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凡豪の鐘 #29


〇〇:....だーかーらー、俺は良いって!

美月:えー....行こうよー!!

〇〇:折れてる足で行きたくねぇんだって!

美月:でも夏祭り行かなかったら夏休みの意味ないじゃーん!


二人は家であーだこーだ喧嘩をしていた。律から電話で夏祭りに行かないかと誘われ、その場で〇〇は断ったのだ。

理由は足の怪我。人混みの中を松葉杖で歩きたくなかった。


美月:ねぇ...一緒に行こうよぉ...

〇〇:ぐっ...//


そんな上目遣いをされたら、断りづらい。


〇〇:い、いや....だから...一人で行ってくりゃ・・

美月:〇〇も一緒に行こ?

〇〇:うぬぬぬ.....

美月:ね?

〇〇:...くそっ! わかったよ!行く!

美月:やったぁ!


美月はその返事を聞いた瞬間、即刻部屋に戻り準備を始めた。


〇〇:はぁ....なんか俺甘くなってないか?

〜〜

ガラガラガラッ 時刻はもうすでに夕方。夏祭りの準備をするべく〇〇と美月はとある所へ向かった。


〇〇:こんちは〜。

秋元:あ!〇〇君!.......と...お隣にいるのは?

美月:あ、こ、こんにちは。山下美月って言います。

秋元:美月ちゃんね? ....えーっと...〇〇君の彼女さん?

美月:彼女じゃないです!友達です!

〇〇:そんな食い気味で否定すんな。

秋元:仲良いのね笑 で?何の用で?

〇〇:アキ姉さぁ、浴衣持ってたよね。美月に貸してくんね?

秋元:あー...今日夏祭りだっけか。よし!任せて!美月ちゃんこっち!

美月:うわっ! 


真夏は美月の手を引っ張って店の奥へと連れていった。


〇〇:じゃ、先に行ってろよー。俺も後から行くからー。


〇〇は店を後にした、

〜〜

真夏は手際良く美月に浴衣を着せていった。


秋元:〇〇君さ、足怪我してたけど、なんかあったの?

美月:あぁ.....言っていいのかわかんないですけど..いじめられてた子を助けたら、返り討ちにあったみたいです。

秋元:えぇ!? もう....変わってないなぁ笑

美月:そうなんですか?

秋元:うん。ずっと変わらないよ。喧嘩なんて強くないのに突っ走ってさ笑 よく怪我の手当してたよ笑

美月:あはは笑

秋元:でも全部人の為。友達の為に喧嘩してた。

美月:そう....なんですね。でもなんとなくわかります。

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ガラガラガラッ


〇〇:蓮加ー!


〇〇は岩本書店に訪れ、蓮加を呼びつけた。


蓮加:....もう....なにー!


奥の部屋から蓮加の声が聞こえる。


〇〇:美月が夏祭り行こうだってよー! 

蓮加:.........夏祭り......〇〇は来んのーー!!?

〇〇:俺も行くー! 一時間後に集合なー!

蓮加:あ、一緒に....ボソッ  わかったーー!!

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夏祭り会場


会場は人でごった返していた。田舎といっても、この地域の神社は割と有名な為、人が結構訪れる。


律:....今年も人多いなー!

茉央:....そうやなぁ.....

律:〇〇が来ないからって、しょんぼりすんのやめろって笑

茉央:....だってぇ....トントンッ

茉央:ん?


不意に肩を叩かれ、後ろを見ると


〇〇:よーっす。

茉央:わっ! 〇〇やん!

律:おー! なんだよ、行かないって言ってたのに。

〇〇:美月が行きたい・・じゃなくて、美月に誘われてさ、俺松葉杖で歩きにくいんだけど.....

律:そうか笑........ん?お前美月さんの事...山下って呼んでなかった?

〇〇:へ?...あ、あー...長いから美月って呼ぶことにした。

律:1文字だけじゃん笑 

茉央:........ま、〇〇?

〇〇:ん?

茉央:ゆ、浴衣着てみたんやけど....似合う?

茉央は、少し恥ずかしそうに一回転して全貌を見せた。その姿は目を奪われる程美しかった。


〇〇:あ、その...か、可愛いと思う//

茉央:...えへへぇ// ありがとうな//

律:ぷっ笑 あはははは笑

〇〇:な、何笑ってんだよ!

