スマホ以来の変化? ウィズコロナ時代に「くる」ビジネスと事業アングルの修正
著者略歴:宮地俊充 Serial Entrepreneur / Best Teacher(Education, Online English school)→Teen Spirit(Entertainment, Music)→Boot home(Fitness, New Normal) 起業・経営の実践はBoot homeで、理論の発表と社会貢献はStartPassで行っています
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前回に引き続き、今回もコロナによる影響に真正面から向き合っていきます。
もちろん自分は感染症の専門家ではないので確かなことは言えませんが、コロナ感染防止のための対策が1年半〜2年続くと仮定した場合、コロナによりダメージを受けているビジネスはその影響が続きますし、追い風のビジネスもそれは特需ではなく新時代の継続的なトレンドとなりえるでしょう。
ざっくり対面・接触・集合型のビジネスは厳しく、在宅・オンライン上での経済活動が主流となるとした場合、ユーザーの行動的・心情的変容が起こることでどんなビジネスが「くる」か業界別に予想してみました。
その逆では衰退する業種・ビジネスもあると思うのですが、経営者がそれを言っていても仕方ないので、「くる」ビジネスに焦点を当てることで、そちらの方にいかにアングルを変えていくかという学びがあるような書き方をしました。
自分がやりたい/やっている業界以外の事例も、発想次第では生かせるかもしれないので、もしよろしければ全文読んでみてください。
広告/メディア:消費の落ち込みと共に広告費は削減されるが、ユーザー課金型メディアは強い
インターネットビジネスと言えば、まずは広告/メディアでしょう。基本ユーザーは家にいて、PC・スマホ・テレビをみる時間が長くなりますので、メディアで表示されるコンテンツを視聴するユーザー数や、そのエンゲージメントは高くなるでしょう。
ただ、ユーザーの消費は落ち込み、個人法人問わず必要最低限のもののみを買う心理になる可能性が高いです。その場合、必需品以外は広告を打っても売れにくくなるため、全体として広告費は削減されます。
よって、広告収入メインのメディアは衰退し、ユーザー課金収入メインのメディアが盛り上がるのは目に見えています。これまでユーザー課金に力を入れてきた日経電子版、NewsPicks、noteなどがさらに伸びるでしょう。
コンテンツ/エンタメ:いよいよネット芸能の天下がくるか
まずミュージシャンの場合、音源(CD)での収入が激減していたので、ライブ・グッズに収益源を移行させていましたが、会場にお客さんを入れてライブをするのが難しくなってしまいました。
よって、ストリーミング・YouTube・ライブ配信・オンラインサロン・クラウドファンディングなどが普通に利用され、これまであった「曲作ってライブやる以外のことはダサい」という雰囲気は完全になくなると思います。
髭ダンやKing Gnu、米津玄師のようにSNSやYouTubeを利用して、ファンとの間合いを上手く作れるミュージシャンが人気が出てくるでしょう。どメジャーシーンでなくても、Muevoでもオンラインサロンが爆伸びしているとのこと。
次にタレント・芸人ですが、広告/メディアでも同じ話でしたが、テレビ等に出演して広告収入をギャラという形で受け取っていたタレントよりも、オンラインサロンやYouTubeなどでダイレクト課金できていたタレントの方が活躍することになるでしょう。
また、ユーザーと直接繋がれるネット芸能に活動の場を移すと「認知度」のあるタレントだったのか「人気」のあるタレントだったのかが鮮明に分かれてしまいます。広く知られていることと、強く好かれていることは別だからです。
テーマパークやカラオケ、バーなどの箱物施設は運営自体が厳しくなると思います。家で遊べるエンタメが主流となりますので、私の投資先で恐縮ですがバーチャルカラオケルームのトピアは今後も伸びが期待できます。
小売/物流:EC化比率がさらに高まるが、配達員の確保が困難
小売は店舗に人が集まれない以上、EC化比率がこれまでにないスピードで高まるでしょう。
一方、物流は配達員不足にこれまで以上に悩まされることになり、ドローンやシェアリングエコノミー、ギグワーカーの活用がすすみます。
さらに、受け渡しですが、配達員から手渡しで受け取る(逆に顧客に手渡しで渡す)のが心理的に負担になる可能性が高いです。OKIPPAなどはさらに普及するのではないでしょうか。
アパレル:高級ブランドは受難?お家服がニーズあり
アパレルですが、ファッションは人に見せるためのものと考えると、そうそう服に消費が向かうとは思えません。特に高級ブランドについては、見栄を張る機会がないため、消費が沈むでしょう。
