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ボウイ本読了、次読み始めた本が面白くって

実はもうとっくに読み終えてたのですが、さほど素晴らしい本ではなかったので放置していました。悪くはないですが「これは超オススメ!」な本ではないです。

著者も暗に認めていますが、ベルリン期のボウイについてはネタが出尽くして、新情報などもう出て来ないでしょう、ほとんど。そんな中でもこの本の存在意義があるとすれば、まず1つが「ドイツ人視点」ではないでしょうか。何かと神格化しがちなベルリン期について、迎え入れた側のドイツ人からすれば、ベルリンなんてそんなイイもんじゃないんだよ、退屈の連続で、鬱蒼としてて、東西分断されてて、、、を淡々と書き綴っているように思います。翻訳家の腕の問題か、原文の問題か、日本語として非常に読みにくさを感じましたが、それはボウイのわりと内面、精神世界に話が及ぶことが多く、やむを得ない部分もあったかな、と。

著者が序盤で全精力をかけて書いているのがボウイのヒトラー、ナチズム崇拝問題。ヤク中の時期でもあるので少なくとも本人も言っていたように政治的意図はないにせよ、全体主義、独裁者的なものへの憧憬があったことは否定できないでしょう。Bowie史の中で、特に日本語圏では、この問題をあまり重くとらえていないように見受けられますが、本書は「重く」受け止めている、というニュアンスが伝わってきました。いずれにしてもゲッペルスをフィーチャーした映画など作ることにならずに済んで良かったわ。

あと思い切りネタバレで恐縮ですが、音楽的な話で自分が一番「あ”ー!」と思ったのは、アルバム「”HEROES"」のレコーディングに、ミヒャエル・ローターだけでなくヤキ・リーベツァイトも参加する用意があったが、両者の間に立った人間が謎の理由で話をお釈迦にしてしまい実現しなかった、というエピソード。”HEROES"はご存じの通り、伝説的な「ロバート・フリップ、週末だけ渡独してさっと録ってさっと帰って行った」レコーディングで、かのタイトル曲が完成したわけですが、仮に、仮にギター:ミヒャエル・ローター、ドラムス:ヤキ・リーベツァイト だったら、ひょっとしてあの後世まで歌い継がれベルリンの壁崩壊にもつながった(?)タイトル曲が生まれなかった代わりに、(もちろん良い意味で)とんでもない作品が出来上がり、以降のロック史も変えたかもしれないのでは?と妄想は膨らむばかり。
ボウイ側がクラウトロック側のレコーディング参加を蹴った理由としては、憶測の域を出ないが、前作「ロウ」がその実験性ゆえに思うほど売れなかったことから次作への警戒感が最高潮に達しており、「また変なのを作られたらタマったもんじゃない」というRCAレコードの意図が働いた説。実際「ロウ」のマスターテープを聴いたRCA幹部は顔を真っ青にして「これをクリスマス商戦にぶつけて皆の耳に触れさせてしまうと非難轟轟になるから、皆が気付きにくい1月にそっとリリースすっぺ」という行動を取りましたからね。Bowie作品にヤキのドラム、、、想像しただけで鳥肌立つわ。

ところで話はそれますが、個人的感触としてベルリン3部作および「イディオット」に関して、もっと当時のクラウトロックの影響が音楽面でビシビシ感じられても良さそうなのに、そうでもないな、というのがありまして。その理由を探求したいというのもベルリン期に興味を持ち続けているモチベーションの1つでもあるのですが。前述のローター&ヤキを結果的に迎え入れなかった事実も含め、ボウイは実は主要なクラウトロック”要人”とはことごとく直接会ってない、更に言うとセッションをしていない、という事実。ベルリン期はタンジェリン・ドリームのエドガー・フローゼとは友人関係で、フローゼとは会っているが、セッションはしていないはず。クラフトワークのメンバーとはツアーを一緒に回りたいとオファーした時に直接会っているかどうか、調べていませんが、こちらもセッションはしていないはずですし、クラウトロックの核に迫るならデュッセルドルフのコニー・プランクに会うだろうけどそれもしていない。後年のインタビューで「そんな時間はなかった。レコーディングで手一杯で」みたいに答えていたと思うがどうだろう。ボウイが他から「拝借」する際、必ず自分というフィルターを強めにかけて「俺流」にする傾向があり、当時のクラウトロックとの関わりについては、ディープに浸っていたブライアン・イーノというフィルターも通すことでオリジナルから距離感を保てたのかなとも思います。

ということで、トビアス・ルター(著) 沼崎敦子(翻訳)『ヒーローズ──ベルリン時代のデヴィッド・ボウイ』は星2つ(★★☆☆☆)です。マニア向けだけど、マニアには目新しい情報が少なく消化不良かも。

それより、この本を新品で購入するちょっと前に古本(アマゾンのマーケットプレイス)で購入した1987年・音楽の友社刊行・ジェリー・ホプキンス著『デヴィッド・ボウイー』がたまらなく面白い!その理由は読了してからまた。まだマーケットプレイスで買えるので気になるかたはお早目にどうぞ。

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