心の臓に 痛み響く


心が裂けた切り傷に、海の塩水はひどく浸みる。

「痛みなら忘れてしまえよ」
そんな声を目にして喉に火が込み上げる

流れるものに流される。
”独立”として孤立を正当化する

愛の乾きに自ずから向かう。
そうして炊き出しがまわってくるのを待っている。

愚かだ。そんな言葉がお似合いだろう。
静かだ。風が吹くだけで凪の輪郭が立つ。

騒いで、飲んで、吐いて、寝て、
夜中に醒めた目はほんとはちっとも覚めてない。

体の熱は膨らむばかりで、また塩水がほしくなる。
自分を痛めつける、あの味が。

すでに頭は半分あの世にいる。
腕をさするといつの間のすり傷を痛覚が指し示す。

「傷めるために、欲しがるのか?」
馬鹿にしか思えなかった。だって真っ先に死ななければそうだろう。

生の苦しみを声高に主張するアンチナタリズムが浮かんだ。
違うんだ、そうじゃない。俺はアイツらとは違う。そうだ。

だけど論理は覆らない。判定は明らかに負の電極に寄っている。
酔っている。俺はただ鬱という酒に酔っているのだ、と。
日光浴でその切り傷も治るのだと、科学は悠々と胸を張る。

そんなわけがない。キズぐすりは”ここ”までは届かない。
愚かなまでにせっせとオーガニックな薬剤を摂取する。

いっそ帝王切開で切り開こうか、
…いいや、やっぱりやめだ。

亡くなったものたちの痛みにひとつずつ名を付ける
笑っても泣いても瘡蓋(かさぶた)は一向に消えない

そうやって切り傷を増やした。
思い出すと塩水が生まれた。

浸みた。
そうか、こうやって生きてるんだなぁ。

痛覚の無限サイクルはぐるぐると、
そしてジンジンと今も唸っている。

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でぐちりくや
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