銀座手紙寺誕生秘話「進々堂にインスパイアされて」
こんにちは。手紙寺発起人の井上です。
これまで、船橋の手紙処ができるまでのお話をじっくりと綴ってきました。
じつは、東京・銀座と、江戸川区にも手紙寺はあります。今回は、銀座の手紙寺についてのお話したいと思います。
進々堂の、あの心地よい空間を目指して
以前、「手紙を書きたくなる場所」として、京都にある「進々堂」という喫茶店をご紹介しました。歴史ある建物で、とても居心地の良い空間です。
いつしかこの「進々堂」が、私の理想とする喫茶店の姿になっていたのです。このお店に流れる空気は、手紙寺にも必要な空気でした。誰もが思い思いに過ごし、自分自身との対話の時間を作ることのできる空間です。
もちろん、お店をまるごと再現することはできません。
長い歴史が作り出した、重みある雰囲気も意図的に作ることはできません。
そこで私は、「進々堂」の店内の雰囲気を作り出しているものを考えてみました。そして思い当たったのが、使い込まれた深いブラウンの机と椅子でした。
長い時間の中で完成した、深みある机と椅子
「進々堂」の客席には、一般的な喫茶店のような四つ足のものではなく、両側面に板状の脚のついた机と椅子が並んでいます。机も椅子も広めの幅が取られ、まるで食堂の長机と長椅子のような作りをしています。
素材はナラ材という丈夫な木材でできており、
長年使い込まれることで、味のある質感に育っていくのです。
私は、この机が大好きでした。そして、この机を再現することで
進々堂に近い空気を作ることができないかと考えました。
それからは、たくさんの材木工房をリサーチ。
イメージの通りのものを作っていただける職人さんを探し続けました。
そして出会ったのが京都の材木職人「樹輪舎」さんです。
「樹輪舎」さんは3名の職人が所属する材木工房。少人数だからこそ、こだわりをもって、丁寧なものづくりをしてくださる工房です。
私たちの作りたい手紙寺の想い、進々堂のイメージを、
樹輪舎さんはしっかり受け止めてくださりました。
そして完成したのが、銀座手紙寺です。
都会の真ん中で、一息つける場所に。
銀座という大都市ではありますが、
路地を少し入った静かな場所に佇んでいる手紙寺。
日常から離れて、椅子に腰掛け、ほっとひと息つきながら、自分だけの時間を過ごすことのできる空間です。
もちろん、Tポストも設置され、いつでも手紙を届けることができます。
ナラ材でできたテーブルの厚さのある天板は、私たちの気持ちもまるごと受け止めてくれそうな安心感がさえ伝わってきます。
これから長い間、いろいろな人の話に耳を傾け、たくさんの人の手に触れ、味わいのある場所へ育ってくれるのが楽しみです。
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井上 城治 | 手紙寺 発起人
1973年生まれ。東京都江戸川区の證大寺(しょうだいじ)住職。一般社団法人仏教人生大学理事長。手紙を通して亡くなった人と出遇い直す大切さを伝える場所として「手紙寺」をはじめる。趣味は、気に入ったカフェで手紙を書くこと。noteを通して、自分が過ごしたいカフェに出会えることを楽しみにしています。
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