世界初!コミュニティ大工×コミュニティナースコラボ企画作戦会議@鹿児島県姶良市北山
先日、鹿児島県共生・協働センター「地域資源活用・協働促進事業」の地域連携アドバイザー派遣の一環で、NPO法人頴娃おこそ会副理事長兼観光プロジェクトリーダーでコミュニティ大工の加藤潤さんとともに、姶良市・北山校区コミュニティ協議会にお伺いさせていただきました!
北山の地域連携アドバイザー派遣は昨年に続き2回目。地域視察と意見交換を行った第1回派遣を経て、北山校区コミュニティ協議会代表の内甑さんと、北山で活動するコミュニティナースの山下えりかさん、玉井妙さんとのやりとりを重ね、3月には、コミュニティ大工×コミュニティナースのコラボ企画の開催が決定。同時に「北山に、コミュニティナースの活動拠点をつくりたい」という動きも加速しています。
第2回派遣となる今回は、企画の内容に関する作戦会議と、これから活動拠点となる空き家の下見が行われました。
◆◆ 企画のねらいとおおまかなスケジュール
◇◇ イベントのねらいは、大きく3つ
①現在、県内各地でコミュニティナースとして動きはじめている方がいるものの、それぞれが手探りで活動している現状。顔を合わせ、仲を深め、鹿児島県内のコミュニティナースネットワークをつくることで、困った時に相談したり、助け合える関係性をつくりたい。
②これまで10年以上の長きにわたり、地域の人との信頼関係を構築しながら、数々の空き家再生を手掛け、地域づくりに関わってこられた加藤潤さんにお話をお聞きすることで、学びを深めることはもちろん、それぞれの活動につながるヒントにつながるのではないか。
③現在、県内のコミュニティナースネットワークづくりとあわせ、姶良市北山にて、地域の協力体制を得ながら、拠点をつくろうという動きがはじまっていることを、コミュニティナース研究所のみなさんをはじめ、多くの方に知ってもらいたい。
◇◇ おおまかな当日スケジュール
日 程:
3月中を予定
内 容:
①加藤さんより、コミュニティ大工目線で〈地域づくりって?空き家再生とは?北山の魅力とは?〉、また、加藤さんが立ち上げた〈空き家再生研究所〉のお話を。
②妙さんより、昨今のコミュニティナースの動きを俯瞰的に教えていただきつつ、鹿児島の動きについて
③最後に、えりかさんより、鹿児島県姶良市北山の動きと、これからのことについて
当日は、3人のトークイベント形式で、オンライン配信を予定しています。
配信終了後は、北山を会場に県内各地で活動するコミュニティナースのみなさんと情報交換の場をつくっていきます。
◆◆ ねらいを確認しながら、内容をつめていく
「まずは当日、加藤さんにどんなお話をしていただくかというところなのですが、何かイメージがありますか?」と妙さん。
「大工仕事や空き家というより、そこに人が集まったり、注目してもらったり、ソフト的な求心力があれば、何かが動き出したりしますよね。空き家再生・拠点づくりをコミュニティ的に進めることによって、新たな動きが生まれていったり。
北山では、コミュニティナースが動き始めて拠点をつくろうとしてる。北山に面白く人が集まることで、何か広がっていったらいいなあと思ってます。また、全国にいるコミュニティナースさんに北山に興味を持ってもらうきっかけとしても今回のコラボ企画は面白そうだなと思いました」と加藤さん。
また、「北山には、地域で活動したいコミュニティナースさんたちがいて、それを面白がって全面的に協力してくれる〈地域のおっちゃん〉こと内甑さんがいる。そこで一緒に何かできたら楽しそうだなと。企画当日は、参加する各地のコミュニティナースさんたちからも、これから何していこうかと、おもしろく動きはじめればいいですね」とひとこと。
◆◆ コミュニティナース研究所と、空き家再生研究所