律:反応が童貞すぎる笑

〇〇:お前も童貞だろうが!

律:あはは笑 ごめんごめん........あ。

〇〇:ん?


律の目線が自分の後ろから動かなかった。会場にいる数人もそこに目線を寄せている。


美月:お待たせ!

蓮加:これ...歩きにくい...


目線の先には、浴衣を羽織った美月と蓮加がいた。周りがあまりの美貌にザワめいていた。


美月:どう?似合う?


美月が少し不安そうに聞く。


〇〇:ん、に、似合ってる//

美月:良かった!

〇〇:ん?


後ろから、自分も一応着てきた綿麻甚平の袖の裾が引っ張られているのに気づく。

少し視線を落として後ろを振り返ると、蓮加が立っていた。


蓮加:わ、私は?

〇〇:え?

蓮加:私は似合ってるかって...聞いてるの//

〇〇:え、あ、うん。似合ってるよ//

蓮加:.....ふーん...へへ// 良かったボソッ//

律:じゃ、花火まで時間あるし....なんか食べよっかー。


胸の奥の奥が、くすぐられているような気持ち。夏のせいなのかはわからないが、どこか落ち着かない感情のまま、人が溢れる神社を松葉杖をつき進んで行った。

〜〜

美月:あ!〇〇!チョコバナナ食べたい!

〇〇:うん。食え。

美月:買って?

〇〇:あぁん?なぜ俺が金出すんだよ。

美月:だって〇〇の方がお金貰ってるし。料理とかも・・

〇〇:あーあー!わかったわかった。はぁ.....ほら列並ぶぞ。

〇〇:チョコバナナ買ってくる。ちょっと待ってて。

律:はいよー。


〇〇と美月はチョコバナナの列に並びにいった。


蓮加:.............。

律:なーんか...あの二人距離近い気がすんだよなぁ....なんかあったのかな。

蓮加:......知らない。

茉央:お兄!たこ焼きあるで!買いに行こ!

律:お!まじ!? ....ごめん蓮ちゃん、ちょっとここで待っててくれる?

蓮加:.......ん。わかった。

律:ありがと〜。

〜〜

〇〇:....もしかして、俺に金払わせる為に引っ張り出してきたろ。

美月:えー? ナンノコトカ、ワカンナイナァ。


二人は列に並びながら話していた。側から見ればその様子は、カップルさながらだった。


〇〇:嘘が下手だな笑 .........美月さ、お金とかどうしてんの?

美月:お金?お金は保護施設の人が月に少しだけど送ってくれてる。

〇〇:へぇー....良い人達だな。後で挨拶しに行かないと。

美月:なんでよ笑

〇〇:美月が作ってくれる料理の具材もその人達が送ってくれてるお金で買ってるんだろ?だったら俺の体の半分は、その人達で作られてる。

美月:あっはは笑 何言ってんの笑

〇〇:........美月はさ、夏祭り来たことあんの?

美月:それが....今日が初めてなんだよねぇ。

〇〇:まじ?

美月:だからすっごい楽しいの笑 なんだか...青春!って感じがしてさ。

〇〇:はは笑 .....でもなぁ....こういうのは好きな人と来るともっと楽しいんだぞ?

美月:えー.....じゃあ、今日だけは私の彼氏になってよ。

〇〇:な、何言ってんだ//

店員:次の方〜。


そんな話をしていると順番が回ってきた。

〜〜

〇〇:うわ.....人増えてんな....


花火の時間が近づくにつれて人が増えていた。二人はチョコバナナを持って律達を探す。


〇〇:あいつら...どこ行ったんだ?

美月:あ!蓮加いた!

〇〇:あ!ちょ....待っ・・


美月は蓮加を見つけたのか、走り出して行ってしまった。松葉杖では当然追いつけるはずもなかった。

毎秒毎に人混みは移り行き、同じ形はしていない。数秒後には美月の姿はもうなかった。

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律:はぐれちゃったなぁ...笑

茉央:そうやなぁ....私がたこ焼き買いに行こうなんて言ったからかな。

律:いや、俺も食べたかったしな笑


律と茉央はたこ焼きを買ってきたら、蓮加どころか美月と〇〇の姿もなかった為、神社の境内に行き、出来るだけわかりやすい位置で待っていた。


律:ま、連絡はしといたし、いずれ来るだろー。

茉央:........ん?....あれ...〇〇や!〇〇〜!

