見出し画像

2020年ベストアルバム(海外)

はじめに(2020年を振り返って)

2021年最初の記事として、コロナ禍の影響で何にも無かったかの様な2020年の記憶を探り出しながら、そうじゃない、良かった時間の記録として、自分の中で2020年を振り返った時に思い出せそうな音として感じられるアルバムをピックアップしました。

この記事を書く前に、サラッと色んな音楽メディアの2020年ベスト記事や、twitterやnoteにアップされている自分が信頼している音楽好きの方々のベスト記事を読んだりしてみました。部分的には重なるアルバムがあったり、自分が聴いて良いと思ったアルバムがあっても、何度も繰り返し聴いたり、後に思い出して聴き直したりするであろうアルバムは、意外と他の人がピックアップしていない作品だったりするものだなと思いました。あと、これはこのジャンルでは絶対ベストアルバム候補でしょう、と思っていたアルバムが、あまりピックアップされていないものも多く、特にそこそこキャリアのある中堅アーティストの数年ぶりの新作、というのは話題性が乏しいのか、あまり陽が当たらない感があり、そのジャンルを熱心に聴いているリスナーには届くものの、それ以外の音楽ファンにまでは届きにくい感じがしました。なので、自分がこういう記事を書くにあたっては、他の2020年ベストアルバムで多くピックアップされているタイトルは外して、あまり名前が上がってなさそうなアルバムを意識的にチョイスする様にしています。

個人的な2020年の振り返りとしては、やはりコロナの影響は仕事的に少なくは無くて、3月の西新宿の催事は既に時間短縮され、4月の大宮催事では緊急事態宣言により最初の1週間で休止となってしまい、4月2週目から5月3週目くらいまでは数日の出勤日を除いて、自宅待機の日々を過ごしていました。そんな時間の記憶こそ忘れてしまいそうなので、このnoteにもマメに日々の雑記を書き残す様にしていました。今読み返しても、たいした日常ではないんだけれども、それが妙に愛おしい一ヶ月半の自粛生活だったな、と思えたりもします。思えば、仕事を始めてから、これだけまとまった期間の休みを取れたのは人生で3回くらいしか無かったし、ここ5年間では初めてだったといます。その一ヶ月半で考えた事、感じた事があったからこそ、その後の7か月くらいをしっかり乗り越えられた気がするし、もっとやりたい事ややれた事があったかもとも思えるけれども、それは2021年以降の目標にしたらいいのかなとも思います。12/31に東京でのコロナ感染者数が1300人という大台を軽く超えた事も、一瞬のトピックにしかならず、テレビでもSNSでも例年通りの大晦日や元旦の日常が続けられています。当たり前の日常を続けることも大切な事だけれども、どこか他人事の様で危機感が無い状況というのは、僕個人としては、なんとなく信じられないな、という感情がどこか残ってしまうし、一個人の行動として出来るのは、仕事の時以外は極力不要不急の外出やそれに伴う他人との接触を避け、先ずは自分と家族の安全を守る事だと思うので、唯一の正月休みである元旦に、昨年の振り返りをしながら、ゆっくりと2020年の個人的なマスターピースを振り返ってみます。

1.Nathan Fake / Blizzards (Cambria Instruments)

イギリス Norfolk出身のソロアーティスト、2017年Ninja Tuneからリリースされた「Providence」以来3年ぶりの通算5枚目のフルアルバムは、Nathan Fakeが主催するCambria Instrumentsからのリリース。

Nathan Fakeといえば、2003年にJames Holdenが主催するBorder Communityレーベルから12インチ「Outhouse」でデビューしており、多くの人に知られるきっかけとなったのは2004年にリリースされた12インチ「The Sky Was Pink」でしょう。特に、この曲のJames Holdenによる9分30秒に渡るHolden Remixはテクノ、トランス、ハウスなどジャンルを超えたクロスオーバーヒットをしたクラシックとして記憶に残る曲だと思います。

