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【特集・kata kata〜届け たくさんの手ぬぐいから開く扉】2022年7月号

「kata kata」松永武さん・高井知絵さんにお話をうかがいました

汗や手を拭いたり、日除けとして首に掛けたり、保冷剤と一緒にお弁当を包んだり。働きものの手ぬぐいは、夏にいっそう出番が増えます。

松永武さん・高井知絵さんによる型染めユニット「kata kata」の手ぬぐいも、毎日のように大活躍。ゆかたにも多く用いられる「注染」という技法で染められた手ぬぐいは、独特のにじみや鮮やかな発色、洗うほどに育っていく風合いがなんとも涼しげ。海の生き物や動物たち、昆虫や草花といったモチーフが生き生きと描かれた図案は、すみずみまで眺める楽しみがあります。

多彩な図案はどこから生まれ、どんなふうに染められて、一枚の手ぬぐいになるのでしょう? そこには、自然の造形をつぶさにとらえる眼差しと、型染め作家ならではの発想がありました。

自然の姿を観察する 鮮明な解像度

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「kata kata」の作品には、トラやクマ、鳥といった定番の動物たちはもちろん、ワニ、ヤドカリ、ザリガニにカミキリムシなど、大人の日常生活ではそう出会わない生き物もたくさん登場します。

「子どものころに、カブトムシとかクワガタを見つけて『かっこいい』って思ったこと。今もそれを続けているような感じです。注染で最初に作った手ぬぐいの図案がザリガニっていうのも、まさにそうで。もともとは、大学の卒業制作のテーマが動植物だったので描きはじめたモチーフでしたが、そこからずっと飽きずに描き続けているんです」(武さん)

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一枚の手ぬぐいに描き出される絵は、「kata kata」の目を通して見た、ユーモラスで躍動感たっぷりの生き物の世界そのもの。例えば、ワニの背のトゲがおもしろいなと目に留まれば、そのトゲトゲは大きくズームされ、ぐるぐると一帯を取り囲んで、草むらと一体化した景色ができあがる。

ともすれば見過ごしてしまいそうな自然の細部をとらえ、観察する眼の解像度の高さが、「kata kata」の絵が今にも動き出しそうな生命力を持つ理由です。

独創性よりも、耐久性と合理性

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自由な発想で、描きたいものを思う存分描く。そんなイメージのあった「kata kata」の図案ですが、2人の口からは意外な言葉が飛び出しました。

「何千枚作っても破れない、量産に耐えうる型紙を考えているんです」

型紙と刷毛で一枚一枚染める「型染め」からスタートした「kata kata」は、職人が一度にたくさんの手ぬぐいを染める「注染」においても、自分たちの手で型紙を彫り、「型染め」で見本を作って生産することを大切にしています。

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切り絵のように図案を切り抜いていくわけですから、当然、線がつながっていた方が型紙の強度は上がります。色を変える箇所、線が細くなる箇所など、耐久性が下がる部分を考慮し、型紙へのダメージを最小限に押さえて、構図やディテールを決める。

この制約は、活動をはじめたときから自分たちに課している約束事なのだそうです。

「型染めは自分たちで染めているので、自分たちが無理なく、一つ一つの工程をクリアできるようにデザインを考えるようになりました。必然的に、扱いやすく、染めやすく、うねったり破れたりしない型紙を作るようになる。注染でも、その姿勢は変えずにいます。制限といえば制限だけど、続けているうちにそれが自分たちらしさになってきたかな、と」

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「注染」はもともと、量産を目的に生み出された日本伝統の染色技法です。
知絵さんの地元でもあり「kata kata」が依頼する工場の一つがある浜松市では、街のあちこちで、染め上がった注染の布がはためく景色を見るほど身近な存在。

庶民の衣を支え、職人が効率よく量産することを重視したデザインには、理にかなった必然性があるのでしょう。

丈夫で合理的な型紙であることを第一に、どう趣向をこらすか。昔から職人たちが知恵を絞ってきたのと同じように、「kata kata」のものづくりでも、それが原動力となっているのです。

一枚の布に物語を秘めて

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折りたたんだ布を開くと、サーカスのテントが幕を開ける仕掛けになっていたり、どこかに赤ちゃんザリガニが隠れていたり。「kata kata」の手ぬぐいには、小さな物語が隠されていることをご存知でしょうか?

一枚の手ぬぐいを通して、想像がふくらみ、会話が生まれる。ストーリーのある布作りを始めた理由について、2人はこんなふうに話します。

「イベントや展示で、お客さんに直接作品を手に取ってもらうことが多かったんだけど、何を話したらいいのかわからなくて(笑)。それで、会話のきっかけになるような仕掛けを作ったんだよね」(知絵さん)

「自分たちで自分たちの作品をおすすめするのって難しいじゃないですか。でもこういうストーリーがあって、ということなら、自然に会話が広がるなと思って」(武さん)

「型染め」だけをやっていたときは「作り手自身の手で作ってこそ」と思っていた時期もあったそう。けれど、ものづくりの軸は定めつつ生産を託して、たくさんの人の手に作品が渡るようになったからこそ、2人だけでは辿り着けなかった景色が広がりました。

「直接お話できなくても、ある日洗濯物を干しながら『あ、こんなところに赤ちゃんザリガニがいる』って気づいてもらえたら楽しいなって思うんです」

そう言って微笑む知絵さん。

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「kata kata」の手ぬぐいを通して、注染という日本伝統の染めものにふれ、少年の目で見るような生き物の不思議にふれる。ストーリーはいつだって、気づいた瞬間に動き出します。

さあこの夏、どれだけの人が、鮮やかでユーモラスな物語の扉を開くでしょうか。


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kata kata(カタカタ)
松永武さん・高井知絵によるユニット。型染めを軸に、注染、プリントによるオリジナルの布作りほか、イラストレーションや布以外のオリジナルグッズも多数手掛ける。手紙社つつじヶ丘本店の隣にアトリエショップも。
Web Site:https://kata-kata04.com
Instagram:https://www.instagram.com/katakata.jp/


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