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母親のPFAS曝露と子どもの染色体異常:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
最近話題のPFAS問題について、個人的に興味関心があってこの研究論文を紹介します。
この研究では、母親のPFAS曝露と染色体異常との関連性が示唆されていますが、現時点で症例数が少ないこと。選択バイアス(妊娠12週以前で流産になっているようなケースが含まれていない)ことから慎重な判断が必要です。
今後、更なる調査研究が望まれます。
タイトル(英語と日本語)
Maternal Exposure to Per- and Polyfluoroalkyl Substances and Offspring Chromosomal Abnormalities: The Japan Environment and Children's Study
母体のパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質への曝露と子供の染色体異常:日本環境と子供の研究
ジャーナル名と発行年
Environmental Health Perspectives, 2024年9月
第一著者と最終著者
Kohei Hasegawa, Tetsuo Nomiyama
第一著者の所属機関
Department of Preventive Medicine and Public Health, Shinshu University School of Medicine, Matsumoto, Japan
要約
この研究は、母体がパーフルオロアルキル物質(PFAS)に曝露された場合、子供に染色体異常が発生する可能性があるかどうかを調査した。全国規模の出生コホート「日本環境と子供の研究」(JECS)のデータを使用し、母体のPFAS濃度と出生児の染色体異常の関連性をロジスティック回帰モデルで分析した。染色体異常は、人工中絶、流産、死産、生児を含む全ての出生で診断された。
背景
近年の実験研究では、PFAS曝露が染色体異常の環境リスク要因になる可能性が示唆されているが、疫学的証拠は限られている。本研究では、母体血漿中のPFAS濃度と出生児の染色体異常の関連性を調べた。
方法
全国規模のコホート研究「日本環境と子供の研究」からデータを収集。PFAS曝露の影響を調査するために、ロジスティック回帰モデルを使用して母体のPFAS濃度と出生児の染色体異常の関連性を解析した。
結果
対象となった24,724件の単胎妊娠のうち、染色体異常は44件(17.8/10,000出生)が確認された。PFNAおよびPFOS曝露は染色体異常との正の相関を示し、年齢調整後のオッズ比はそれぞれ1.81と2.08であった。PFAS混合物の全体的な濃度の増加も、染色体異常のリスクを増加させた。
議論
この結果は、PFAS曝露と染色体異常の関連性を示唆しているが、選択バイアスが結果に影響を与える可能性があるため、慎重に解釈する必要がある。
以前の研究との新規性
これまで疫学的な証拠が不足していた母体PFAS曝露と染色体異常との関連性を、日本全国規模のデータを用いて初めて明らかにした点が新しい。
限界
本研究は、早期妊娠段階での選択バイアスや、アウトカムの誤分類などが結果に影響を与える可能性がある。
応用可能性
この結果は、妊婦への環境リスク要因の管理や政策策定に活用できる可能性がある。