このアルバムは、プレスリリース(というよりも販売店向けの商品紹介ページ用テキストとして卸業者が書いた宣伝文なのかな)としては、上記の「Border Community時代の初期作に回帰した作風」という中堅アーティストのカムバック作に至極当たり前につけられそうなキャッチフレーズがつけられていましたが、そんな表現じゃ収まり切らないくらい、現役アーティストとして充実した内容の傑作アルバムだと思いました。11曲63分、最初から最後までどの曲をとっても世界観が統一されており、曲の粒立ちも整っており、一瞬たりとも退屈な瞬間が無く、ノンビートで美しい最終曲の「Vitesse」が終わると、また1曲目からリピートしたくなる様な中毒性の高い純度の楽曲が詰まっています。それこそ、Nathan Fake印と言えるメロディの良さ+トランス的なビートの構築感が、最高に高められており、フルアルバムとして聴き通せる、ダンスアルバムとしてもリスニングアルバムとしても満足感の高い作品になっています。個人的には、このアルバムが出てしまった今、Nathan Fakeの代表作は「The Sky was Pink」でも、ファーストアルバムの「Drowning in a Sea of Love」(愛の海で溺れている...なんてロマンティックなタイトルなんだ!)でもなく、最新作「Blizzards」で間違いないと思うし、この先のキャリアにも期待しかありません。最高。

Nathan Fake | Boiler Room: Streaming From Isolation with Night Dreamer & Worldwide FM

2020年6月29日に配信されたBoiler Roomの「Streaming From Isolation」企画。おそらく自分のスタジオと思しき場所からの34分のライブセット。素晴らしき「Blizzards」を補完する聴き応えのある内容でした。おすすめ。

2.Lorenzo Senni / Scacco Matto (Warp Records)

イタリア ミラノ在住の電子音楽家Lorenzo Senni、自身キャリアでは通算5枚目、Warp Recordsからは初のフルアルバム。Lorenzo Senniのキャリアと、このアルバムの解説については、Mikikiの門脇綱生さん(Meditations)による記事で全てわかるので、リンクを貼ります。

これを改めて読んで気づいたのは、Lorenzo Senniのキャリアの面白さですね。「10代の頃より地元パンク/ハードコアシーンに身を置き、ドラマーとして活動。」「大学で音楽を学び、本格的にエレクトロニック・ミュージックに目覚め、ヤニス・クセナキスやジョン・ケージといった電子音楽のパイオニアを聴き込む。」「自身の最大の関心の一つであるトランス・ミュージックのトラックを研究していく中で、同ジャンルに於ける〈ビルドアップ※〉と呼ばれる部分に惹かれ、これを自分なりの視点で捉えている。そして、ベースレスのストラクチャーを土台に、徹底したミニマリズムの中へとトランスのシンセの煌びやかさと恍惚を落とし込んだ〈Pointillistic Trance〉(点描的トランス)なる画期的なコンポジションに到達した。」

こんな面白いキャリア、「エイフェックス・ツインも認める才能」とかいうインスタントなキャッチより全然惹かれちゃう。

僕がLorenzo Senniという名前を意識して聴く様になったのはWarpからリリースされたこのシングル(「来たるべきトランスの”カタチ”」というタイトルの秀逸さよ!)からなのですが、初期Warpの12インチを思わせるパープルスリーブに描かれた「LxSx」のロゴになんとなく既視感があるな、と思ってたら、そうかアナル・カントのAxCxロゴオマージュだったのかと。

2019年以降Spotifyで1曲ずつ先行リリースされる新曲を聴く度、常に最高を更新してて、このアルバムへの期待がめちゃめちゃ高まっていましたが、アルバムを通して聴いても全く期待を裏切られないどころか、通して聴く事で高まるトランシーな快感。シンセフレーズの美しさ、音色の突き詰められ感、ほとんどドラムを排された構造なのに、めちゃくちゃ踊れるアップリフティングなサウンドデザイン。とても愛おしい傑作です。最高。

