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「わかりやすさのその先で」| Passions Worth Spreading vol.8

以下の文章ではありがちな形式に沿った、極めてありがちな内容が展開されています。そのありがちさとどのように向き合い、どのように生かしていくことができるか、一緒に考えてくださる方がいらっしゃれば是非続きをお読みください。

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はじめまして。TEDxUTokyo実行委員会 2023 副代表の後藤大毅(ごとうだいき)です。

TEDxUTokyoとは、カンファレンスイベントTEDの「Ideas Worth Spreading - 広めるべき価値のあるアイデア -」という理念に共感し、TEDからライセンスを受けて、東京大学を中心に開催されているイベントを通じたコミュニティです。

TEDxUTokyoについて詳しく知りたい、という方は、ぜひ前代表の熱い想いが書かれたnote(https://note.com/tedxutokyo/n/n5dbb04cd5f36)や、2022年6月12日に安田講堂で開かれた、TEDxUTokyo 2022 “Patchwork”の振り返りnote(https://note.com/tedxutokyo/n/nda2fe98175c7)をご覧ください。

TEDxUTokyo 2022 “Patchwork”の様子

https://tedxutokyo.com/2022/patchwork/

さて、TEDxUTokyo実行委員会は5年ぶりの復活から2年目を迎えました。ここでは、新体制となったTEDxUTokyoについて、そしてそれにまつわる私の想いを綴っていきます。


TEDトークと、世界の複雑さと

皆さんTEDトークはご存じでしょうか。

インパクトを与えるアイデア。短く、明快で、それでいて感動的なスピーチ。赤と黒の光で彩られたステージ。少しでもTEDトークをご存じの方がいれば、頭にはこういったイメージが浮かぶかと思います。

TEDトークの素晴らしさは、アイデアさえあれば誰にでも発言権が与えられる点にあります。それは学者でも、起業家でも、アーティストでも、学生でも、今これを読むあなたでも、、。どんなに小さなアイデアでも、アイデアであれば、そこは全てに開かれています。

敢えて分析するならば、わかりやすさと単純さが複雑な世界と手を取り合った先にTEDトークが成立すると言えるでしょう。10分という短い時間の中でアイデアを伝えるためには、観衆に影響を与えるためには、ある程度のわかりやすさとある程度の単純さがなければ、スピーチに引き込むことも内容を理解してもらうことも叶いません。それが冒頭のイメージとして結実するのです。

わかりやすさと単純さのフォーマットであらゆる世界を包みこむ、この姿こそがTEDトークの持つ輝きの正体です。

わかりやすく、単純であるということ

ちょっと捻くれて考えてみます。

つまり、わかりやすさと単純さはいつも正義だということです。煌めく照明、立派な肩書、分かりやすい文章、いつでも人の目を一番に引き付けるものはわかりやすさと単純さであり、それ以外の何かではありません。多くの人に何かを伝えるためにはわかりやすさと単純さが最低条件です。

わかりやすさと単純さの中で上位を目指すことこそが何かを伝えることへの最短経路であり、プレミア付きのチケットです。評価されるのは常にシンプルで爆発的な刺激で、零れ落ちる複雑さなどあってないようなものです。

このnoteもまた然りです。読み手を惹きつける尖った書き出しから、ありがちな経験を挟んで共感を呼びつつ、まとまったフレーズと短いパラグラフで一筋の明確なストーリーを作り上げること。これこそが、限られた時間の中で自分の想いを届けるための最良の手段であり、筆者たる私に課されたミッションになります。

読者の皆さんに私はどのように映っているでしょうか。斜に構えた世間知らずの学生でしょうか。確かなことは、そのイメージは更新され得るものであるということ、私とあなたとの関係は今まさに始まったところであるということ、そして恐らくほとんどの方とはこれが最後の接点だろうということです。

あなたの中でこのnoteの筆者は一生「斜に構えた世間知らずの学生」のままでしょう。私たちの間には、現われる可能性があったにも関わらず現れなかった、私についてのイメージが無数に存在しています。

TEDトークは何を捨てているか?

