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ガウディの柱

 8月6日、娘の大学見学に付き添った帰り道、折角なので東京国立近代美術館で開催されていた「ガウディとサグラダファミリア展」に行ってみた。ガウディが有名なのは知っていたし、サグラダファミリアの建物の形に興味もあった。しかし、100年以上も建物が建設され続けるということは一体どういうことなのかは全く理解できていなかった。

「人間は何も創造しない。ただ、発見するだけである」

 どこかで聞いたことのあるこのフレーズ、100年以上前にガウディが語った言葉だった。ガウディは設計図や様々な資料を残して自らの半生を捧げたサグラダファミリアの建設を後世に委ねた。しかし、多くの資料は戦争で失われてしまう。それにもかかわらずサグラダファミリアの建設は続いている。これは私の感覚だけれども、むしろその営みは当時以上に多くの人を巻き込み、その時代時代の最新の建築技術がつぎ込まれ建設が続けられているように思える。
 サクラダファミリアの建築に関わるだれもが、ガウディの設計の意図を必死に読み解き、自分のもてる力を全て注いで建設に取り組んだ結果、サグラダファミリアは時代時代でその設計がびっくりするほど変化している。しかしそれを誰も自分たちの創造と語ることはない。

 ガウディはサクラダファミリアという建築の思想と、一部の建物だけを残してほとんど全てを後世に託した。サクラダファミリアは後世の人々がガウディの思想を具現化した姿なのだ。生前のガウディの設計通りなのが大切なのではなくて、ガウディの思想が、今を生き建設に関わる人たち全員に宿っていることに意味がある。

#ガウディ展 で展示されていた詳細な模型

 実際、近年施工されたばかりの大聖堂の柱は、CNCで削り出されたものだという。展示をみて納得させられた。植物のようにしか見えないその柱は動画で展示されていた3D-CADの図面を見ると、ひねる方向の違うらせん構造が組み合わされて形成されていることがわかった。サグラダファミリアは過去の建築方法を踏襲しているだけの建物ではなく、その時代時代の最新の技法によって、革新的な形状が与えられていた。

 そして思い出した。確かスカイツリーは地面では三角形なのに、展望台のある当たりまでいくといつの間にか円形になっている。設計した人の頭の中にサクラダファミリアの柱があるに違いないと私には思えた。
 スカイツリーで買った「Detail of TOKYO SKYTREE」という設計図面を持っていたのを思い出し、今回の東京国立近代美術館での図録と見比べてみた。あんなに複雑に見えたスカイツリーの図面がずいぶんとチープに見えてしまう。ガウディの思想の元に設計された柱は、幾何学的に美しく、冷たい石がまるで植物のように見えてくる。

#ガウディ展 の図録 と Detail of TOKYO SKYTREE

 ガウディの思想を必死に読み解き、建築を進める人たちの建築には、何を参考にしたのか語られることのない建築にはない力強さがある。
 「人間は何も創造しない。ただ、発見するだけである」
 サクラダファミリアは、そう語るガウディとその思想を継いだ人たちにしかなし得ることのできない偉業なのだ。



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