また、ビデオ通話でのリモートワークがメインとなるため、上のスウェット服だけ売れているような現象も起きているとのこと。
飲食:ネットスーパー、通販・フードデリバリーが大流行、中食時代へ
飲食は身近に感じやすい業界だと思います。三密に当たらなくても、なんとなく外食すること自体が気が進まないようなユーザー心理が出来上がりつつあります。
スーパーに行きたくてもたくさん人が集まるのも避けたいので、ネットスーパーでの注文は現時点でも争奪戦のようになっています。オイシックスも新規会員は現在受け付けていません。
保存できるという意味で冷凍食品はリーズナブルですが、noshはヘルシー・糖質制限というコンセプトがあり、かつめちゃくちゃ美味しいので、一ファンとして絶対にくると思っています。
uber eatsや出前館などのフードデリバリーについては、小売と同じく配達員の確保が難しくなるくらい一般化すると思います。
配送網を整えたり外注するのが難しい場合は、お客さんにお店にきてもらってのテイクアウトになりますが、そもそもStay at homeが前提になった場合、なかなか厳しいものがある気がします。
金融:政府の経済支援はありつつも、その前に即金が得られるサービスの需要高
個人法人ともに政府による経済支援はありますが、それをもらえるまでの間の資金繰りをどうするか、というのが喫緊の課題です。体力がある企業であれば、これまでため込んだ利益剰余金で売上が落ちても持ち堪えることができると思いますが、そうでない場合エクイティでの調達・デッドでの調達にまずは動く必要があります。
スタートアップ界隈であれば、エクイティでは各VCがコロナ対策の支援プログラムを積極的に出されています。
デッドであれば、こちらの融資プログラムをご覧ください。
金融というものはどこまでいってもCash is Kingですので、こうなる前に現金を多く保有していた会社が有利にビジネスを進めらるのは否めません。平常時であれば資金需要が生じ得ない優良企業への金融サービスの提供が可能になるためです。
また、新株発行・借入以外の資金繰り改善方法としては、ファクタリングもより使われるようになるものと思われます。OLTAなどでしょうか。
交通(モビリティ):移動の必然性が問われるため厳しい
自動車やバイク、自転車、航空機など交通業界からはこれがきている、という明るい話題は見つけられませんでした。。
基本Stay at Homeで、不特定多数の人と閉鎖された空間にいたくない、という心理は今後も変わらないかもしれないので、ていうかそんなに出歩かなくていいじゃんとなってしまうと思います。
あえていうとすると、もう「交通」ではないかもですが、一人で人がいないところを散歩するブームはくるかも、と思っています。が、DQウォークもイベントは中止していますね。。
自動車・製造業:グローバルサプライチェーンの分断により大打撃
モノづくり系については、工場が中国にあったりするので、グローバルサプライチェーンの分断への対応に数年とられることになりそう。いくら国内回帰と言っても、すぐに対応できるものではない。
旅行・宿泊:国境閉鎖と消費者心理により冬の時代
今年は本来はオリンピックもあり、インバウンド全盛の予定でしたが、こうなってしまうと旅行系・宿泊系はかなり厳しくなってしまいました。ホテルに関しては、軽症者の宿泊施設として利用目的を転換することで需要が生まれつつはあります。
医療(ヘルスケア):責任問題はあってもオンライン診療・遠隔医療しか考えられない
さて、最も重要視されている医療です。病床数、医者数、看護師数が限りがある以上、病状に応じてグラデーションをつけて診察・治療を行うのは当然であり、体調が悪い方が全員病院に駆けつけて、対面診療するような対応は実務上難しいでしょう。
以前から必要性が謳われていましたが、メドレーやリンクウェル 、メドピアなどが取り組んできた医療のDX(オンラインヘルスケアサポート)が一気に浸透すると思われます。
また、製薬業界であれば、MRが病院訪問できなくなっていますので、ますますエムスリーのMR君への移行が加速するでしょう。
フィットネス/メンタルケア:自宅でできる運動、瞑想などのオンラインスクールが全盛に
自分もジムに長年通っているのですが、さすがに今の状況では休会せざるを得なくなってしまいました。。
筋トレくらいだったら、わざわざジムに行かなくても自宅で無料でできる、というのはあるのかもしれないですが、人間というものは怠け者なので、ジムに行かないと強度の高い運動をできない、というのが実情だったと思います。
ただ、ジムはクラスターが生じやすい場所とされていますし、緊急事態宣言が出た後も営業できる施設はなかなかいないかもしれません。
よって、自宅でもインストラクターや仲間とつながっているようなUXを与えられるオンラインスクールが全盛になると思います。オンラインヨガのソエルや、海外でありますがPelotonなどがあります。
