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銅線窃盗犯との戦い 2014~2023

銅線は埋設してあっても引込柱~集電箱の両端が切断され抜かれる

2014 最初の被害体験-牛久(千葉県)の発電所

私は当時Looopで遠隔監視装置”みえるーぷ”の事業立上げ~運用を担っていた。ある日オーナさんから「クラウドサービス上でグラフが出ていない」と連絡を受けた。

「遠隔監視装置」とは、発電所が正常に稼働しているか、どれだけ発電しているかをインターネット経由でグラフや数値で確認できる装置である。

当時みえるーぷは監視装置がまれに停止することがあり電源OFF/ONで復旧する必要があった。(停電や通信会社の工事が原因で停止というケースもある。)
現場方面に工事部隊がいたので帰りに立ち寄ってもらったら電線が切断、持ち去られていたことが発覚。
オーナがDIYで設置した警報装置があったが通電が止まったことにより作動しなかった模様。
隣接する太陽光発電所予定地でも着工寸前の資材が盗まれていた。

その後、毎年数件ずつ千葉、群馬の監視装置ユーザ企業から盗難被害報告を受けるようになった。 1年1回のペースだったのが年々半年に1回、毎月、どこかで「盗難被害にあった」「安く効果のある対策がないか?」と報告、相談を受けるようになる

センサー式警報装置

□盗難被害に遭うと新築工事よりも手間がかかる
警察の聞き取り対応、オーナさんに被害状況説明や被害届、保険適用のための資料提供、復旧見積もり作成など工数がかかることを体験。
この当時の防犯カメラでインターネット対応の製品は存在せず、リモート監視したい場合光回線が必須だった。導入&運用コストも高額で低圧発電所にカメラ導入は現実的ではなかった。「検知」機能はなく見張るだけ、または現地の様子を確認する”お天気カメラ”としての用途でしかなかった。

2018 遠隔監視+防犯カメラ製品リリース

2017年から遠隔監視装置SmartPVに関わる。
監視装置+出力制御装置の2in1製品に続いて、防犯カメラの機能を加えた製品の企画があがった。国内外の防犯カメラを数社2ヶ月検証した結果、HIKVISIONの製品に決めた。性能、価格、扱いやすさが揃っていた。そこから出荷まで人間に反応する検知機能の味付けに3ヶ月かかった。
カメラ+ルータ+遠隔監視装置のパッケージ製品 TK-C50-12(TK-C40-12)として販売開始 

プロトタイプTK-C50-12のカメラ

2019年 テック マツモトを開始

複数の電気工事屋さん・O&M企業から「機器類設定に数日間かかった」「カメラだけ安く追加したい」「監視装置を使えこなせない」という声を聞き、『TAOKE社員としては助けられないけど、個人的にならアドバイスするよ』 と彼らを支援するために『IT機器が苦手な電気工事会社の代わりにカメラやルータ設定/IT指南を担う』個人事業をスタート。

防犯カメラのチューニングサービスを開始

人間の動きを捉えて通知する検知設定は画像の真ん中あたりに設定すればよい と考えていたが、必ずしも犯行の位置や通路がそこでなかったり、動体検知だと雨や虫に反応し誤検知することが少なくなかった。

精度を上げるため設置後に画角にあわせて検知機能を調整をする必要があった。リモートで調整する手段を考案しサービスを開始した。

カメラを4台、出力制御装置もつなげられるサンプル構成

2022 普通の防犯カメラでは 犯行を阻止できない

うすうすと、犯人がカメラを警戒/気付かなかったら盗難は防げない、検知しても警察に連絡できなければ盗難を防げない、ブレーカ落とされたら記録残らない と危惧していた。普通の防犯カメラではせいぜい証拠映像を撮ることしかできない。ダミーカメラと結果が同じなら導入する意味がない。
 「発電所に侵入させない」
 「ケーブル(銅線)を切らせない」

を実現する次の手を考えていたところ、防犯カメラを設置していた西水沼の発電所で盗難が発生した。
Hik-Connectアプリに通知された犯行写真が夜中に届いていたが気付かなかった。
その動画をTwitterに上げたらフジテレビから連絡が来たので、EPCのトータルインプローブさんにアテンドしたところ取材が入り放送された。