昨年11/25にリリースされた最新曲「Vandalize Music」もやっぱり最高。

そして、この曲のDocument Filmが超最高。ピアニストが着る白いスーツの背中のデスメタル調のLorenzoロゴ、白いピアノをスプレーでボムしまくり、最後は破壊する2600キャップ(Arp2600ってことでしょ)姿のLxSx、めちゃくちゃカッコいい。何やっても最高。

3.Conducta / The Kiwi sound (Kiwi Rekords)

イギリス ブリストル出身のDJ/プロデューサーConducta、2019年に立ち上げたUK Garage最前線をレップするKiwi Rekordsより最新UKGトラック(New UKGとも言う)38曲を詰め込んだ初のミックスCD。

Conductaのキャリアについては、Higher Frequencyの記事が分かりやすかったので貼りつけます。

Sammy Virji、Prescribe Da VibeをはじめとしたNUKGシーンの次世代タレントの最新曲をパッケージした2020年春の記録が、こういうCDのパッケージとして残ることは、後年への記録として重要なことだと思います。どうしても、この類のミックスは古くなりがちだし、最新ミックスがいちばんフレッシュにならざるを得ない性質のものではあるけれども、1990年代中盤から連綿と続くUk Garageシーンの今の形が最適な形でコンパクトにまとまってる名盤だと思います。

Kiwi Rekordsの魅力は、キャッチーで耳障りの良いメロディーや歌・ラップが乗りつつ、しっかりストリート感が残るルードなベースラインやキックの音質に拘った、クリスピーなサウンドデザインだと思います。それが1曲2分弱のテンポの良いミックスで、ポンポン繋がれていく為、長尺でも飽きさせない素晴らしさが詰まってると思います。この手のサウンドは、門外漢の人にはなかなか手をつけにくいジャンルだと思いますが、とりあえずConductaかKiwi Rekordsのタグをチェックしておけば、間違いないでしょう。最高。

Kiwi Rekords、2021年1月1日時点までのコンプリートカタログとなるプレイリスト。36曲2時間33分。もっと欲しい方向け。

KIWI DIREKT (mixed by Conducta)

2020年8月14日にアップロードされた、The Kiwi Soundより最新のミックス60分。最近はYouTube上のミックスも、曲ごとにタグが打ち込みされているからクレジットも全部分かって親切ですね。

4.Minor Science / Second Language (Whities)

イギリス出身、現在はベルリン在住、音楽ライターとしても活動していたAngus FinlaysonによるユニットMinor Scienceによるファーストアルバム。

この名義でのデビューは2014年のThe Trilogy Tapesからの12インチ、それ以降はYoung Turksのサブレーベルである先端ダンス音楽レーベルWhitiesからのリリースということで、UKアンダーグラウンドのエリートコースをひた走るキャリアが素晴らしいですが、この充実したアルバムの音楽偏差値の高さもエクスペリメンタルとベースのちょうど良い落しどころを探っているかの様な、意識の高い作風となっているのに、純粋に音楽として聴いても小難しくなく、聴いてて楽しいところが、今年のベストアルバムとして記憶に残る一枚となりました。

Minor Science | Boiler Room: Budapest

2020年3月6日に配信されたBoiler RoomによるBudapestでの60分DJセット。批評よりもダンスへの快楽がやや勝る感じが現場ならではという感じで、アルバムとはまた違った味わいがあっていい。

5.Khotin / Finds You Well (Ghostly International)

カナダのプロデューサーDylan Khotin-Footeによるソロユニット、自身通算4枚目、名門電子音楽レーベルGhostly International移籍後初のアルバム。

この人の面白いところは、作品によってアンビエントだったりローファイハウスだったり、ダウンテンポだったり、緩やかにジャンル横断を続けている作風だけれども、一貫して受ける印象は優しいコード感のゆるふわアトモスフェリック。最初のデビューがカナダのカセットレーベル1080pからのリリースというのも納得。このアルバムについての解説は、日本盤CDの発売元であるPLANCHAレーベルの記事がわかりやすかったので貼りつけます。

