Vol.104 便箋遍歴2000~2020年代【手紙の助け舟】
こんにちは、いかがお過ごしですか。喫茶手紙寺分室、むらかみかずこです。
先日、飼い犬つながりで、20代後半の男女カップルと半日、山歩きする機会がありました。仕事とはまったく関係のないところで知り合った、世代の異なる友人です。
今から25年ほど前、わたしが彼らの年齢の頃は遠距離恋愛をしており、毎日手紙を書いていました。
今では信じられない話ですが、2000年代の半ば、当時はまだパソコンもケイタイも一般的でなく、長距離電話の通話料は目が飛び出るほど高かったのです。
たしか、東京と広島で、1時間で3000円くらいかかりましたから、20代半ば、社会人になりたての二人にとって手紙は最もリーズナブル、かつ身近なツールだったのです。
シンプル is the BEST、2000年代
当時、一般的だった便箋というと、無地か、キャラクターが描かれた女子中高生的なものでした。
一部、季節の草花がデザインされたエレガントな和紙のものもありましたが、大部分はシンプルな、罫線のみのオーソドックスなものでした。
前述したように、この頃はまだ電話代が高く、ビジネスシーンにおいても手紙で連絡を取り合う機会が多く残っていました。紙選びで趣向を凝らすより「質より量」でガシガシと普段使いできるもののほうが、ニーズが高かったのでしょう。
小型サイズが大流行、2010年代
2010年代になると、デジタルツールの台頭から手書き離れがはじまり、小さくても気持ちが伝わる一筆箋(8センチ×15センチくらい)に注目が集まります。
一筆箋のよいところは、短くても気持ちが伝わることと、「こうしなければいけない」というルールがないことです。「拝啓」「敬具」といった頭語や結語を気にする必要もなく、短くても十分、ほんの3行で様(サマ)になります。
2~3枚にまたがっても失礼にならず、便箋より安価。
オンオフを問わず気軽に使える点からも人気となり、便箋以上に、一筆箋が多く出回るようになりました。
2010年代後半ごろからはポップでカラフルなものから、キュート系、お洒落なもの、高級感のあるもの、男性も使いやすいトラディショナルなものまで、デザインのバリエーションが一気に増えました。
多様性がさらに加速、2020年代
2020年代になると一筆箋がさらに小型化し、手の平サイズや名刺サイズのミニカードにより目が留まるようになりました。
文具熱の高まりとともに、手紙道具として使うだけでなく、メモ用紙にしたり、プチギフトとしてだれかにプレゼントしたり、コレクションして楽しむなど、使い方の幅が一気に広がります。
個人情報保護法の施行が手紙離れに拍車をかけ、「手紙って、重い」という感覚が浸透するようになったのも、この頃です。
文字をつづるときには「いつもありがとう。これからもよろしくね」くらいのライトな書き方が心にフィットするようになりました。
現在、手書き手紙は「それ自体で気持ちのこもったギフトである」という考えに行きつつあります。
便箋やカード類はどんどん装飾が豊かになり、香りやオルゴール付きのもののほか、エンボス加工やラメ入りのまるで美術品を思わせるもの、インテリアとして飾って楽しめるもの、SDGsを連想させる余り紙を貼り合わせて一筆箋化したものものなど、その種類はさらに多様化しています。
今後、こうした流れはどう変化していくのでしょうか。好奇心が刺激される、ワクワクが止まらない商品に一つでも多く出会いたいものですね!
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