フジテレビ ライブニュース イットのオンエア映像 2022/10/3 

警報カメラの登場 

防犯カメラの弱点を補う策を模索していた折、同カメラメーカーのウエブサイトを見ると、夜間もカラー映像でスピーカー/マイクが付いた製品がリリースされたことを知る。これまでオプションだった警報とフラッシュ機能がカメラに搭載されているという。

さっそく検証し”つかえる”と手応えを感じた。最安モデルでも人間の侵入を逃すことなく、誤検知は9割減暗闇でも昼間のように明るくできる。
勝手に『警報カメラ』と命名し、以降このタイプのカメラのみ扱うことにした。

警報カメラ 銅線窃盗の撃退に成功

警報カメラを30台程メーカーのハイクビジョンジャパンから仕入れた。チューニングし、EPCに出荷、取り付け後リモートで画角にあわせて検知設定を施すという作業を地道に続ける。

2023年9月27日フェンスを越えた窃盗犯がサイレンに驚き逃げていく様子が記録されていた。

フジテレビ ライブニュース イットのオンエア映像 2023/9/28 

この放送以降、問い合わせが増えたが導入件数は微増。
防犯カメラ設置済みの発電所での入れ替え・追加需要があった。

この事業に専念しようとTAOKE社/TAOKE ENERGY社をQuit

続いて10月29日 西水沼での侵入未遂も警報で撃退に成功。

旧型防犯カメラから警報カメラに入れ替えたところだった。

10月28日 チューニングが甘く撃退失敗 反省と改善

多くは「敷地内に入って3秒後に警報を鳴らす」/「フェンスの下のラインを越えたら警報を鳴らす」 という設定をしているのだが、『フェンス上で引き込み線をカットし、銅線を敷地外へ引っ張りぬく』という想定外のパターンだったため警報が機能しなかった。犯行現場がパネルの陰になる部分になりそう という想像力があれば違う検知パターンも設定するべきであった。
この1件以降、あらゆる行動パターンを想定し、検知機能を複数組みあわせ倍の時間をかけて検証するようになった。

フジテレビ ライブニュース イットのオンエア映像 2023/11/1

この犯人は日本人で近くのコンビニで警察の職務質問に合い、車から銅線、ケーブルカッターを押収された。カメラの動画は証拠映像として警察に提供した。

今後の課題

警報カメラが普及したら、警報音だけでは犯行を止めないケースも出てくるだろう。犯行検知したらすぐに警察か誰かが駆けつける体制を構築しないといけないと考えている。

いま、できること

テックマツモトは通信/ITエンジニアの立場で、銅線盗難対策を模索しているが、警報カメラ設置だけでは不十分だと考えている。

警察への連絡体制

盗難に気づいたら最寄りの警察署に連絡し、発電所の場所を正確に伝えられるか。所有発電所がパトロールの対象になっているか。

群馬県警が前橋の発電所を週1回パトロールしてくれている様子

保守会社との協力体制

発電所管理は保守会社に任せっきりではいけない。管理はオーナー主導なのか/役割分担は明確になっているか。

現在の協力体制

ケーブル切断を防ぐ対策例

  • 銅線をコンクリーㇳで固める/単管や鉄枠で囲む/引き込み柱を柵などで囲む

  • 鍵を交換する(分電盤、集電箱、キュービクル、エンクロージャー)

銅線を単管に通し足元をコンクリートで固めて銅線の露出をなくしケーブルカッターでの切断を防ぐ しかし銅線カットしたが抜き取れず諦めて放置し逃走というケースもある。
露出部を完全にガードしないと防ぐことはできない。

提言  銅線の買取制限が必要

使用者が不要物を廃棄する際、運搬業者名、処分業者名などを記載した産業廃棄物管理票=マニュフェストの制度がありますが、銅線を買取る業者はどこから排出されたモノなのかを確認して買取る”逆マニュフェスト”の制度があれば抑止できるはず。

2014年頃に産廃屋に錆びた架台部品を持ち込んだことがあったが、会社名や名前も聞かれず伝票と現金を渡され簡単に現金化できたことに驚いた。

最後に

太陽光発電所を守ることは、電気という社会インフラを安定させ、日常の暮らしや産業を支え発展させることにつながっている との思いで自分の立ち位置でできることを全力で取り組んでいます。

↓戦いは続く


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