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初心者からのアカペラミックス05 各トラック初期設定

前回各トラックの処理を書くと言いましたが、トラック毎の初期設定も必要だと気付いたので、それに関して記載していきます。

トラック色分け

前回も書きましたが、絶対にやりましょう。これを忘れてぼーっとしながらミックスすると確実にミスります。これはバークリー(きわめて有名なポピュラーミュージックの大学)でも教えてるそうです。詳しくは下記。

「リードは赤」「コーラスは青」等適当な規則に基づき、色分けを行いましょう。

ゲイン設定

いきなり何のことかわからないかもしれませんが、各トラックの音量初期調整です。と言ってもフェーダーは触りません。DAWには録音済みトラックをトラック毎に音量調整する機能が実装されています。Cubaseでは「Pre」と呼ばれており、チャンネルストリップの中にあります。

ちなみにCubaseのチャンネルストリップ内シグナルフローは、下記リンクを見てください。自分が使用しているDAWがCubaseでない場合は、マニュアルを読んで把握しましょう。自分が使用している道具の機能を把握することは重要で、それをしないと無駄なプラグインばかり買う羽目になります。ぜひやりましょう。

トラックの中で音量が最大となる箇所において、RMS=-18dbFSとなることを目標にゲインを合わせましょう。これは全トラックにて実施します。

この作業を行う理由は、前回記載したリファレンス曲のゲイン設定と同じです。前回記事はこちら。リファレンス曲の設定を読んでください。

ざっくりいうと、DAWで音声を扱う上での基準となる音量はRMS=-18dbFSで、録音済み素材であろうと2ミックスであろうと一緒です。国によって多少の違い(日本:-16dbFS、アメリカ:-18dbFS、ヨーロッパ:-20dbFS)はありますが、基本的には-18dbFS近辺です。

マニアックな話をすると、この基準はプロオーディオのアナログ信号の基準である+4dbuと各国で使用されていたレコーダーのヘッドルームとの関係によって歴史的に決まってきた数値です。例えば、日本でよく使用されていたレコーダーで、RMS=+4dbuのアナログ信号をデジタル録音するとRMS=-16dbFSで録音され、RMS=-16dbFSの録音を出力するとRMS=+4dbuの電気信号が出力されます。昔はDAWなどなく、音の加工はすべてアナログだったので、レコーダーの録音出力レベルが+4dbuというアナログ信号基準レベルに一致している必要がありました。その時代の名残を引きずっているということができます。

「現代では0dbFS以下ならどんな信号レベルの録音でも扱えるから問題ないじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、アナログエミュレーション系のプラグインは基準レベルが-18dbFSとなっているものが多数あり、このようなプラグインを最もうまく動作させるためには、歴史的なお作法に則って、インプットのRMS=-18dbFSに設定する必要があります。そうしないと意図しない歪等が発生してしまい、極めてめんどくさいことになります。私の心の師匠であるVocal-Edit.comさんも同じことを述べています。詳しく知りたければ下記のリンクを読みましょう。面白いです。

なお、このリンクの中で、Vocal-Edit.comさんは下記のように述べています。

なお、モデリング系プラグインの多くも、実機同様に-18dBFS=0VUを基準レベルとする前提で設計されています。たとえばUADやWaves製品の多くは、-18dBFS=0VUを基準レベルとしています。(詳しくは各製品のマニュアルをご覧ください。)

つらつらと書いてきましたが、はっきり言ってミックス初心者には意味が分からないと思います。頭を空っぽにして設定しましょう。

フェーダー設定

ここまでの操作で、各トラックのゲイン設定は適切に完了しており、フェーダーは全く捜査していないので0となっていると思います。この時点で音を出すとマスターアウトは間違いなくRMS=-18dbFSを超えてきます(当たり前ですね)。上述と同じ理由で、マスターアウトもミックス完了時にRMS=-18dbFSとしたいため、全トラック同じ量だけ適当にフェーダーを下げます。私の場合は一律-8dbくらいに設定します。

当然ミックスのバランスはこの時点では無茶苦茶ですが、あくまでマスターアウトで適切なレベルであるRMS=-18dbFSを得るための作業なので、あまり考えずにやりましょう。どうせレベルとりなおします。

余談

ここまで行ってきた内容はゲインステージングの一環です。ゲインステージングに関しては、上にあるVocal-Edit.comさんのエントリを見てください。ここまでの作業が終われば、DAWから出る信号のボリュームはRMS=18dbFSとなり、アナログ出力はRMS=+4dbuに一致します。

実はこのアナログ出力=+4dbuは、オーディオインターフェースのアナログアウトプットを含む多くのアナログ機材において最もSNが良い領域となります。手持ち機材に最大のパフォーマンスを発揮させるため、ぜひやりましょう。私も先日DAコンバーターを新調した際に、それまで+22dbuで入力していた信号レベルを+4dbuに下げたところ、劇的に音の解像感が向上して驚きました。ゲインステージングは大事です。

次回は各トラックの処理について書きたいと思います。

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