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チャレンジ拠点YOKANA@種子島へ!
先日、鹿児島県共生・協働センター「地域資源活用・協働促進事業」の地域連携アドバイザー派遣の一環として、奄美大島・瀬戸内にて【HUB a nice d!】を運営している山本美帆さんとともに、種子島・中種子町にて【チャレンジ拠点YOKANA】を運営する一般社団法人LOCAL-HOODの湯目知史さん、由華さんご夫妻を訪ねました。
\ アドバイザーの美帆さんをご紹介* /
◇◇ HUB a nice d!と山本美帆さん
転勤族のママであったご自身の境遇から、「ママたちが活動できる場所が欲しい」、「子連れでも働きやすい環境がほしい」と強く思っていた美帆さん。同じ思いを共有する方々と出会い、2018年に古民家を改修した地域拠点として【HUB a nice d!】をオープン。店舗を貸し出すチャレンジショップ運営やイベント開催などを行う。拠点づくりと同時に対話の場づくりを重ねた経験から、現在、一般社団法人鹿児島天文館総合研究所Ten-Lab(以下テンラボ)の一員として、各講座や地域プロジェクトに携わる。https://www.facebook.com/hubaniced(HUB a nice d! Facebook)
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☞ 奄美大島・瀬戸内町阿木名〔HUB a nice d!〕
◆◆ チャレンジ拠点YOKANAについて
種子島は中種子町、旭商店街。店舗が並ぶ通りの一角に、ポップでかわいいオレンジカラーの建物が目を惹きます。冬とは思えぬポカポカ陽気。到着すると、知史さんと由華さんが出迎えて下さいました。
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もともと、地域の活性化につながる仕事がしたいと考えていたという由華さん。前職で、六次産業や商品開発、起業支援などを経験後、2020年、知史さんとともに中種子町地域おこし協力隊に着任します。
その翌年、「地域の方の『やってみたい!』というチャレンジ精神を支える場所・相談できる場所をつくりたい」との想いから、一般社団法人LOCAL-HOODを立ち上げ、商店街の空き家をリノベーションし、【チャレンジ拠点YOKANA】(以下、YOKANA)をオープン。
YOKANAの名前の由来は、種子島の方言で「いいね」を意味する「よかな」という言葉から。地域の誰かのアイデアに「よかな」と言える場所、そんなふたりの想いが込められています。
「こういうことがやりたい、こういう問題があって困っている、と相談に来てくれる住民の方と一緒に問題を解決したり、一緒に企画を実行したりしています。ワークショップで足を運んでくれた時や、飛び込みであったり、ここに来たおしゃべりの延長で生まれる相談が多いです。日常の会話の中で、ポロッと出てくる言葉をひろっていけたらいいなと思っています」と由華さん。
YOKANAの扉を開けると、チャレンジショップとして活用できる飲食スペース、作業ができるコワーキングスペース、ワークショップやイベントを開催できるコミュニティスペースが広がります。
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その日は、地元のお母さんがたによる地元産ミツロウを使ったバームづくりWSをはじめ、コワーキングスペースでの打ち合わせ、受験を控えた高校生や、地域のおじちゃんが立ち寄ったりと、なんだか大賑わい!ここを訪れる一人ひとりに、優しい笑顔で「こんにちは~」と声をかけるおふたりの姿が印象的でした*
2階に上がると、明るい日差しが差し込むゲストハウス空間。「リノベーション前に商店街の方への内覧会を開催したんですけど、みんな2階を見た途端、ここはやめとけって。それくらいひどかったんですよ」。
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おふたり自身もたっぷりDIY作業したというYOKANA。苦労話もありながら、「いざ作業が終わってしまうと、それはそれで寂しくて」と笑う知史さん。
1階、2階と、たくさんの機能をかねそなえたYOKANA。湯目さん夫妻は、ここを拠点に、地域のチャレンジを後押しする【たねがしまスープ】の実施、高校生とのコラボ企画、また、町内の空き家活用に関する相談を受けたりと、これまで相談に来てくれた住民の方々とともに、他分野にわたる複数の企画を進めていらっしゃいます。
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◆◆ YOKANAをもっと知ってほしい
人の出入りがあるとはいえ、まだまだYOKANAの認知が低いと感じるという湯目さんご夫妻。美帆さんは、ハブディ立ち上げ当初、場としての活用が少ない時期もあったのでしょうか。
「ハブディは、拠点のオープンと同時に、チャレンジショップによる飲食店営業もオープンしました。人に知ってもらいたい、足を運んでもらいたい時に、飲食の力は大きいですね」。
