー・ジーズのBGMが流れてて、すれ違ういい女を必ず振り返るみたいな、そういう始まりだったりするんですけど。そんなニューヨークが描かれてるのがこの映画なんですよね。話としても、普通の若い男が週末はもうディスコに命をかけてね、ビシッとした服を着て踊って、その晩だけスターになる。そしてまた週が明けると普通の仕事に戻るっていう。
有坂:ペンキ店とかで働いててね。
渡辺:そうそうそうそう。で、部屋にブルース・リーのポスターが貼ってあったり、ロッキーのポスターが貼ってあるっていう。確か『ロッキー』も同じ時代? 数年前に公開してて、『ロッキー』も下町が舞台の映画で落書きまみれのニューヨークの街をジョギングしてるみたいな。それで裁判所だかの階段を上って両手を上げるポーズをする……
有坂:ああ、有名なシーン。
渡辺:あそこ未だに観光客が上って「ワー」って……
有坂:やるだろうね(笑)。
渡辺:そう、やってるらしいんだけど(笑)、そんなニューヨークが描かれている映画を紹介したいなと。だからウディ・アレンと「裏と表」みたいな「光と闇」みたいな、同じ時代のニューヨークなんだけど、ちょっとこうスポットライトが当たる場所が違うというか。
有坂:ほんとそうだよね。同じ時代で「こういう面とこういう面がある」っていうのを2本ね、『アニー・ホール』『マンハッタン』と『サタデー・ナイト・フィーバー』観ることで、立体的ニューヨークをね……
渡辺:同時代のニューヨークだったという。
有坂:しかも、『サタデー・ナイト・フィーバー』が無ければ『パルプ・フィクション』のジョン・トラボルタはいないわけで、
渡辺:そうそう、あのユマ・サーマンとのダンスシーンも。
有坂:あの役はもうトラボルタのね『サタデー・ナイト・フィーバー』の役がベースにあった上で名ダンスシーンが生まれてるので、そういった意味でもね、ポップカルチャー的にもものすごく影響力のあった作品なので。「なんか知ってるけど観たことない」っていう人。僕もなかなか「ディスコってどうなんだろう?」とか、その時代のアメリカの裏側に当時あんまり興味無くてなかなか観られなかったんですけど、観たらトラボルタがぶっちぎりでカッコいいっていうね。そういうのがあると思うので、観て欲しいよね。
有坂セレクト4.『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』
監督/ジム・シェリダン,2002年,アイルランド・イギリス,106分
渡辺:そう来ましたか。
有坂:監督はアイルランドの人ですね。これ物語的には、幼い息子を亡くした家族の話なんですよ。お父さん、お母さん、娘2人っていう4人家族。さらに、息子が生まれるはずだったんだけど亡くなってしまって、心に大きな傷を抱えた家族が、もうやっぱりこのままだと前を向いて生きていくことがなかなか難しいってことで、アイルランドを飛び出してニューヨークで暮らそうっていう、そういった家族の物語になります。とにかく、この映画の娘さん2人がめちゃくちゃ可愛くて、初めて見るニューヨークに心躍ってる表情とか、本当にドキュメンタリーなんじゃないかなっていうぐらいキラキラしてて。でもそんな彼女たちも、自分の弟が亡くなってしまったっていう傷を抱えてるんですね。それでもやっぱり前を向いて生きていこうとするけど、現実はなかなか厳しくて思い通りになかなか事が運ばない。その娘2人っていうのが実際の姉妹が演じてます。なのですごくいい空気感。で、さらにこの物語は、実はこのジム・シェリダンっていう監督の半自伝的な話なんですね。監督にも2人娘がいて、その娘2人と監督の3人で脚本を書いて、結果的にアカデミー賞の脚本賞にもノミネートされたっていうエピソードもあったりします。この映画はけっこう見どころのあるシーンがたくさんあるんですけど、僕が好きなのは、気温が40度近いニューヨークでエアコンも無くて、生活するのが大変ていう時にエアコンを買って来るんだけど、それが故障して上手く使えないんですよ。だけどやっぱり暑さを凌がなきゃってことで、家族で映画館に行くんですよね。で、映画館で流れてた作品がスピルバーグの『E.T.』。
渡辺:んー!