2020年はコロナ禍の自粛生活以降、なんとなく時代が求めるムードとしてアンビエント、ニューエイジ、エクスペリメンタル寄りの音源をいろいろ聴く事が多かった気がします。その分、ダイレクトに歌詞が届いてしまう日本語詞の音楽をあまり聴かなかったり、数年前より興味のある現代ジャズの新譜などは主張が強すぎる感があって、あんまり身体が求めているモードでなかったり。その中で「聴いても、聴かなくてもいい」くらいのバランスで聴けるアンビエント/ニューエイジ的な音は、馴染みが良かったのかもしれません。もちろん、ゆるけりゃ何でもアリな訳ではなくて、自分のムードにしっくり来る、コード感・テンポ・リズムの強さ・アルバム全体のサウンドデザインと尺など、ピタッとはまるものは少なくて、こうやって一年を振り返った時に名前が思い出せるタイトルはそれほど多くなかったりします。(まあ1回しか聴いてないものが多いので、複数回聴き込めば印象も変わるのでしょうが、なかなかそこまで時間を割けなくて)

このKhotinのアルバムに関しては、色んなフォーマットでリリースされている様ですが、ジャケットのローファイな荒れデジタル感も相俟って、カセットテープで聴くのが一番しっくる来るのかもしれないですね。個人的には、2021年中にモニタースピーカーを新しく更新したいと思ってるので、その時に改めてこのアルバムを聴き直してみたいと思っています。

khotin on the lot radio 04/20/20

2020年4月21日に配信された自室と思しき場所からの2ターンテーブルミックス60分。その選曲は坂本慎太郎からThe Shamen / Omega Amigoまで様々でユニーク。我々が大好きなベッドルーム音楽オタク仲間なんですよ、というカナダからの手紙。

Khotin - Groove 32 (Official Video)

アルバム収録曲のMV。90年代のホームビデオ的なローファイデジタル感。こういうのって、もう何周目、という感じもしなくもないけど。

6.Machinedrum / A View of U (Ninja Tune)

ノースカロライナ出身のTravis Stewart、別名義を含めれば2000年のデビュー以来18枚目のフルアルバム、Machinedrum名義でも12枚目のアルバム。初期はIDMの名レーベルMerckより、その後LuckyMeやPlanet Muを経て、2013年のVapor City以降はNinja Tuneからリリースを続けており、本作もNinja Tuneからのリリース。

初期IDM時代の刺激的なカットアップ、Planet Mu期~Vapor City期のJUKEに寄せたボトムの強いビートエディット、2019年の同時代の盟友JIMMY EDGARとのユニットJ-E-T-Sを経て、2020年の新作は洗練された耳障りの良い電子音楽として聴こえます。アルバムの半数近くを占めるボーカル曲や他ジャンルの音楽家との共演曲は、ポップス的にも聴けるくらい軽やか。そんな中でも8曲目「Believe in U」はタイトルからもわかる様に、90's渋谷系DJクラシックNo.1「Jackson Sisters / I Believe In Miracles」モロ使いの大ネタをざっくりチョップしていて、ここだけ00年代初期のIDM時代を思い出されて懐かしいです。僕が見える風景は、あの頃のD.M.R渋谷店1F(今HMVレコードショップのところ)の奥の方のIDM/アングラヒップホップコーナーの面出し陳列と、毎週更新される詳しいレコードカタログのフリーペーパーです。

7.Kelly Lee Owens / Inner Song (Smallsound Supersound)

イギリス ウェールズ出身、サウスロンドン在住のプロデューサー、Kelly Lee Owensの前作以来3年ぶりのセカンドアルバム。共同プロデューサーJames Greenwoodと共に冬の期間1か月籠ってレコーディングされたという作品は、柔らかい電子音と優しい音色のビートに乗るKelly Lee Owens自身のボーカルが軽やか。このアルバムのシンガーソングライター的なジャケット写真は、すごく内容を的確に表現できていて、Inner Songというタイトルともマッチングしていて素晴らしい。

Kelly Lee Owens - Full Performance (Live on KEXP)