今回のコラボ企画開催にあたっては、「県内のみならず、全国各地にネットワークがあるコミュニティナース研究所にも、関心のある方がいらっしゃる」と妙さん。
「今、コミュニティナースの九州支部や東海チームなど、各地でエリアごとのつながりが生まれています。これから皆でチームをつくって活動を進めていきたいという流れの中で、きっとほかの地域の人にとっても、鹿児島では何が起きているのか、北山ってどういう場所なのかということが参考になると思います。あわせて、移住も視野に、鹿児島・北山に関心を持つきっかけになればいいな」と話します。
一方で、コミュニティ大工である加藤さんも、建築や空き家再生の仲間たちと『空き家再生研究所』を立ち上げていらっしゃるのだそう。
「大工みたいなことしてみたいけど、どうしたらいいか分からない人って沢山いるんですよ。『空き家再生研究所』は、プロの工務店の社長と、プロの建築士、そこに初心者や大工仕事を学びたい参加者がいて、みんなで作業するというものです。
参加者はプロに学びたい方たちだから、一緒に作業できる貴重な機会になってます。プロ以外は全員素人だけど、一回に2日ほど時間をかけて、家づくりをしていきます。
そうすると、そこで『こんな簡単に、自分で空き家再生してもいいんだ』と建築に対するハードルが下がって、自分の地域でもやってみたいという思いにつながったりするんですよ」。
作業のみならず、大家さんとの交渉や契約などのノウハウも兼ね備えている加藤さん。これから空き家を手がけたいという方には、そうした知識も教えてくださるのだとか。
そして、「(作業も、交渉・契約も)教えると、みんな自分でやっちゃう」のだそう。
「だから、幅広く考えたら、コミュニティ大工は職人じゃなくていいんです。むしろコミュニティ要素が強いほうが良くて、そういう人が大工になると面白いことが起こる。
それは、コミュニティナースも似ているなと思っていて。医療の専門知識が無くても、それを勉強する気持ちがあればいい。むしろコミュニケーションとか地域のコミュニティに力を注げる人に集まってもらったほうがいいんじゃないかなと感じました」。
加藤さんの言葉に、まさにそうなんです、と妙さん。
「コミュニティナースをしたい人は多いけど、どうしたらいいかわからないという人が多いんです。ぜひそのようなお話を聞かせていただきたいです」。
あわせて、えりかさんからは、「北山は過疎地域。ゲストハウスやイベントなど、地域資源を活用して何かしようと思えば、何でもできる。まずは何から手をつけていけばいいのか考えたい」と、今、実際に北山に住んでいるからこそのテーマの提案も。
「地域資源を活用する」、「何でもできる」という、えりかさんの力強い言葉。この企画をはじまりに、これから北山に足を運ぶみなさんと、そして北山に住むみなさんと、広くその可能性を追求していくことができれば。
◆◆ 地域の人たちがつくった「北山茶屋」
コミュニティナースさんたちの活動拠点となる候補物件『北山茶屋』は、北山のメインストリートにある、小さな建屋。内甑さんに、北山茶屋について教えていただきました。
「地区では、今から13年前くらいに『蕎麦の里づくり』事業をしていました。栽培して収穫した蕎麦を食べる場所として、5、6年前に地域のみんなで作ったのが『北山茶屋』です」。
その後、営業したり、しなかったりという状況が続き、現在は使われていないという北山茶屋。
「でも、建物は残ってるし、地域で活用できたらと思いながら、できていなかった。そこにコミュニティナースさんたちが来てくれて。ぜひ使ってもらえたらと思っています」。
コンテナをベースに、屋内は10畳ほどの飲食スペースと厨房。カウンター席もあり、屋内も綺麗。加藤さんいわく「DIY作業入門編にはちょうどいい」そう。
その後も内甑さんの空き家案内は続きます。「北山茶屋が手狭になったら、こっちを交渉することもできるから」と、その数合計5軒!