〇〇:え?.......あ!いた! 良かった。会えた笑


茉央が一人彷徨っている〇〇を見つけ呼んだ。


律:あれ?美月さんと蓮ちゃんは?

〇〇:いやー、それが人混みに流されてはぐれちまってさ。

律:まじかよー。

??:.....あ、あれ? 〇〇君に律君に...茉央ちゃん?


自分達の前を通り過ぎた女性に声をかけられた。


律:え........あ....み、美波さん....

美波:夏祭り、来てたんだね!


声を掛けてきたのは、美波だった。


律:夏休み中、げ、元気だった?

美波:う、うん!元気だったよ。

律:今日は...一人で来たの?

美波:ううん。友達と来たんだけど...はぐれちゃって....今探してるの。

律:そ、そうなんだ。

〇〇:..............。

茉央:................コクッ


〇〇と茉央は目を合わせ、頷き合った。


〇〇:じゃあ、律。お前一緒に探してあげたら?

茉央:うんうん! その方がいいよ。

律:え?

美波:で、でも....〇〇君達と来たんじゃないの?

〇〇:いや、俺らたまたま会っただけなんだよ。....よし!じゃ、茉央そろそろ花火の場所取りでもすっかー。

茉央:わかった〜。じゃ、お兄、ちゃんと探してあげるんやで〜。


そう言って〇〇と茉央はその場を去って行った。


律:あ、えっと......じゃ、じゃあ探そっか。

美波:ありがとう//

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〇〇:あいつら....付き合うんかな。

茉央:どうやろうなぁ笑 お兄ビビリやからなぁ....

〇〇:じゃあ二人にしない方がよかったかな笑

茉央:いや、あんくらいしないとダメや.....それに...〇〇と二人きりになれたし//

〇〇:は、恥ずいこと言うな//


二人は再度連絡をし、そのまま花火会場で落ち合おうということになった。

茉央:まだ時間あるしさ、どっかで座って話さへん?

〇〇:ん、あり。松葉杖そろそろ疲れてきたし笑

茉央:じゃ、あそこ座ろー。


茉央が指差したのは比較的人通りの少ない、会場からは少し離れた場所だった。


〇〇:んしょ....ふぅ.....

茉央:よいしょ.....あー....足疲れてもうた笑

〇〇:人多いもんなぁ笑 

茉央:たこ焼き買ったんやけど....食べる?

〇〇:え、いいの?

茉央:ええで、ちょっと待ってな? 


茉央は買っておいたたこ焼きを取り出し、つまようじで刺して手に持った。


〇〇:ん、ありがとう。.....え?くれないの?


茉央は〇〇に手渡すことはなかった。


茉央:あ、あーんや//

〇〇:えぇ!?

茉央:茉央にされるの....嫌なん?


何故女子の上目遣いというのはこんなにも破壊力があるのだろう。


〇〇:わ、わかったよ。ほら、あー.....あづっ!!

茉央:ぷっ笑 あはは笑 熱かった?笑  

〇〇:あっつ......ん、うまい。

茉央:へへ笑 良かった笑 ......あの...〇〇からも.....あーんして欲しいんやけど....//

〇〇:あ、、うん。わかった// (茉央って....こんな可愛かったっけな...)

〇〇:はい....あーん。

茉央:あーん....んむ...ん、美味し笑

〇〇:お、良かった笑 俺が作ったわけじゃないんだけどな笑

茉央:〇〇があーんしてくれたから、美味しいんやで?

〇〇:え、あ.....そうかな笑 (あれ...やばい...茉央の方見れねぇ..)


何故だろう。茉央の方を見ると、鼓動が止まらない。

茉央:なぁ...〇〇...こっち..見てや。

〇〇:いや....今ちょっと.....ん!


茉央は〇〇の頬を掴んで、自分の方を向かせた。


茉央:〇〇は....茉央の事、友達としてしか見れへん?友達の妹としか見れへん?

〇〇:い、いや......そんなことは....

茉央:.........嘘や。

〇〇:.....ん。ん!


茉央は掴んでいた手を首に回して、〇〇に優しく口付けをした。

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              To be continued



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