VRChat等向けの3Dモデル頒布用ライセンスひな型「VN3ライセンス」(旧称 VNCライセンス)に関して

著・あしやまひろこ[1]

2020年4月現在の実情を踏まえて、3Dモデルを個人や同人サークルが有償・無償を問わず頒布する際に用いることができるライセンス「VN3ライセンス」、旧称「一般的バーチャル生活のためのエンドユーザー使用許諾」の「ひな型」[2]を作成しました。実際の使い方としては、モデラ―さんなどが、このひな型の個別条件部分を自分自身で改変して使えることを想定しています。

素案本体は公開サイトに記載のリンク先(GoogleDoc)にて公開しています。また、コメント機能で、ご意見や修正提案を投稿(Gitですとプルリク?って言うんでしたっけ)[3]できるようになっていますので、ぜひお願いしたいです。

<参考:飛び飛びの途中経過>
[4/27]
イギリスヨーク大学ロースクール卒・現職パラリーガルが翻訳中、コンテンツビジネスが専門領域の上場企業勤務の日中英ネイティブの香港人(清水くんの友人)により監修中(掲載の下訳はDEEPLによる自動翻訳&あしやまによる修正)
アイコン:友人のろーてくちゃんにより開発中
ジェネレータシステム:友人のen.129くんにより開発中
[5/14]
あしやま&出井甫による和文文章およびウェブサイト掲示用の文章の確認が終了し、かつジェネレータの調整が完了。
あとは、公開用ウェブサイト向けにジェネレータの権限を移管して、Googleアナリティクスを導入すればOK。
[5/15]
やっと公開ができました!&担当スタッフ情報を完全解禁しました!

5/15日に情報解禁しましたが、リーガルチェックをご担当頂いたのは、骨董通り法律事務所所属され、2020年5月現在は内閣府知的財産戦略推進事務局に出向し、参事官補佐を務められている出井甫弁護士にご担当頂きました。友人のご紹介により、プロボノで参画頂いております。

ライセンスの名称は「VN3ライセンス」となりました。これはVirtual Native 3D-model Licenseの略称です。日本語訳すると「バーチャルネイティブと3Dモデルのためのライセンス」です。

「Virtual Natives」は我々による造語ですが、これは「Digital Native」と同じように、バーチャルでの生活を当たり前のように過ごす人々というニュアンスを込めています。日本的なVの者やVRCのヘビーユーザーに対する良い英語が無かったため、英語ネイティブの意見を取り入れつつ新しく造語してみました。
というのも、この規約を作成していて頓に思ったのですが、市販品のアバターを利用している場合、その人の肖像権(のようなもの)ってどうなるのだろうと考えていたのです。そんな時に、その肖像権(のようなもの)をどう表現するかといえば、もしかすると「バーチャル市民」ないしは「バーチャル生活者」としてのバーチャルネイティブの在り方を考える必要があるのではないか、と思ったので、このバーチャルネイティブという言葉を使うことにしました。

何かの参考に本ライセンス作成の経緯も記します。きっかけは4月の15日くらい(うろ覚え)に、とある友人が3Dモデルに用いるライセンスについて、とあるひな型の採用を検討しているために、内容をレビュー[4]して欲しいという依頼があったためです。レビューをしてみると、一つの利用規約でいろいろとカバーさせたり、細かいパーミッションを考えようとした場合、自分で作ったほうがいいと思ったので作成することにしました。

4月17日の深夜と18日の日中に素案を完成させて、19日20日に、友人のモデラ―、エンジニア、VTuber等に事前確認のご協力、ご助言をいただいて再修正し、21日に素案を一般公開しました。
その後、4月25日までにおおむねの英訳と選択肢の整理を完了させ、推敲と微修正をしていました(アイコン作成と、ジェネレータ作成はそれぞれ友人が行ってくれています!ありがとう!)。
5月1日ごろに、英訳の作成について香港人の友人に相談したところで、そこからさらにつながりで、日本の知的財産を得意分野とする若手エースの弁護士先生をご紹介いただき、プロボノでリーガルチェックを行っていただけることになりました。
そこから、弁護士先生と何度もやり取りを重ね、またアイコンやジェネレータのシステムも開発が進行し、さらにチームで名称の策定や公開用ウェブサイトのデザインの検討を行い、5/14日にだいたいFIXした流れです。

いやぁ……本当に持つべきものは友人だなぁと痛感しました。あと、アイコン制作のろーてくさんは素案を公開してから、お友達になったのですが、これを機にして、ずっ友になった気がします。また、ここに個別にはお名前を記載していませんが、つよつよなエンジニアさんやモデラーさんにも草案段階でご意見を伺っていました。皆さん本当にありがとうございました。

思いついてから約1か月間で、それぞれの道のプロにご協力いただきながら、和文については完成できたと思います。本当に本当に皆さんありがとうございます。

現在は、また英語ネイティブによる英訳作業中です。

なお、完全に趣味かつ無報酬(特定の相手の相談に乗って報酬をらったら非弁行為になるからね!!)でやっているのですが、バーチャル文化発展のために寄与できたらそれで満足です。でも、もしちょっとでも役に立ったとかあればウェブサイトにあるリンクから投げ銭歓です。ドメイン料くらいは維持したいので……[5]。

[1]1990年神奈川生まれ。文学部出身で、中途採用で3年半企業法務を経験した程度なので、法律はなにもわからない。好きな法律は国立国会図書館法、好みの法律は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律。今はリサーチ業務に従事。
[2]契約書等のテンプレートは「ひな型」ということが多いですが、改めて考えると業界の方言なんでしょうか。
[3]実務ではWordが形式の標準で、レビューでは履歴機能を使うことが殆どだと思います。GoogleDocにも履歴機能あるので、自分が趣味でやるときはよく使ってます。ただ、履歴機能での他人とのやり取りはレビューか、論文の作成が殆どなんですよね……。便利だからみんなももっと使ったらいいのに。ただ、法律界隈はあまりITに強くない(弁護士の元同僚談)ので、こっちはこっちでGoogleDocとか、Diffをあまり使っていないと専らの話。法律家はDiff導入したほうが絶対いいと思うんですよ。
[4]内容をチェックすること。実際、「チェック」と「レビュー」の意味は同じだと思います。「レビュー」の発音は、宝塚歌劇団のように「レ」にアクセントがあるのではなく、英語やフランス語のように「ビュー」の方にアクセントがきます(少なくとも私の周りでは)。契約書レビューについての貝解説は、関口法律事務所さんのコラム(https://sekiguchi-law.com/post-1547/)がとても良い感じです。
[5]ひな型の公開は、一般的に使われるものを公開しているのであって、個別具体的な対応をしているものではないため、非弁行為には該当しないです。もし該当してしまったら、契約書の例文集を売ってる法律関係の出版社が潰れますから。

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