2018年7月20日にKEXPでパフォーマンスされたライブセット24分。この人の柔らかい雰囲気とテクノ的な音創りとのバランスが良く伝わる。

KELLY LEE OWENS techno set in The Lab LDN

2020年9月26日に配信されたmixmagからのロンドンThe LabでのテクノDJセット60分。こちらの方がテクノ寄りの嗜好が良く伝わるフロア仕様。

8.Hudson Mohawke / Airbone Land (Warp Records)

グラスゴーの天才プロデューサー/ビートメイカー Hudson Mohawkeによる今年下半期に突如リリースされた3枚の未発表ビートテープ、便宜上ここではTrilogyの3枚目となる「Airbone Land」を1枚としてカウントしているけれども、この前に来る2枚もセットでの3部作として2020年に良くリピートしたアルバムとしてベストアルバム入りさせました。

Hudson Mohawke / B.B.H.E. (Warp Records)

Hudson Mohawke / Poom Gems (Warp Records)

こういう作品は、オリジナルのフルアルバム扱いされない為、2020年のリリースとしても記憶されなさそうだし、1枚あたりが40分程度で1~2分台の短い曲も多いので、あまり作品としてカウントされてなさそうな扱いがなんか勿体なくて。だって、どれ聴いてもハドモ印のキッチュでドープなビートばっかりで最高だから。本当の新作のフルアルバムが待ち遠しいけど、それまでハドモのビートに飢えた時はこの3枚のどれかを再生していくと思います。

ちなみにこの3枚のキッチュで印象的なアートワークはKanye WestやBIG LOVE RECORDSのロゴでも知られるCali Thornhill Dewittによるもの。この3枚のアルバムを3本のカセットテープにして、1つのパッケージにした限定ボックスセットもリリースされているようで物欲をそそられます。

今年のハドモといえば、このUnreleased Trilogyの前にもBandcamp限定でリリースした大ネタEP「Heart Of The Night」

JIMMY EDGARとの共作「BENT」

そしてなんとTigaとの共作が2曲

Tiga, Hudson Mohawke / Love Minus Zero 

Tiga,Hudson Mohawke / VSOD(Velvet Sky of Dreams)

極めつけに最高なのが、2020年12月23日に配信されたDJ MagのBest Producer & Best Album受賞記念として公開されたAudio Visual DJ set。馬鹿馬鹿しさも極まってて最高。この動画のいいね!の数に対して、よくないね!の数の多さw 全然理解されてなくてウケるw

Hudson Mohawke Audio Visual DJ Set | DJ Mag Best of British Awards Best Producer & Best Album winner

9.Dance System / Where's the Party At? (System Records)

本名義よりもBok Bokと共にNight Slugsレーベルを主催するアーティストL-Vis 1990名義としての活動を良く知られるJames ConnollyによるDance Systemによる全曲コラボレーションによる18曲のミックステープ。リリースされたのが2020年12月だったので、2020年のベストアルバムの類にはほぼエントリーされているのを見かけなかったけど、この12月にハマりまくった僕としては、今年の裏ベストとしてあげたいくらいの大傑作だと思ってます。

このDance System名義は意外と歴史があって、最初のリリースはオランダのCloneのサブレーベルClone Jack For DazeからリリースされたEPが最初でした。

Dance System / Dance System EP (Clone Jack For Daze)

2015年にUltramajicからSystem Preferences EPを出した後はしばらく休止期間を経て、2019年に突如再開。Modeselektor主催のMokeytown Recordsを含め、4つのレーベルから続々とEPをリリース。2020年は満を持して、自身のSystem Recordsをローンチして先行リリースを続け、待望のアルバムリリースとなりました。

Dance System / Wind'Em Up (Mokeytown Records)

もうこのジャケットで既に、パラッパラッパー的な犬のキャラクターがジャケットに登場しています。

満を持して発表されたこのミックステープには、先ほどピックアップしたHudson Mohawke(当然相性最高)に始まり、次世代のエース候補India JordanやBig Mizをフックアップしていたり、全曲アップリフティングなファンキーテクノや大ネタ使いのフィルタードハウスに溢れています。これは90年代後半から00年代前半にダンスミュージックを経由した同輩には懐かしさに溢れつつ、きちんと今っぽいサウンドデザインに落とし込まれているところが最高です。

