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【特集・高旗将雄〜紙ものから木彫りまで。形を変えて「紹介したい」津々浦々】2022年7月号

高旗将雄さんにお話をうかがいました

「イラストレーター」という肩書きになるのでしょうか。

クマや猫などの動物たち、郷土玩具や町の風景、身近な食べ物などを、なごやかなタッチとなつかしい雰囲気で描く、高旗将雄さん。手紙社との付き合いは10年以上になり、個展やイベント、オンライン販売では瞬く間に作品が完売する人気作家です。

その表現の幅は平面にとどまらず、トートバッグ、陶器、ブローチ、ハンコ、ドローイングがちゃ、缶詰め……と、「イラストレーター」の枠には収まらないほど、自由で多彩。近年は木彫りの熊の制作にどっぷりとハマり、ますますマルチな才能を発揮しています。

そのアイデアの源、そして新しい素材に挑戦する原動力は、どこからくるのでしょう?

シルクスクリーンから広がった創作

画像1:塩と醤油のトート

実家の食卓にあったような、赤いフタの塩としょうゆが描かれたトートバッグ。手紙社でもすっかり定番の人気アイテムとなったこのバッグは、実は高旗さんが学生時代、シルクスクリーンで手刷りで制作したことが始まり。当時から、学内で自由に使えたシルクスクリーン印刷機を用いて、Tシャツやバッグを制作していたと話します。

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「シルクスクリーンって、ちょっとオリジナルのものを作りたい時にちょうどいいんですよね。少部数からでも大丈夫だし、紙だけじゃなく色んなものに印刷できるし。シルクはずっと続けていきたいと思っていました」

そう話す高旗さん。大学ではグラフィックデザインを学ぶも、通りすがりで漫画研究部に入部したことをきっかけにイラストを描くように。ZINEを作ったり、グッズを制作して販売したりする中で、布や立体にも印刷できるシルクスクリーンの魅力にハマっていきました。

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細かな描写よりもシンプルな線が、くっきりとした発色の代わりに限られた色数が持ち前の、シルクスクリーン印刷。それらを生かしたイラストを描くことで、必然的に今の作風が築かれていったと高旗さんは言います。

塩としょうゆのトートバッグは、赤と黒という象徴的な配色とシルクスクリーンという印刷技法がピタリと合った結果。技法や素材に興味を持ち「それを使って何ができるか?」と考えることで、高旗さんの創作は広がっていきました。

「木彫りの熊」からひらけた新しい世界

ここ2年ほどは、ペンを彫刻刀へと持ち替え(?)、木彫りの熊の制作にも勤しむ高旗さん。もともと、北海道土産などで見られる熊の置物をコレクションする傍ら、趣味で自分でも作っていたというほど、生粋の“木彫りの熊好き”でした。

コロナ禍でイベントや仕事が流れてしまったことを機に、作品として発表したところ大反響。インスタグラムはほぼ木工作家化し、くる日もくる日も熊を彫る生活が始まりました。

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「僕がコレクションしている、木彫り界では有名な作家の作品を友人が見て『これまだ途中?』って言ったことがあって。ちゃんとした作家の作品でもそう見えることがあるんだから、素人がいきなり抽象化した作品を彫るのは違うだろうと思ったんです。まずは擬人化された熊とか、毛並みを彫ったり着色した作品を作って、最終的には抽象化されたところまで持っていきたい。まだまだ勉強中です」

画像5:★彫っている作業台のお写真など

高旗さんの言葉からは、新しい素材や技法に取り組むとき、表面的な理解にとどまらず、まじめに本質と向き合おうとする姿勢が感じられます。それは、ものが歩んできた背景や作り手への、リスペクトと探究心があるからこそ。

イベントや展示のたびにお披露目してきたさまざまな表現の形は、高旗さん自身の好奇心の形でもあるのです。

「紹介したい」気持ちが創作にも

なぜ、新しい表現手法に挑戦するのか。高旗さんに聞くと「挑戦というほど前向きな気持ちではないんです」と笑います。

これまで新たに発表してきた作品の多くは、展示やイベントを目前に追い込まれたり、予算がないから自分で制作もやるしかないと、必要に迫られてアイデアが出てきたものだそう。

画像6:★ラフスケッチのお写真など

けれど、その発想に多くの人がときめき、笑顔になるのは、限られた条件の中でも知恵と工夫を惜しまない、高旗さんのものづくりの姿勢にふれるからではないでしょうか。

「僕はきっと『紹介したい』んです。例えば旅先でおいしいものを食べるのは、自分がすごく食べたいというより、どんな味でどうおいしかったかを紹介したい。(ものの歴史や技法について調べるのは)そういう感覚に近いです。あんまり聞かれる機会もないんですけど(笑)」

画像3:シルク作品の写真

高旗さんの表現するもの。土産物店で見かけたクマやタヌキ、旅先の風景、実家の食卓。

さまざまな素材に姿を変えて描かれるそれらは、高旗さんが「紹介して」くれていると思うと、なんだかすごく親近感がわきませんか。

気軽に使える文具から一点ものの木彫りまで、きっとそのどれもに、作り手からのメッセージが隠されています。そして次に高旗さんと話す機会があったら、ぜひ「紹介した理由」を聞いてみてくださいね。(文・大橋知沙)


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高旗将雄(たかはた・まさお)
郷土玩具、木彫りの熊集めが趣味のイラストレーター。
愛知県岡崎市生まれ。東京造形大学、多摩美術大学美術研究科卒業。
在学時よりシルクスクリーン印刷を用いた作品に取り組み、素材を問わずオリジナルのグッズを多数制作。近年は木彫りにも活躍の場を広げている。
https://www.instagram.com/takahatakun/
http://masaox2006.xxxxxxxx.jp/

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