美帆さんはハブディを使ってくれる方々と時間をかけて関係を築き、今では活動を共に進める仲間になっているのだそう。
YOKANAは今、「相談したい人たちを待っている場所」であり、ここに人がいることを大切にしています。とはいえ、その体制も模索中。
「おふたりに相談を聞いて欲しい人は、その日に会えなくてもまた来てくれるよ」と美帆さん。おふたりのどちらかが居たり、常駐しなくても「この日はふたりに会える」という日をSNSで発信したり。ここに来てくれる人と出会うことはもちろん、ふたりが地域に足を運ぶことで、新たな挑戦や困りごとに出会うチャンスにもなりそう。
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とはいえ、移住者にとっては「どこに行ったらいいのかわからない」というのも正直な気持ち。〈地方あるある〉ですが、同世代である若年層が少ない現状、とはいえ、知っている人のところばかりに行くと、迷惑になるのではという心配、地域に足を運んで、受け入れてもらえるだろうかという不安…。地方移住においては、やはり「地域に足を運ぶ、地域とつながるきっかけ」が、とてもとても大切なのかもしれません。
その点で、「地域の拠点」にあるのは、活動に関心のある人とつながりやすいという安心感。きっと、こんな場所があること、話を聞いてくれる人がいることの安心感は、移住者に限らず、これからの地域に求められているのではないでしょうか。
「機会があれば、地域にも足を運びたい」と話す由華さん。これからますます湯目さんご夫妻らしく地域とつながっていかれることと思います。
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◆◆ 想いを共にする人の存在
「とはいえ、YOKANAの活動をしていると、仲間も欲しいなと思ったりしますか?」という問いに、「仲間も欲しいですね。たまに自分たちの方向性が間違っていないか不安になることもあります。想いをわかってくれるメンバーがいることが、すごくいいなと思います。」と知史さん。
美帆さんには、一緒に活動するメンバーがいらっしゃったのでしょうか、聞いてみると、
「ママ友や以前の活動〈赤ちゃん先生〉を通して出会った人、ハブディをきっかけにつながった人びとが、大きな存在になっている」と美帆さん。
「だけど、ここまでくるのに時間がかかっちゃって。わたし、活動する上で、なんでやりたいのか、どうなりたいのか、ほかの人にあまり伝えてこなかったんです。その日が楽しければいいやという思いで、言うタイミングもあまりなくて。ようやく周りの人と未来を語れるようになりました」。
どんなタイミングで話せるようになったんですか?と由華さん。
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「私、お酒を飲むのが好きなんですよ。飲みながら、ちょっと聞いてと弱音が吐けるようになったのは大きいかもしれないな。かっこよく見せようとかしていたわけではないけれど、苦しい部分を見せていなかった。でも弱音を話せるようになってから、心の内を伝えられるようになったかな」と美帆さん。
「それは私たちも課題で。でも、弱いところを見せるきっかけがわからない。苦労している姿よりは、楽しく頑張っている姿を見せた方が嬉しいのかなと思ったりして」と由華さん。
明るく前向きな姿は、周りを元気にする。けれど、人間、弱いところもある。そんな姿を見せてくれることで、親近感がわいたり、頼り頼られ、人と人の仲は深まっていくのかもしれません。
「仲間って大切だけど、どんな人とつながりたいかということも大切。そしてそれは無理やりつくるものでもない」と美帆さん。まずは、時間をかけて活動していく中で、安心できる周りとの関係性を築いていければ。
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◆◆ アクセルとブレーキ、つなぐ人と整える人
以前より、地域活性化に強い関心があったという由華さん。YOKANAは、「行政や民間に取り残されている、すきまにいる人たちの手助けになれたら」という思いで立ち上げたと言います。
一方、知史さんは、「僕は地域づくりをやりたいという強い気持ちがあったわけではなく、妻を応援しているうちに自分も巻き込まれていった感じです」とにっこり。そんな知史さんが綴る、妻・由華さんの応援記は、100本近く。
◇◇ 知史さんが綴る、妻・由華さんの応援記
☞ https://note.com/tomofumi_yunome
また、根っからの勉強好きだと話す知史さん。なんでも、YOKANAオープン準備と並行して学習を重ね、令和2年度の行政書士試験に合格されたそう。
「地域の中にも、『やりたいことはあるけど、法律やバックヤードの事務が嫌でやらない』という人も少なくないと思っていて。『これをこれくらいやればいいんだよ』と、面倒な手続きをみんながわかるようにしたり、若手の創業やスタートアップの相談に乗れたら。行政書士業を通して誰かを応援できたらと思います」と話します。