有坂:娘2人はその『E.T.』に心を奪われて「E.T.の人形買って!」とか、そういうシーンがあるんだよね。ちょうど僕らも世代的には小学校の頃に『E.T.』が公開されてて、「なんかその気持ちよくわかる!」っていう感情移入もね、よりし易いってところもあるんですけどね。やっぱり大変な中でも子どもたちっていうのは、大変も何もそれが全てだし、その中で無意識に希望を見つけていこうとするシーンを、映画館とか『E.T.』を使って表現しているのがもうね、観ててすごい胸を打たれます。あともう1個いいシーンがあって、これが、とあるステージで娘さんがある曲を歌うんですよ。その曲っていうのが「デスペラード」っていうあの名曲。原曲はイーグルスかな? あの「デスペラード」をあの女の子の声で歌われたらもうね……涙腺崩壊。
渡辺:ふふふふ。
有坂:もう嗚咽しそうなくらい感動した。もう今思い出しただけでちょっと泣きそう。
渡辺:はははは(笑)。
有坂:なので、もちろん色々辛いことはあるんですけど、救いの無い映画ではないです。今も、みなさんなかなか思い通りにね、生活できないっていう日々の中でこそもしかしたら観て欲しい1本かな、と。その中でも希望はあるし、それをあの家族が教えてくれる……、だめだ、もうグッときちゃって上手く説明できなくなってきた。……とにかく、アイルランドからアメリカに移住するっていう家族の話ってけっこうあるんだよね?
渡辺:移民ものね、あるんだよね。
有坂:そう、移民ものの、個人的には隠れた名作の1本かな、と思うので、ぜひ観てみてください。
渡辺:アイルランドからの移民、あるよね。イタリア移民とかも。最近だと韓国からの移民、『ミナリ』とかね、アカデミー賞の候補に入ってましたね。
有坂:そうだね。助演女優賞か。
渡辺:移民ものはいい映画多いから。
有坂:やっぱり大変だもんね、そこで生きてくって。だからドラマが生まれやすい。映画にしやすいっていうのかな。
渡辺:だいたい最初ニューヨークとかね、都会に行くからね。
渡辺セレクト4.『はじまりのうた』
監督/ジョン・カーニー,2013年,アメリカ,104分
有坂:うーん、はい。
渡辺:これは数年前公開なので、かなり新しい作品です。現代劇なので2010年代のニューヨークを描いた作品です。話としては、シンガーソングライターの女の子がいて、キーラ・ナイトレイなんですけど、それを落ちぶれた音楽プロデューサー、これはマーク・ラファロなんですけど、彼がキーラ・ナイトレイを「彼女はいい!」って言って、自分が彼女をプロデュースしたいということになって、アルバムを作ろうと持ちかけるっていうストーリーなんですね。でも落ちぶれてるんで、けっこう色々と信用を失ってる音楽プロデューサーなんで、なかなか売り込んでも上手くいかない。なので手作りでアルバムを作ろう、っていうことでストリートに出るんだよね。で、ストリートに出て、ストリートの色んな雑音とかもBGMにしてレコーディングしようということをやるんですよ。なので映画としてもすごくいいし、音楽の使い方っていうのもすごい良くて、監督がジョン・カーニーっていうんですけど、『シング・ストリート 未来へのうた』だったり『ONCE ダブリンの街角で』とか、音楽を使って映画を撮らせるとかなり今もう一番イケてるくらいの監督で。その中でも、一番好きかもしれない。キーラ・ナイトレイが生でちゃんと歌っててね。この歌声もすごい可愛くて、いいんですけど、それをこうプロデュースしようとしてですね。色々レコーディングする姿だったりとか、それを街中でやっちゃうっていう。ニューヨークの街角でレコーディングしているっていう姿も良かったりとか。あと途中で喧嘩するんですけど、2人が。でも仲直りしようってなって、仲直りする時にお互いのプレイリストを聴くっていう。イヤホンをふたつに分けて、お互いのプレイリストを見せ合いっこしながら「あ、けっこういい曲聴いてんじゃん」みたいな、そうやって仲直りしていくっていう。それも夜のニューヨークの街角を歩きながら。映画的にも名シーンになってるところがすごく多くて、ニューヨークの街角が上手く溶け込んでて。今の現代のニューヨークを感じるっていうところでも、いい映画だな、と思ったので挙げました。
有坂:だよね、挙げるよね。夜の散歩って、魔法がかかるというか。そこに、さらに自分たちのプレイリストをシェアするって、どんだけロマンチックなんだよ! って。
渡辺:はははは(笑)。ね。
有坂:今って、イヤホンが有線じゃない無線が多いじゃないですか。
渡辺:うん、そうね。
有坂:あれだともう成立しないんだよね。
渡辺:そうそうそうそう。
有坂:ちょっとそれ思ったら寂しいなって。やっぱりこう、繋がってるイヤホンをシェアするっていうだけで、心の距離がグッと近くなるっていうのはあるし。
渡辺:あの『花束みたいな恋をした』でもそういうシーンあったよね。