Dance System w/ India Jordan & Hudson Mohawke - Let's Go! & Hands in the Air (Official Video)

次世代の才能India Jordanとハドモとコラボした2曲のMV。90年代的な世界観も適度なフルCG感の湯加減も、誰も真似できない絶妙な匙加減で最高。

このアルバムを理解する為のサブテキストとして一番最高の資料となるのが、Dance System自身によるSpotifyのプレイリスト「Dance System's Classic Selection」。12時間135曲に渡るアシッド・ハウス、シカゴ・ジャッキン・スタイル、ゲットー・テックからフレンチ・タッチまで最高の選曲。アガる。

Dance System's Classic Selection

ここから先はDance Systemによる最高のDJセット動画を好きなだけ貼りつけます。どれを見ても最高ですし、DJ上手すぎてヤラれます。全部観るのがおすすめです。(再生回数の少なさが信じられない...理解されてなさ...)

DANCE SYSTEM - WHERE'S THE PARTY AT? LIVE STREAM (SYSTEM RECORDS)

Dance System | Ministry Weekender | Rome DJ Set

Dance System - MOS TV Isolation Station | DJ Mix

Dance System - FLY [live & direct]

Dummy Mix 605 | Dance System

このDummy Mix、日本の宝"國士無双"Guchonくんの曲「Ramen Track」もプレイされてて、分かりが過ぎて最高です。

10.Four Tet / Sixteen Oceans (Text Records)

順不同のセレクションですが、最後の1枚はなんとなくThe Avalanches / We Will Always Love Youにしようと思ってたんですが、まだまだ聴き込みが足りなすぎるので、思い入れが微妙(好きは好きに決まってる)なのと、色々散見した2020年ベストアルバムの記事にも多くピックアップされていたので、それよりもこんなに傑作なのに、Four Tetが良いのなんて当たり前みたいなムードでベストアルバムにピックアップされてなさすぎだったので、年末に滑り込みでリリースされたアンビエント寄りの新作も込みで、Four Tetの最新作を最後の1枚としてピックアップしました。

The Avalanches / We Will Always Love You (Modular Recordings)

こんなの解説抜きに好きだ。完全に好きに決まってる。最高。

Four Tet / Parallel (Text Records)

2020年末になって、突如リリースされた今年2枚目のフルアルバムは、全曲Parallelと名付けられ、ナンバリングされた10曲から成る70分。とはいえ、その半分は1曲目のParallel1の26分のノンビートトラックで占められている。2曲目のParallel2からはビートもしっかり入り、Sixteen Oceansの続編としても聴く事ができる。

Kieran Hebdenのキャリアとしては9枚目のフルアルバムとしてカウントされる「Sixteen Oceans」は、近年のLEDライティングと連動したライブセットでも披露されているであろう曲を多数含まれており、ひたすら美しいコードと音色、磨き抜かれたビートに包まれています。16曲54分、うっとりしているうちに聴き終えてしまう儚さ。近年の来日時にも、曲とシンクロするLEDライティングを帯同したライブセットは披露されていない様なので、このコロナ禍が明けて、海外アーティストが自由に来日公演を開催できる日が来たら、真っ先にFour Tetに本気のフルセットライブをやって欲しいなと思いました。最後にYouTubeで見つかる近年のライティングライブセットの動画を貼りつけて、2020年のベストアルバム10枚振り返りを終わります。

Four Tet - Live at Sydney Opera House | Digital Season

Four Tet - "Morning Side" | Live at Sydney Opera House

Four Tet Boiler Room London Live Set

Four Tet | Boiler Room: Streaming From Isolation | #8




毎日聴いた音楽についての感想を1日1枚ずつ書いています。日々の瑣末な雑事についてのメモもちょっと書いてます。