ヘルプマーク
ワタクシは自律神経失調症の関係で普段持ち歩くカバンに【ヘルプマーク】と言うものをつけて歩いている。
イメージは表紙に用いさせて頂いた「みんなのギャラリー」からの画像を参照して欲しい。
これは外観からは判らない内部障害を保持している事を周知し、また外出時に当事者が倒れたり不便があったりした際に健常者がサポート出来るように目印とするものである。
最近、このヘルプマークについて、二点ほど暗澹たる気持ちになったので記す。
先ず、近頃このヘルプマークがオークションサイトで結構な値段で売りに出されている事。
基本的にヘルプマークは、一部の地下鉄駅や大多数の警察署で無料で入手が可能である。それが何故商品としてネット闇市の主力商品になっているのか。
ひとつは
内部障害者に【成りすます】不届き者がいる
事。
健常者が電車内で席を譲って貰う為に内部障害保持者を偽装するケースが多いらしい(最もそれが何処まで上手くいっているかには疑問が残る。本物の内部障害保持者でさえ、ヘルプマークをつけていたからとて健常者のサポートを必ずしも頂けるとは限らないからである)。
もうひとつは、一部の人間がこのアイテムを「オシャレ」だと感じ、アクセサリとしての需要が高まっている事による(そう言えばとあるアーティストがオフィシャルグッズにヘルプマークに酷似したキーホルダーをリリースしてTwitterで大炎上した…なんて話を聞いた)。ヘルプマークを子供が欲しがり、親が内部障害保持者を恫喝してヘルプマークを譲渡するよう要求した、なんて噂も聞いた。
もっと恐ろしいのは、近頃このヘルプマークをつけた人間に暴力を働くロクデナシが急増しているようなのである。
ヘルプマークをつけたカバンを所持した人間が健常者(特に年配の男性)に殴られた…なんて話はしばしば聞くし、何ならワタクシも先日未遂ではあるものの怖い(と言うか甚だ不快な)思いをした。
病院からの帰り、街の本屋に立ち寄った。買いたい本を物色していると、不意に背後に白髪頭の老人がやって来た。
老人はワタクシの傍に来るとわざと速度を落とし、ワタクシが立つ棚の近くをウロウロし、時には本を手に取り読む素振りをしながらこちらの様子を伺っているようだった。
ワタクシが違和感を感じたのは、その老人が読んだ本を棚に戻さず、ワタクシの目の前に乱暴に投げ捨てて棚から離れた事である。明らかに普通じゃないなと思っていたら、老人はまた引き返して来た。しかも広い通路をわざわざワタクシの近くギリギリまで寄って、明らかに摺り足でこちらの様子を伺っている。
(これは目をつけられたな)
と思ったワタクシは、早々にその店を後にした。老人は直ぐに追いかけようとしたが、ワタクシの足の速さについて来れなかったらしく、どうやら上手く逃れる事が出来た。
若し店を出るのがもう少し遅かったら、ワタクシはどうなっていただろうか。背筋が寒くなる。
本来は、内部障害を持つ人間が他の誰かに助けを求める為のヘルプマーク。
それが内部障害を持つ人間にとって却って仇になる今の日本を鑑みて、
もう日本では性善説は通用しないな…
と、つくづく感じる。