有坂:あったね。あったあったあった。あと、夜の散歩でいうと、僕が最初に紹介した『マンハッタン』にも、お互い心が動き始めたふたりが夜中から明け方にかけて犬の散歩をするっていう超名シーンがありますので、ぜひ観て欲しいです。
有坂セレクト5.『エルフ〜サンタの国からやってきた〜』
監督/ジョン・ファブロー,2003年,アメリカ,95分
渡辺:おーほっほっほ、そこ来ましたか。
有坂:季節外れの1作、クリスマスムービーです。で、ニューヨーク映画を色々と思い返すと、クリスマス映画に名作が多い。『34丁目の奇跡』とか『めぐり逢えたら』とか、たくさんあるんですよ。僕どれも好きなんですけど、この映画は割と新し目のクリスマス映画です。これ「パッケージ見たら全然面白くなさそうなんですけど」ってすごい言われるんですけど。
渡辺:(笑)。
有坂:これね、名作なんです、実はこう見えて。これはアメリカで当時は大ヒットした映画なんですね。なんですけど、日本では劇場公開されずにDVDスルー、DVDだけになったっていうすごく日本ではマイナーな扱いの映画です。なので知られてない映画なんですけど、やっぱり観た人がみんな心打たれ、まわりの人におすすめしていくうちに、だんだん隠れた名作扱いになってきているようなコメディです。このパッケージにいる緑の洋服を着た小さい妖精・エルフを演じているのがウィル・フェレルっていうコメディアンですね。彼が、小さい妖精に育てられた人間なんですけど、自分が妖精だと思って育ってるんですよ。でも実際の自分の父親が、実はニューヨークにいるっていうことがわかって、ニューヨークにお父さんを探しに行くっていう内容のファンタジーコメディになっています。なので、自分がエルフだって信じている人と、実際にニューヨークで暮らしている人との間で色んなギャップが生まれるじゃないですか。服装も変だし。そういうギャップを上手く笑いに転換させたりとか。で、クリスマス映画で一番大事なのは、どのタイミングで奇跡が起こって、クリスマスソングがかかるかってところなんですけど、そういった意味ではこの映画は、ヒロイン役がズーイー・デシャネルっていう人なんですね。あの『(500)日のサマー』の“サマー”です。彼女は「シー&ヒム」っていうバンドも自分でやってるぐらいなので、彼女が出演するっていうことは必ず歌うってことなんです。で、とあるクリスマスソングをですね、最高のベストのタイミングで歌ってくれて、そこでもうね、観てる側の気持ちが、一気に幸せな方にワーっと高まって、涙が止まらないみたいなタイプのコメディ映画です。コメディなんですけど、本当に泣けるタイプの映画。これはもうホリデーシーズンのニューヨークの風景が存分に堪能できる、っていう意味でも、ニューヨーク映画としても素晴らしいし、コメディとしても笑えるポイントがたくさんあります。日本人とアメリカ人は笑うツボが違うってよく言われますけど、
渡辺:うんうん。
有坂:本当に国籍越えて、これは誰でも笑える内容になっています。あと、ストップモーションアニメとか、そういった要素も実写の中にちょっと入れてくるんですよ。そういう実験的な要素もあるから、画としても面白いし、ほんとに観れば観るほど「良くできた映画だな」と思うはずです。監督を務めたのがジョン・ファブローっていう人で、この人は『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の監督・主演を務めた人です。彼は、この『エルフ〜』も大きな予算で作られた映画じゃないんですけど、本当にある程度の低予算で作ってスマッシュヒットした。そういった映画を何本か作っていくうちに、ジョン・ファブローは『アイアンマン』を撮ることになります。そして『アイアンマン2』も撮ることになります。続いて『エイリアンVS.プレデター』っていう企画ものまで撮るようになります。なので、小さい規模の映画で実績を重ねて、いわゆるハリウッドメジャーの映画を撮れるようになったんですね。ところが、彼はそこで、自分が本当に作りたい映画、心を込めた映画が作れていないってことで悩むようになるんです。で、悩んで悩んで、ストレスで映画が撮れなくなりそうな時に、心機一転この『エルフ〜』のように心の通った映画を作りたいと思って作った映画が『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』なんですね。あの映画は、一流のレストランのシェフだった彼が、オーナーと揉めて辞めて、自分でフードトラックを始めて人生を再生させるっていう物語なんですけど、その物語の中の自分と、映画監督として燻っている自分を重ねて、それを自分が演じてるんですね。一種のリハビリとして作ったんです。で、そこで彼は自分の自信を取り戻して、またメジャー映画とかも撮るようになるんですけど、その『シェフ〜』の時にモヤモヤしていた理由のひとつとして、やっぱり『エルフ〜』のような心のある映画をもう一度撮りたい、ということが彼の中にはあったそうなんです。だからぜひ、『エルフ〜』を観てから『アイアンマン』を観るもよし、そんな楽しみ方もできるかな、と思いますので、パッケージに騙されないでみなさん観ていただけたらと思います。
