NFT界の最強企業Dapper Labsの正体
カナダのゲームスタジオDapper Labs(ダッパーラボ)
まさにバブルな沸騰感といえるが、実はNFTの世界には、3年も前から、この新たな資産の強みを吟味し尽くし、戦略的に手を打ってきたスタートアップが存在する。
カナダのゲームスタジオDapper Labs(ダッパーラボ)だ。
ダッパーラボは、2017年にNFTカードゲーム「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」を大ヒットさせると、2020年には、NBA選手のスーパープレーをNFT化した「NBA Top Shot」を投入し、これも爆発的にヒットしている。
猫のゲームと、NBA選手の名シーン。
一見全く脈絡のない2つのコンテンツだが、実はその裏側には、ダッパーラボが、NFTの本命とみる一つの「コンセプト」で通底している。
それが、人間の持つ「収集」という本能だ。
一般消費者がブロックチェーンの面白さを実感できるアプリケーションの構想を練り始めました。
「猫」という親しみやすいIP(Intellectual Property:知的財産)を使って、コレクターズアイテムとゲームの仕組みを応用すれば、人気が出るのではないか。この仮説を試したところ、大当たりしたのです。
「デジタル猫に2000万円」の裏側
──クリプトキティの仕組み
デジタル上の猫であるクリプトキティは、一匹一匹が唯一無二の存在として、ブロックチェーン上に記録されています。
こうした猫を取引するためのマーケットプレイスが用意されており、デジタルウォレットとイーサリアム(暗号通貨)を用意すれば好きな猫を買うことができます。
2匹の猫を「交配」して、新たな猫を作ることもできます。このようにして、クリプトキティのコレクションはどんどん拡大していきます。
親がいない「0世代」クリプトキティが15分ごとに生み出され、その売り上げは100%我々運営のものです。ユーザー間で猫を売買した場合には、我々が3.75%を手数料として差し引き、残りは売り手に渡ります。
数十万ドルといった高額取引ばかりが注目されがちですが、ほとんどのユーザーが使うのはごくわずかな金額です。彼らは猫を交換したり、交配したりといった体験を楽しんでいます。
「コレクション欲」✖️ デジタルの良さ
カードが入った袋の封を開ける(Unboxing)ときの、何が入っているか分からないワクワク感。全部集めたくなる感覚。自分のコレクションを自慢したい欲求。それを誰かと交換する楽しさ。高値で売れたときの高揚感。
こうした「何かを集める喜び」は、物理的なアイテムの場合、アイテムを実際にやりとりする小さなコミュニティ内で完結していました。
これが、クリプトキティのように「デジタル」だとどうなるか。
アイテムを交換して見せ合うコミュニティが、爆発的に広がる
デジタルならでは!!「動画」をコレクションする
アイテム自体にも、デジタルならではの工夫を施すことができます。その良い例が、2020年10月にローンチし爆発的な人気を誇っている「NBAトップショット(NBA Top Shot)」です。
これは、NBAスター選手のミラクルプレー動画をはめ込んだ3Dキューブをコレクションできるというもの。
スター選手の写真付きトレーディングカードは昔からありますが、ミラクルプレーの「動画」をコレクションするというのは、デジタルならではです。
すでに世界に数十億人規模のファンがいるNBAという強力な「ブランド」を巻き込んだというのも、成功要因のひとつだと思います。
「限定モノ」への渇望
──ここに、ブロックチェーンという技術を使うメリットは何なのでしょうか。
デジタルのアイテムに唯一無二の価値を与えて希少性を作り出すことができ、それを個人が所有できるという点です。
ブロックチェーン上に記録されていないデジタルアイテムはいくらでも複製可能ですが、例えばNBAトップショットの場合、「このアイテムは50しか鋳造(Mint)しない」と決めたらそれきりです。
「限定品」という響きには、人の心を引きつけるものがあります。
投機より、「面白さ」がカギ
──クリプトキティのどこに引かれたのですか。
私はもともと新しいテクノロジーが好きで、ブロックチェーンも試してみようと、ビットコインのトレーディングをやったりしていました。
でも正直、あまり楽しくなかった。
投機的に通貨を売買するより、かわいい猫を集めて交換し合う方が、ずっと親しみやすいんですよ。
だから、新しいテクノロジーをマスマーケットで浸透させるには、ゲームやエンタメから入るのが一番だと思っています。
ダッパーラボでは、一般の人でもブロックチェーンの面白さが実感できるようなヒットアプリケーションをこれからも生み出していきたいです。