「空き家再生ってハードから、となっちゃいがちですが、『まずあつまる』、ソフトが大事だったりします。北山はとくに、人にスポットあてて、やってみて、もっとやりたくなったらその時に広げていけばいい。もし今後、住みたいという人が出てくれば、住居としての可能性もあるし、何より、内甑さんの交渉が強力。状態がいい空き家が複数あることは、地域の可能性であり、ポテンシャル」と加藤さん。
空き家は、地域の資源でありポテンシャル。過疎高齢化が進む中山間地域で、終始、前向きなワードが飛び交います。
◆◆ 適切な発信をしていくこと
◇◇◇ 無料か、有料か
当日の運営について、話し合いは進みます。会場の規模、ネット環境、事前の動画撮影。また、オンライン配信をするならば情報機器を扱える専門の人がいたほうがいい。
しかしそうなると、経費が発生する。となると、有料イベントにしたほうがいいのでは?「とはいえ、初めてのことなのに、有料にするのは抵抗がある」という声も。
有料となると開催側のハードルも上がる。今後、有料の配信を進めていくとしても、初回である今回は、練習として無料で開催したい。
そこに、「経費は地区で用意するから」と内甑さん。大丈夫ですかという声に、「大丈夫」と力強いお言葉。
『無料で開催したい』という思いは、とくに地元・北山のみなさんに強く、対して『有料でも開催できる』という思いは、そこに付加価値を感じているからこそ。
「地元の人は、『こんなところにお金が落ちるわけないじゃん』と思っていることでも、外から見ると素晴らしいってこと、よくあるんです」と加藤さん。今は何より、「有料にできると感じたことが大切。この可能性を覚えておきましょう」とひとこと。
◇◇◇ 地域と情報発信
また、今回の企画は新聞記者さんにも関心を寄せられているのだとか。地元の新聞は、とくに地域のご高齢の方々が目を通す発信媒体。また、市役所や県庁の方の目にもとまりやすい。新聞を通し、人目に触れることで、将来的に北山の求心力にもなる。
今回の発信方法に関して、地元としてはどう感じるのか。内甑さんにお聞きしました。
「オンラインは、興味のある人たちが見るものだから大丈夫。地域の外から注目が集まるのはすごく良いこと。けれど、地域の人たちは、地元の動きを新聞を通して知ってしまうと『自分が知らない所で動いている』という気持ちになる方もいる」と内甑さん。
その言葉を受けて、「発信は、しすぎたらいいということだけでもない。静かにスタートしたほうがいいこともある。地区には、総会の場などで、きちんと挨拶するというのもいいと思います。今回は、自分たちの想いを確かめる場。それだけでも十分意義がある」と加藤さん。
地域で何かを進めていくときに、スピード重視だけでなく、あえてゆっくりと順番を踏む。時に地域においては、とても大切なことだと、あらためて学ばせていただいたのでした。
その後、役割分担を終え、この日の作戦会議は終了。最後に、みなさんから一言ずつ、お言葉をいただきました。
◆◆ 最後に一言ずつ
まずは内甑さん。「北山は、空き家が豊富。それを活かせるなら、自分もDIYを学んで、できることはやっていきたい。ぜひ今後、『鹿児島のコミュニティナースといえば北山』と言ってもらえるような地域になれたら。そのための協力は惜しみなくやっていきます」と力強いお言葉。
続いて、「こうして企画が進んで、本当にありがたいと思っています。私自身、北山に住んでみて、すごくいい地域だと感じています。何か自分にできることはないかと考えた時に、移住者がいたら私も嬉しいですし、それで地域が元気になればと思うようになりました。また、妙ちゃんが一緒に活動したいと言ってくれたように、地域に人が来る流れをつくることで、北山という地域を元気にしていけたらと思っています」とえりかさん。
アドバイザー・加藤さん、「コミュニティ大工とコミュニティナースでは、ナースさんが超有名ですよね。そこに乗っかって、コミュニティ大工が広まればという下心です(笑)。というの冗談で、こうして北山に来れて楽しいですし、また遊びにもきますし、お力になれればいいなと思っています」と明るく、頼もしいひとこと。
そして、妙さんより、「この機会が本当にありがたいなと。加藤さん、長年にわたる取り組みに学ぶことが本当に沢山。お話をいただきながら、勉強させていただけたらと思っています。内甑さん、力強いお言葉と資金面のサポートまで、感謝してもしきれない。イベントをきっかけに、北山に人が来る流れをつくったり、コミュニティナースの動きが加速していくようお手伝いさせていただけたら。
また、えりかさんが今まで積み重ねてこられた地域の方との関係や頑張りがあっての今回の企画。私は、その背中が眩しくてかっこいいなと思っています。北山のために何かしたいという熱い想いに心動かされて私も今ここにいるので、3月のイベントで、もっといろんな人に北山やえりかさんを知ってもらえい、仲間が増えたら。イベント開催できるのは皆さまのおかげさまです、がんばりましょう」と素敵な笑顔でしめくくってくださいました。
また、県庁の皆さんからは、「全国的・県内においても動きが出てきているコミュニティナースさんの取り組み。これからネットワークが構築される過程において、情報発信など、県としても何かできることがあれば」と心強いお言葉。
地域を舞台に、立場の異なる皆さんが同じ方向を向き、一つの企画がつくられていく。その貴重な時間をご一緒させて頂いたことを、心からありがたく思います。3月はいよいよコラボ企画。北山の動きから目が離せません!
(取材日:2022年1月20日)