渡辺:『エルフ〜』はキノ・イグルーでもね、クリスマスイベントとかで上映をやっています。割と何回かやってるもんね。
有坂:そうだね。
渡辺:かなり爆笑する作品ですし、ズーイー・デシャネルの歌のシーンはね、あれアカペラで歌うじゃん。で、あれだけめちゃくちゃ上手いっていうね。引き込まれるっていう……。クリスマスの定番ソングを歌うんですけどね。あそこのシーンはいいよね。
有坂:いやー、たまらないですよ。
渡辺:まさかこれを挙げてくるとは思わなかったけど。
有坂:え、本当に? これ取られたくないなって思ってた(笑)。
渡辺:ノーマークだった(笑)。
渡辺セレクト5.『ゴッドファーザー』
監督/フランシス・フォード・コッポラ,1972年,アメリカ,175分
有坂:おーほほほ。
渡辺:もう色々とタイトルが出てきちゃって、最後どうしようかな、どっちかなと思ってたところでこれを選びました。これはもうテーマ曲が聞こえてくるぐらいな名作中の名作なんですけど、舞台は1940年代のニューヨークです。これもイタリア系移民の話なんですけど、イタリア系移民の中でもマフィアの5大ファミリーっていうのがあって、その中のコルレオーネ一家の話になります。これは3部作のうちの“PART I”で、アル・パチーノがファミリーの中で唯一堅気なんですけど、でも実は彼が一番“ドン”としての素質がある人で、彼が色々あって、跡を継ぐっていうことになるんです。でもその後を継ぐために、ひと仕事しなきゃいけないことがあって、それはある人物をレストランに呼び出して始末、暗殺しなきゃいけないっていうシーンなんですね。それが映画史に残る名シーンと言われていて。これ監督はフランシス・フォード・コッポラで、この時まだアル・パチーノは新人というか駆け出しの俳優で、その名シーンをリハーサルかなんかでやらせたのかな。レストランのトイレに拳銃を隠しておいて、丸腰で対面するんですけど「ちょっとトイレ行ってくる」って言って、拳銃を取り出して相手を射殺するっていうシーンで。それをコッポラが「試しにやってみろ」って言ってアル・パチーノにやらせて、それがめちゃくちゃ良かったんでそのシーンを採用したっていう。それが名シーンとして未だに語り継がれてるんですけど。色々名シーンがある中の、当時のイタリア系のやっているレストランだったりとか、イタリア系移民のファミリー、大家族のディナーだったりとか、そういうなんかこう、ニューヨークの白人社会と、さっきのブルックリンみたいなもうちょっと下町のような雑多な感じのニューヨークっていうのが描かれている。その中でもイタリア系移民、その中でもマフィアのファミリーが色濃く描かれているのがこの『ゴッドファーザー』なので、マフィア映画ではあるんですけど、そういうニューヨークの実際にあった一面というところを描いた作品でもあるので、その辺の視点で観るのも面白いと思うので。個人的にも大好きです。
有坂:ね、好きだよね。前に「重厚な映画」っていう言葉を雑誌かなんかで読んだ時に「重厚な映画」って意味がわかんなかったんですよ。でも『ゴッドファーザー』観てわかった。これぞ重厚! だからこれは観てもらわないと。言葉で説明するのは難しいようなものなんですけど。マフィア映画っていっぱいある中でも何故この映画が名作として語り継がれ“重厚”な映画って言われているのかは、観てもらえればすぐに理解できるんじゃないかな、と思います。
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今回選ばれた10本以外に、キノ・イグルーが紹介したかった「ニューヨーク(N.Y.)」な映画は以下の通り。気になる方はライブのアーカイブもご覧ください!
『プラダを着た悪魔』
『アニー・ホール』
『キング・オブ・コメディ』
『さよなら、僕のマンハッタン』
『スパイダーマン』
『バスキア』
『マリッジ・ストーリー』
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
『レオン』
『スタイルウォーズ』
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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。
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