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msy03
記憶に残る小説のヒット作は書き出しの一文から輝いています
これは主に小説で言えることですが、書き出しの一文がとにかく大切です。この一文で惹きつけておかないと、読者の気持ちの高揚を掴むことができません。
「いや、その先の中身を読んでくれれば小説の良さがわかってくれる」という人はまず成功しません。多くのプロの著者は書き出しの重要性を理解しているのです。
これは実用書も同じで、特に前書きの一文でインパクトのあるメッセージを盛り込むべきです。例えば「この方法で○○してくれたら、あなたは必ず□□になれる」くらいの強烈な書き出しが欲しいところです。
さて、世間ではどんな書き出しがあるのか、著名な小説をチェックしてみましょう。
【君の膵臓を食べたい 住野よる著】
クラスメイトであった山内桜良の葬儀は、生前の彼女にまるで似つかわしくない曇天の日にとり行われた。
【晩年 太宰治著】
死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。
【蹴りたい背中 綿矢りさ著】
さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締め付けるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。
【我が輩は猫である 夏目漱石著】
我が輩は猫である。名前は未だ無い。
【コンビニ人間 村田沙耶香著】
コンビニエンスストアは、音で満ちている。全てが混ざり合い、「コンビニの音」になって、私の鼓膜にずっと触れている。
【コインロッカーベイビーズ 村上龍著】
女は赤ん坊の腹を押しそのすぐ下の性器を口に含んだ。
どうでしょう? 「この先、どんな展開になるのか読んでみたい」という気にさせられる書き出しばかりだと思います。プロの作家はこの部分に神経を集中させています。冒頭こそ、著者にとっては読者を取り込む大切な糸口なのです。