【SS】川の遊び
あるところに氷がたくさん浮かんでいる川がありました。真夏だというのに川の底の石もみんな氷、流れを分ける岩も氷。どこもかしこもツルツルで、あたりいちめんがひんやりしているのでした。
子供たちはいつもそこで川遊びをします。今年の夏も大きなスイカを抱えてその川へ遊びにいきました。
川の底が滑り台のようになっていて、子供たちは流れに乗り、滝滑りをします。たくさんはしゃいだら、氷のくぼみに入って火照った体を冷まします。
さて、子供達がスイカを食べ終わって、さあ2回目の川遊びと思った時でした。川の上流から、真っ白いモジャモジャがたくさん流れてきました。それはとても大きなモジャモジャで、モップどころの大きさではありませんでした。昔の絵に出てくる縞模様の雲のような、真っ白いモジャモジャです。それは岸辺にゆっくり流れ寄ってきました。子供たちはなんだろうと思って川に駆け寄りました。
一人が氷で足を滑らせてつるんと転び、川に落ちて白いものに触ると、叫びました。
「そうめんだ!」
そう、それは大きな大きなそうめんの塊だったのです。
氷の川にそうめんが流れて来たのでした。これにはみんな大喜び。そうめんでいっぱいになった川に飛び込んで、サワサワ流れて揺れるそうめんを触ったり、体に巻きつけてみたり、上に浮かんでみたり、かじってみたり、思いつく遊びはみんなしました。そうめんを太く撚って、水中ハンモックも作りました。
そうめんはしばらく岸辺にとどまって、子供たちの気が済んだ頃、またゆっくりゆっくり流れて見えなくなりました。遊び疲れてお腹もいっぱいになった子供たちは、そうめんが見えなくなるまで見送って暗くなる前に帰りました。
そうめんはそのあと、海に行ったのでしょうか。もしかしたらしょっぱい海に浸かって、太陽で暖まって、にゅうめんになったのかもしれません。
おしまい。