【TOY2020出演者紹介】WYW
緊急事態宣言真っ最中だった2020年6月、WYW(わいう)というユニットの楽曲「Do Something」が配信リリースされた。
WYWはマル(BIDA/土佐丸高校吹奏楽部)、Kiyoshi Hazemoto(sigh society/PC-8)という90年代から活躍する40代アーティスト2人が2020年に結成したユニットで、そこにミムラス内藤彰子がコーラスとシンセで参加した楽曲が「Do Something」である。
♪きっと二人はもうおしまいだ
♪そんなのわかってる
♪飲みかけの冷めきった珈琲を
♪ぼんやり眺めてる
世の中のあらゆるエンターテインメントが「不要不急」とみなされ、ライブハウスもクラブもバーもすべてがクローズしていたあの時期。いままで楽しくやってきた関係に、否応なしに変化の時期がきたを示唆する歌詞だ。
♪Do Something Do Something
♪Do Something Do Something
繰り返される「♪Do Something」は、なけなしの気力を振り絞って立ち上がろうとする決意のようにも感じられる。
♪言葉にならないこの想い
♪うたたかの恋も遥か彼方
ミムラスの透き通ったボーカルにマルのコーラスが重なる。Kiyoshi Hazemotoのプログラミングによるヘビーなリズムが、失われてしまったダンスフロアの記憶を呼び起こす。恋愛をメタファーとしながら、2020年6月という気持ちのやり場のない季節を歌った切なくもポップな名曲だ。写真家・中山桜(a.k.a.ららら/市民プールガールズ)によるジャケット写真も、この曲の心象風景とハマっていて美しい。
WYWとしてリリースされている楽曲はこの1曲だけなのだが、今年出た楽曲の中でも強烈にグッときた曲だったので「ぜひライブを見たい」とお願いしてライブが実現した。
じつはこの三者の組み合わせは、マルがHONDALADYで活動していた頃から伏線が張られている。
まず2014年リリースのHONDALADYのアルバム「LOOPER LOOPER」に収録された「愚仮面」という隠れた楽曲にミムラスがコーラスとして参加している。高円寺HIGHで行なわれたリリースライブでも共演を果たし、その模様は同年リリースされたLIVE DVD「POWER STATION」にも収録されている。ミムラスのシンセとコーラスが前面に出たライブアレンジはエモ素晴らしいので、ぜひ手元にDVDがある方はぜひ見ていただきたい。
この「愚仮面」が起点となり、2018年のマンスリーライブ「月刊HONDALADY」で発売されていたCD「月刊HONDALADY8月号」にはKiyoshi Hazemotoによる「愚仮面(Sigh Society Remix)」が収録される。原曲のサビとメロディを活かした4つ打ちアシッドテクノポップとして洗練されたリミックスに仕上がっていて、ここにWYWの源流を見ることができる。
また「月刊HONDALADY7月号」にはミムラスによるHONDALADY「俺なんて」のカバーが収録されていて、これも本当に素晴らしい。ピアノ弾き語りアレンジで優しく語りかけるように歌うミムラスの声が胸を締め付ける。HONDALADYの楽曲(とくにマルの詞)とミムラスのボーカル&鍵盤という組み合わせは、楽曲の持つ切なさが強調されるマジカルなエフェクトがかかっていて、いつも感情を揺さぶられてしまう。
WYW「Do Something」のリリース後にソロプロジェクト・BIDAで新たなスタートを切ったマルのヘアメイクを担当したのもミムラスだし、HONDALADYのマンスリーイベントでケータリング「ミムラス食堂」なんてのもあった。マルと絡んだ時に発揮されるミムラスの幅広い才能が、今回はどんなかたちで発揮されるのか? じつはミムラス内藤彰子がこんな“予告”をしている。
「この日のWYWステージ照明、レイアウトはミムラスが手掛けます。カバー曲を交え、アットホームな”リビング”からライブをお送りします。お楽しみに!」
ニューノーマルとかwithコロナとかいろいろあるけど、きっとこの3人ならライブハウスやクラブで楽しんでいた音楽を“リビング”に届けてくれるはず。
♪さあ、行こう魂のふるさとへ(HONDALADY「愚仮面」より)
(坂井ノブ)
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