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浦島太郎の世界から戻って考えた地域経済圏について
あれは夢か幻か……。
香川県三豊市を初めて訪れ、そこはまるで竜宮城のような、濃密で楽しい2日間だった。ただし、乙姫様はいません。まちづくり、ローカルファイナンス、農業ビジネス、クラフトビール、ローカルモビリティ、自然エネルギー等の分野で起業した人たちと、まちを歩き、食べ、飲み、語らい、プレゼン合戦をして、サウナに入って、浦島太郎の島に渡って、わがまちに帰ってきた。
プロジェクト・デザイナーの古田秘馬さんのことは、雑誌『ソコトコ』の農業特集の表紙で初めて知り、丸の内朝大学や六本木農園などのプロジェクトの仕掛け人として名高い方だという認識だった。さがみこファームの山川さんがコロナ禍で行った「エンパワーLIVE寺子屋」で初めてプレゼンを聞いて、度肝を抜かれた。zoomの背景が宇宙で全面お髭というインパクト大な風貌で、彼が香川県で手がけるプロジェクトを機関銃のように浴びた。話を聞いてすぐに、「讃岐うどん英才教育キット」を購入した。いつか「UDON HOUSE」に泊まろうと思った。
http://udoncompany.com/udonkit/
その年の秋に「エンパワーLIVE寺子屋」の同窓会で、世界各地のエコツーリズム開発を手がける新谷雅徳さんの「Mt.Fuji Satoyama Vacation」での合宿に参加。生・秘馬さんに初めて会い、いつか三豊に行こう!の思いはますます強くなる。2020年10月のこと。
そしてついに、有言実行。山川さんに誘われて、さがみこファームの小出さんと私、三人珍道中で、三豊を訪れたのだ。
秘馬さんは2021年1月、香川県三豊市・荘内半島にURASHIMA VILLAGEをオープンする。地元企業の社長さんたちが出資して、運営会社「瀬戸内ビレッジ」を設立。ホテルの設計・施工から、運営時の食材提供、交通に至るまで、出資企業を中心とした地元でほぼ全てをまかなうスタイルで、客をホテルの中に閉じ込めない、地域とつなぐプログラムも充実している。
彼はUDON HOUSEの成功からくる信頼を元手に、「日本のウユニ塩湖」と呼ばれる景勝地・父母ヶ浜を中心としたさまざまなローカルプロジェクトを手がける。その数100を超えるという。かつての来訪者は年間5000人だったという仁尾町は、今や年間50万人を呼び、古民家をリノベーションした宿泊施設の数も急増。三豊に来訪して気に入った人が、そこで職を見つける/つくるまで長期滞在できる空間もある。その一つ「瀬戸内ワークレジデンスGATE」は、長期滞在しながら地域を学び、地域とつながり、小さく働きながら、このまちで自分軸で起業していく人を輩出している。
香川県は地震や台風の被害が少ないため、昔ながらの瓦屋根の古民家が連なるまちが多い。仁尾町もその一つで、車1台がやっと通れるような小さな集落にこの数年で、個性豊かな飲食店がぐっと増えた。スナックにはじまり、ブルワリーや寿司店、ゲストハウスに、近々小料理屋もできるという。一軒家を買い取ってフルリノベして貸し出し、その家賃が月間数千円〜高くても3、4万円。古い建物に新たな価値が付加されることで、新たなビジネスと共にまちで経済が回っていく。
商売をやりたい人だけじゃない、地域課題解決に真正面から向き合い起業した若者がいる。耕作放棄地を再生して農業をスケールさせる瀬戸内ReFarming株式会社では、農業に関心のある人に生活拠点を提供しつつ研修生として受け入れ、耕作放棄地を圃場に再生。同時に農業だけでない地域での暮らしや新たな職の可能性も紹介していく。
まちの人と人をつなぐ移動のインフラも整いつつある。20代の若手社長が、移動の充実からくる人生の充実をサポートする事業をおこし、それが介護予防・フレイル予防事業として発展しつつある。
移住も二拠点生活も、始めることにはゼロサムではなく、さまざまな迷いと間(あわい)でグラデーションがあるのが現実だろう。そんなふうに、職とコミュニティを両方得られるまでの間の、拠点と関わりしろがあることが、移住を後押ししている。昨年1年間で300人が移住したという実績は、強い。
そして、自分が何かを本当に起こそうと思った時に、ビジネスも生活も、理論と実践を学べる場が、ここにはある。探究学習を「瀬戸内暮らしの大学」だ。
学ぶ内容も幅広く、ローカルチャレンジ、ビジネスの基礎、財務やファイナンスまで、本気のビジネス実践編はもちろん、趣味やカルチャーも充実。私もさっそく入学を決意した次第だ。
さらには医療インフラの整備とフレイル予防、モビリティ事業も始まり、三豊市、もっと集約すれば仁尾町というローカル経済圏でのベーシックなインフラが全て整うレベルまできている。まちづくりをしている人たちは「三豊を目指せ」になるわ、そりゃ。
これらの全てに関わっている秘馬さんは、経営・ファイナンスに強い。URASHIMA VILLAGEの建物を売却し、広く株主を募るファンドがスタート。10年の短利運用で、利回りは2%。ただし、そこにURASHIMA VILLAGEの宿泊権がつく。株主としてURASHIMA VILLAGEのオーナーになることができ、浦島太郎伝説を眼下に眺める絶景に癒され、三豊を味わい尽くし、かつ資産もしっかり運用。運営会社はその資金を元手に、三豊で新たなビジネスを動かしていく。
秘馬さんはそれを「関係人口から株主人口へ」という。旅で訪れそこでモノ消費コト消費をしていくことから、そのまちにオーナーシップをもち次の業を創出することを応援し、かつ旅も楽しめる。増やした資産で再び、まちに投資ができる。次は、地域医療だ。
これまでの私の脳みその範囲では、地域での経済圏理解は、せいぜい「地産地消」という、地域のヒトが生み出したモノに関わり、それを購入して経済回していったり、地域NPOに寄付して活動を応援していくレベルに止まっていたが、「投資」の概念が降ってきた途端、10年先に生み出されて回っていくことのイメージが鮮明になり、急速に経済循環のスパイラルが右肩上がりにカーブを切ったのだった。
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私はNPOを始めて12年目。なんとかP/L(損益計算書)は読めるようになってきたが、B/S(貸借対照表)はチンプンカンプン。NPO自体資産を持たずに活動に還元するからあまり考えてきていなかったのだけど、現金出納以外の資産を形成してそれを運用していくという観点で考えれば、10年先を見据えた新たな経済づくりによりコミットできるはず。
社会的インパクト云々とよく自分でもいうけれど、「株主人口」という概念に初めてふれ、それってめっちゃわかりやすいインパクトじゃないか!と目から鱗だった。
NPOという法人格の得意不得意はあるから、経済回すことを考えたら別の枠組みが必要かもしれない、と思った。今は4月から瀬戸内暮らしの大学で始まる「ゲストハウス・オーナークラス」が気になっている。
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