NFTをめぐる世界の動向
2021年のテック界のキーワードの一つが、NFTだろう。
NFT(Non-fungible token)を意味するこの資産は、デジタル作品の「唯一無二性」を保証するものとして、アーティストやクリエイターから熱狂を生み、ツイッター創業者のジャック・ドーシーやイーロン・マスクを巻き込んで、ムーブメントを拡大していった。
2022年には、経済産業省がファッション分野で実証実験に乗り出すことも明らかになり、遅れていた日本でも、いよいよ政府までもが動くまでの動きになってきた。
ゲームメーカー、ファッションブランド、エンタメの参入
──スクウェア・エニックスのようなゲームメーカーから、グッチのようなファッションブランド、吉本興業のようなエンタメまで、有名企業が、比較的早く意思決定をし、参入表明したのが、意外でした。
【2021年にNFT参入を表明した企業などの例】
3月GUCCI(グッチ)、ニューヨーク・タイムズ
7月コカ・コーラ、吉本興業
11月スクウェア・エニックス、HYBE(BTSの所属会社)
12月NIKE(ナイキ)、Adidas(アディダス)、プロ野球パリーグ
一つの結論NFTは「手段」でしかない。
我々、NFTという手段からこの世界に入ったプレイヤーですが、結局NFTは「手段」でしかないという。
やっぱり、NFTは、コンテンツを多く管理している方々が最上位に来て、彼らが、ビジネスを広げていくための手段がNFTです。
全体のバリューチェーンとしては、まず最上位にIPがいて、彼らが持っているコンテンツに連動したNFTを発行するためのコンサルティング企業がある。
コンサルティング企業は、どんな価値を持ったNFT、ユーティリティを設計するかを考えるアイデアと、発行するための技術的な支援をする人。
その次に、NFTを売るマーケットプレイス(Opensea(オープンシー))がある。コンサルをしている人たちが自前のマーケットプレイスを持っている場合もあるけれど、我々のような取引所を使っている場合もあります。
そして、インフラであるチェーンを管理しているメーカーがいる。ざっくりとそんなイメージです。
[課題]複製やアニメのキャラクター
これはNFTを売るマーケットプレイス(Opensea(オープンシー))がチェックを厳重にしていく。
コンテンツによって変わるブロックチェーンの規格
技術的な課題では、どんなブロックチェーンを使っているか、あまり知られていません。
ブロックチェーンの規格はイーサリアムが主流ですが、イーサリアムのガス代が高騰したために、カナダのゲームスタジオDapper Labs(ダッパーラボ)をはじめとして、イーサリアム以外のNFTのブロックチェーンが登場しました。
2つのパブリックチェーンとプライベートチェーン
ブロックチェーンは、パブリックチェーンとプライベートチェーンという2つに分かれていて、我々コインチェックが扱っているのは、イーサリアムをベースにしたNFTだけなのですが、楽天やGMOが作った自社独自のブロックチェーンは、プライベートチェーンだったのです。
パブリックチェーンの場合、世界中でブロックチェーンの分散化が進んでるので、コインチェックが仮に倒産しても、NFTの価値が失われません。
一方でプライベートチェーンは、ポイントに近いもので、楽天のチェーンならば楽天が独自に開発したものです。楽天がもし倒産したら、楽天のNFTの実質的な価値が失われてしまいます。
ゲームのように移動が激しいものは、ガス代が高いイーサリアムは向かず、「Polygon(ポリゴン)」というイーサリアムのバイパスのような役割を果たすソリューションが使われるようになりました。
その一方で、アートのように高額で、真正性が大事なものは、信頼性の高いイーサリアムとの相性がいい。
コンテンツによって個別具体的に、最適なものが決まっていくと思います。今後は、一個のチェーンだけが残るというよりは、主要ないくつかのチェーンがつながっていく世界がくるでしょう。
IPホルダーの2つのポジション
この半年、IPホルダーとセッションしていく中で、二者に分かれました。
1. 本質的なNFTの価値を踏まえて、リッチなコンテンツを作りたい方(リッチなんだけれども、時間がかかるの)
2. とりあえず、自分たちのIPを使って、ライトな保有ができるデジタルアートを作りたい(早いけれど、価値がなくなる可能性があるもの)
NFTは簡単には売れない
ある程度わかりやすいユーティリティーを作らないとNFTを購入するメリットが見えにくい。簡単に作れるものは、有象無象が生まれていますが、有名ではない方がやったところで、売れません。
日本発の覆面ユニットAmPm(アムパム)は、未公開曲を視聴できる権利をNFT化するなど、どんな権利をNFT化するかさまざまな方法がある。
わかりやすい特典がついているものが支持されてきています。
わかりやすい特典というのは、握手券や、NFTを持っている人だけがあるコミュニティに参加できる権利(商権が所有者に移ることで、中央集権的ではない、コミュニティ主導のIPになるため、作品の価値を上げようとする所有者の能動的な行動を生み出す。)など、持っていることがステイタスになるようなものですね。
NFTの価値を生かす「コミュニティ化」が鍵
IP権利やエンタメなどの金融商品ぽくない権利や、アクションが取れるものというのがキーワードだと思っています。あとは権利が与えられたコミュニティの中身が問われるところ。
NFTを貸すビジネスや質屋みたいなサービス
コミュニティ以外に可能性を感じるビジネス
NFTの台風の目になる2企業
1. ダッパーラボ
2. ブロックチェーンゲーム企業「Animoca Brands(アニモカブランズ)」
が二大巨頭的な立ち位置。IP管理もできるし、NFTのメインインフラを勉強している会社なので強い。
ダッパーラボについては、コンサルと、マーケットプレイス、チェーン開発までと、横断的にやっていますが、将来的には全部やろうとしています。
3大勢力メタバース
1. 第一勢力が、11月にソフトバンクなどから105億円の出資を受けた、メタバースのゲームプラットフォーム「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」や、ブロックチェーンのVRプラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」。この2つはすでにメタバース上で、NFTが取り入れられています。
2. ゲーム系のメタバースですね。メタバースはメタバースでも、中央集権的に管理されているものではなくて、運営が分散化されて管理されているものであるということが前提です。
3Dの仮想空間という意味では、「Fortnite(フォートナイト)」や「Minecraft(マインクラフト)」のようなものもここに入るイメージです。今はゲーム内課金の売り上げが大きいので、参入する意味があまりないのですが、彼らは、どこかでメタバースに参入してくると思います。
3. 「Meta(メタ)」の「Horizon(ホライゾン)」のようなGAFA系のメタバース。
ゲームからメタバースへの参入は高難度
ゲームからメタバースに参入するのは、技術的に難しいのでしょうか。
一つ一つのアイテムをNFT化したり、外に出す仕組みを構築しなければならないので、簡単ではないと思います。API連携できればいいという感じではありません。おそらく、別のものをもう一個作ってユーザーに移行してもらうことになると思います。