昨年度、TEDxUTokyoは5年ぶりに復活を果たしました。そこで活動する中、私が直面したのは、TEDトークとスピーカーの境界にある矛盾でした。

TEDxUTokyoでは、イベントを運営する大学生がスピーカーと話しながら段階的にスピーチを作り上げる形式を取っています。TEDトークである以上、スピーチとして短い時間の中で話す以上、わかりやすく、単純な内容がスピーカーには要求され、それを担保する役割として大学生は存在しまます。

こう書くと簡単そうに聞こえますが、実際は苦悩の連続でした。

専門的な内容を大量に盛り込んだために難易度が上がりすぎてしまい、大幅な内容の修正をお願いしたスピーカーがいました(その方は登壇すると決まった時からその話をするつもりだったはずです。内容を修正せずに対応する方法はなかったでしょうか。)。

使う用語が抽象的すぎるためにカットと具体化をお願いしたスピーカーがいました(その言葉はスピーカーにとって内容に絶対盛り込みたい大切な言葉だったかもしれません。具体的にすれば良いというものではないはずです。)。

短く、明快で、伝わりやすいアイデアの形にするために、活動の一部を意図的にスピーチから削っていただいたスピーカーがいました(その方にとっては他の活動も等しく重要であるはずなのに。)。

TEDトークの背後には、現われる可能性があったにも関わらず現われなかった、スピーカーについてのイメージが無数に潜んでいます。わかりやすさと単純さでは評価されなかったが、別の軸から見れば十分評価されるに値する何かが。

スピーカーたちはそれぞれの世界で活動し、評価される人々のはずです。スピーカーに自由に話してもらえばそれで済む話なのではないでしょうか。スピーカーの伝えたいことをただの大学生が制限した先に、わかりやすさと単純さの評価軸に彼らを載せた先に何があるのでしょうか。


わかりやすさ再び、その先にあるものは

残された道は、わかりやすさと単純さを逆用する方向性です。

全てをわかりやすさと単純さに塗りつぶすTEDトークは、逆に言えばあらゆる評価軸を壇上に引き摺りだします。学者と起業家とアーティストと学生が「等しくアイデアを持った人」として登壇するイベントがどこにあるでしょうか。彼らは全く別の世界で生きる人々です。

なぜその活動を行っているのか。その活動は何の役に立つものなのか。その活動は他の活動とはどのように違うのか。その活動を通して将来的に何を構想しているのか。

彼らが普段活動する世界の言葉でそれを説明しても、たぶん私たちには伝わらないでしょう。例えば、ある学者の研究はなぜ評価されたのか、ある起業家のサービスは他となぜ広まったのか、あるアーティストは何を考えて作品を作ったのか。その学生のアイデアは何に、どのように貢献するのか、、などなど。

でも、TEDトークなら、わかりやすさと単純さで全てを塗りつぶすTEDトークなら、それが可能になります。均一のわかりやすさを用いて複数の世界との接点を探し、本来なら1つの場所に立つはずのなかったスピーカーの活動を伝える方途を探します。その結晶がアイデアです。

そこには二つの効果があるでしょう。まずは彼らの活動そのものを知ること、そして、彼らが生きる世界そのもの、彼らを評価する評価軸の一端を知ることです。こう捉えるとき、未熟な大学生が介在する意味が生まれます。

Add Ideas, Rearrange the Reality
Ideas as Tickets for all

アイデアによって現実を組み替える。チケットとしてのアイデアを全てに。TEDxUTokyoが掲げる、団体としてのMissionとVisionです。

アイデアを通して今ある現実を組み替えるための手段を知ること。今、自分と世界を評価するために用いている評価軸とは別の評価軸の存在を知ること。それらは全てに対して等しく開かれていること。

つまり、単純さを介して世界の複雑さを知ること。

これこそが、私たちが、TEDxUTokyoがあなたに届けたいものです。

世界の複雑さを知り、それでも立ち向かおうとするあなたに。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。TEDxUTokyo実行委員会は、2022年12月11日にTEDxUTokyo 2022 Salon "ゆらぐ” を、2023年4月末(予定)にメインイベントを開催致します。是非お誘いあわせの上、ご参加ください。会場にて皆様にお会いできますことを心より楽しみにしております。

1つ1つの現実に、小さなアイデアと無限の世界への入り口を。

2022年 11月7日 後藤大毅
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