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酒の席では「情報」でなく「体験」を聞きたい

わがままが許されるなら、お酒を呑む場では「情報」ではなく「体験」を聞きたい/語りたい。

たとえば宴席で、僕が「出身は滋賀県なんスよ」と言ったとする。……と、「滋賀県だと〇〇に美味しいラーメン屋さんがありますよね」と返ってくることがある。これは「情報」だ。距離感を保つ関係性であればこれでよいが、僕は「体験」まで聞きたい。「そのラーメン屋で知らないおっさんと口論になって、頭突きを食らわせました」。ここまでくると体験になる。話者の人間性が見えてくる。

せっかく呑んでいるのだから、会話に「情報」しかないのは寂しい。会話のラリーが情報のみで続いていると、「それはあとで検索するので、体験を聞かせてくれ!」と思う。自分の話をすることに抵抗があるなら、見たことを話せばよい。「さっき、ずぶ濡れのおっさんとすれ違いましてね」。これも話者の人間性が見えてくる気がする。

「東京の人の会話はオチがない」と言われることがあるけれど、ある種マナーを守るために、会話を情報のみで成立させる人が多いからだと思う。住んでいる街の話、通勤時に使う電車の話。婚活で、「相手のことがわからない」というのも、会話に「体験」の要素がないからではなかろうか。

バーで、ひとり呑みに来ている女性と「情報」の会話しかしない男性(だいたいイケメン。イケメンは人間性を見せる必要がないから)を見かけると、僕はひとり静かにグラスを傾けながら、内心「人間性! 人間性!」と人間性の片鱗を追い求めている。

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