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今すでに、YOKANAの相談役となっている由華さんと、その相談ごとを整理する役割の知史さん。おふたりの役割分担はバッチリ。
「フロントに立って、地域の人の想いをつなぐ由華さんと、じゃあそれをどうやって進めるのかといところで、書類や内容を整理する知史さん。おふたりは〈つなぐ人と整える人〉だなって感じます。夫婦でその役割分担ができるのは大きな強みですね」と美帆さん。
「僕たちは、自分たちのことを、アクセルとブレーキと表現したりしています(笑)」
そんなおふたりは、今後、商店街や町づくりなど、エリアやビジョンを考える仕事にも挑戦してみたいそうで、「県内各地で、エリアやビジョンづくりのお仕事、対話の場づくりのニーズは増えています。おふたりの人柄なら、すぐにでもチャレンジできる」と美帆さん。
すでに地域の方々との対話を重ねている湯目ご夫妻。今後ますます、おふたりらしい対話の機会をつくっていかれることと思います。
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◆◆ 生業と結びつけていく
「今、YOKANAのチャレンジ相談は無償ですが、協力隊卒業を見据えて収益の柱を作らないといけません。とはいえ、相談に来てくれた人からお金を頂くのは抵抗があって」と知史さん。美帆さんに、ハブディの運営について聞いてみました。
「ハブディは、子育て中のお母さんたちの集まる場が欲しいという思いから作った場所なので、収益よりは、もっといろんな人に使ってほしい想いがあって。島には島プライスがあるから、場所貸しで収益をあげるのも難しい。ハブディそのものは収益の柱にはなっていなくて、ほかでお仕事をもらっていたり、行政事業を進めたり。あとは今、ここに集まってきた人たちと商品開発をしていたりします」。
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鹿児島の離島で活躍する甑島の山下賢太さんみたいに、収益事業を別に持ちながら活動していくのも一つ。今すでにYOKANAにある事業を磨いていくことも一つ。
◇◇ 東シナ海の小さな島ブランド株式会社
「日本のおいしい風景をつくる地域デザインカンパニー」をミッションに、甑島を舞台に、商品開発、飲食経営、宿泊、オンラインストア、町案内など手がける)。☞ http://island-ecs.jp/
これからの模索をしてみても、すぐには答えは出ないもの。それは、湯目さんご夫妻がこれまでにない取り組みに挑戦しているからこそかもしれません。
今後のことを考えつつも、目の前の相談ごとに丁寧に向き合い、形にし、確かな一歩を重ねていく。夫婦で力を合わせ、互いをフォローし尊重し合いながら。
そうして道を切り拓く逞しさを持ちながら、明るい笑顔とやわらかな雰囲気がすてきな湯目さんご夫妻。
おふたりへの相談がやまないのは、「地域ごと」に真摯に向き合うおふたりの姿勢が地域に伝わっているからこそだと感じます。
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※写真を撮るときだけ、マスクを外しています。
◆◆ 商店街を歩く
「こんな場所でしてるということも知ってもらいたいのでぜひ」と、知史さんにYOKANAがある中種子町・旭商店街を案内していただきました。ただ歩くだけではわからない、ローカルな情報や歴史、魅力。そこで生活しているからこそのエピソードが盛り込まれたすてきな案内。楽しそうに一軒一軒をご案内してくださった知史さん、ありがとうございました!
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☞ 昔ながらの商店街周辺マップ。今もアップデートされているそう!真剣な顔で解読する知史さん(笑)
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◆◆ 最後に
地域の活動を進める中で生まれる課題は、ソフトもハードも大小さまざま。そしてそれは、自分たちの知識やスキル、価値観だけで立ち向かうには厳しい時があります。
そんな時、思いに共感してくれたり、課題や葛藤を理解してくれる存在は、地域で挑戦する人を支え、後押しする重要な存在だと感じます。そしてそれは、地方に行けば行くほど尚更です。
離島という環境において、地域の拠点をつくり、挑戦を続ける美帆さんと湯目さんご夫妻。ご両者には共通して、拠点の顔であり運営する責任者として、優しいまなざしとぶれない想いがあるように感じました。
ご一緒させていいただき、みなさんのお話をお聞きしながら、沢山の学びをいただく種子島時間でした。貴重な機会をありがとうございました。
(取材日:2021年11月28日)
◇◇ この時間は、鹿児島県共生・協働センター「地域資源活用・協働活動促進事業」の地域連携アドバイザー派遣を活用されて生まれたものでした。詳細は、共生・協働センターのHPをご覧ください。
☞ http://www3.kagoshima-pac.jp/.../%e3%80%908-25%ef%bc%88.../
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