罪 第14話
【前回の話】
第13話 https://note.com/teepei/n/n2453d26769fb
宙にきらめくその文字は、安いネオンを思わせる。
コンセプトは『失われた近未来』。
かつて描かれた近未来観をあえてデザインに取り入れることで、郷愁と最新の錯乱を生み出す。
空はなく暗闇で、平均して金属的な質感を取り入れている。
不意に存在する構成物は、一見すると目的も正体もわからない。
しかしこの仮想空間上でさらにアトラクションを提供してくれる、興味深い要素であることをすぐに理解するのだった―
拡張現実空間から、より深い仮想現実空間へ。
この二重構成が、限られた校舎の空間に果てしない広さと想像し得ない深さを与えた。
そして開業した当初から、この空間は常設かつ主要な設備である。
拡張現実である丘の上の世界は、それ自体に留まっても楽しめるように、流動的なものも含めた設備が用意されている。
そして仮想現実空間にはインターネットとの融合を垣間見せる設備があり、話題を呼んだ。
インターネットに見立てた閉じられたネットワークではあるが、情報が可視化され、体感的な動きによって検索を行う。
情報の上を歩き、掘り出し、飛び越え、抱え…そして情報そのものがアトラクションとしての役割を担うこともあった。
現実にはできないさまざまな体感を得ることもできる。
空を飛び、雲を越え、海底まで潜り、散歩を楽しむ。
およそ不可能なことはない。
万能にも似た感覚を、ここでは味わうことができる。
本校舎の一階と二階、階数を増設した体育館がこの空間に割り当てられた。
それぞれ梁だけ残し、壁が取り払われている。
現実的にも最大限の広さを提供するように改変されているのだった。
本校舎の三階にはフードコートがあり、小規模な流動型設備が置かれている。
大きな窓から本物の外光が差し込み、ヘッドマウントディスプレイの着用なしでも過ごせた。
現実離れした体験で少し疲れたのならば三階での休憩が勧められる。
屋上は熱帯雨林のような庭園で、極彩色の鳥や小動物がいる。
開放されているが、彼らが逃げることはない。
庭園の植物からは特殊な分泌物が放たれるように改良されている。
動物達は気化した分泌物にフェロモンのような魅力を覚え、屋上の楽園に惹きつけられているのだ。
しかしそれ以上に、じつは分泌物を摂取しなければ生きながらえることができない。
(続く)
【次の話】
第15話 https://note.com/teepei/n/n41597d2f5ab4
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