美容:人目を気にしなくてよくなると思いきや、マスクのうちに整形したい需要あり
美容です。基本外に出ない、かつビデオ通話でもそんなに画質がよくないので顔がはっきり映されないとなると、美容を頑張るモチベーションは沸かないのかな、と思いきや、マスクで顔を隠しやすい状況ということもあって、プチ整形の需要が伸びているらしいです。。
トリビューの日記件数も心なしか増えているような、、
教育:10年越しで遂にメインストリームに躍り出たEdTech。ただ、自走できない学習者へのケアは必要
教育は事業でやっていたこともあり、熱く語ってしまいそうです。これまでの対面・集合型の教育に、オンライン・個別型の教育をエンベットすることで、家庭の収入格差に関わらない教育機会を与えたり、学習効率を上げたいと思う一心で、Edtechの仲間と共に様々な学習サービスを世の中に提供してきたつもりです。
ただ、僕らが思うよりも広がらなかったのは、対面・集合型じゃないとあまり強制力が働かないので思ったより利用頻度が低かったのと、言葉は悪いですが結局やる奴はどんな環境であってもやるので、セルフマネージメントができて自走できる学習者であれば、オンライン学習サービスも上手く取り入れてますます伸びていく、という結果になっていました。
つまり、格安で良質なサービスをオンラインで提供することで、格差を埋めたかったのですが、その当初の理想と裏腹に思ったより格差が埋まらなかったというのが動かし難い現実でした。
とはいえ、今は強制的にオンライン教育しかありませんので、期せずしてEdtechに再び注目が集まりつつあります。義務教育系サービスであれば、スタディサプリが激伸びしていると聞いております。
ただ、人間というものはそんなに強い生き物ではないので、オンラインだとあまり頭に入ってこずに、強制力もあまりないから構ってもらえている感がなく、ドロップアウトしていく学生が多くなるのが社会問題になるのでは、と危惧しています。
ですので、自走できるほど強くない学習者に対するケアも別に同時に行わないと、オンライン学級崩壊が起こるのではと思っています。
職場:リモートワークがメインになるが、家で仕事できない派でだらだらしてしまう問題をどうするか
学校に続き、職場です。特にIT業界では、リモートワーク(テレワーク)を取り入れつつも、高度な判断や心理的な結びつきはなかなか難しいので、オフィス環境に立地・内装も含め投資してきましたが、それが逆流しそうな勢いです。
賃料相場も渋谷を筆頭にこの10年で考えられないくらい上昇してきましたが、リモートワークの良さを経営者が実感しつつある以上、従業員全員をオフィスに入れるという発想ではなく最小限だけスペースを借りておき、あとはリモート勤務とするのが新しいトレンドとなりそうです。
リモートワークに必須のコミュニケーションツールZoom、Slack、Chatworkはますますインフラ化しそうですし、訪問営業もベルフェイスに置き換えられるかもしれません。
ただ、最初は新鮮で在宅勤務もありだな、と思っていた従業員も、仕事を家に持ち込みたくないという方は一定数いますし、やろうと思えばエンドレスで仕事がしやすくなりますので、仕事とプライベートを明確に切り分けたい方にはなかなか辛い時代がくるかもしれません。
また、うまいこと人間関係を回すことで価値を出していた中間管理職の方も、リモートワークでは成果が目に見える形で見えやすくなりがちなので、シビアな評価をなされるようになる可能性もあります。
学校と同じく、自走できないビジネスパーソンには冷たい社会になりそうな気がするので、そのケアが必要でしょう。
コンサル:コストカット系・M&A系コンサルは不景気に強い
最後になりました。コンサル業界ですが、リセッション時には当然コストカット要請がありますので、戦略コンサル系も含めコストカット系のサービスに注力するでしょう。
また、M&Aや事業承継、事業再生も起こりやすくなりますので、仲介業者は大賑わいだと思います。「金融」のところでも書きましたが、キャッシュを持っている企業がどうしても強くなります。M&A系のサービスへの新規参入も多くなりそうです。
まとめ:DXを加速するチャンスと捉えるか、不景気に飲み込まれ沈んでいくか
様々な業界について見てきました。書かれていることは普通にみんなが言っていることかもしれません。ただ、こうして業界を横断して見てみると、一つのことに気付きます。
それは、IT業界・スタートアップ業界がこれまでも実現したいと取り組んできたDX化が強制的に起こっている、ということです。
緊急事態宣言を出して外出者が減り、感染者数の伸びを抑えられたとしても、経済活動をオフラインで再開したらまた感染者数が伸びる、といういたちごっこになる可能性もあります。よって、今回のコロナの影響は一過性のものではなく、スマホ以来の新しいトレンド、と捉えてビジネスを組み立てた方が良さそうです。