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凡豪の鐘 #33
〇〇:な、なんでここにいんの?
茉央:え、えーっと....ちょっとお出かけでもしようかなーって...
〇〇:そ、そうか....友達と?
茉央:ううん。一人。〇〇は?
〇〇:俺も一人だけど....
ピロンッ LINEが入る。
律L:美波さん来たから、このまま電車で△△町まで行くから。
〇〇L:わかった。
LINEを打ち終えてスマホから目を離すと、茉央もスマホで何かを打っているようだった。
〇〇:あー....茉央、これからどこ行くんだ?
茉央:えっと....△△町やけど..〇〇は?
〇〇:俺も一緒。一緒に行くか?
茉央:ええの!?
〇〇:いいよ。行こ。
尾行するにしても茉央といた方がバレた時に言い訳がつくと思った。行き先が違ったら適当な所で別れようと思っていた。
〜〜
休日の昼頃、△△町は大きな町で付近の学生や大人も休みになれば大体△△町に出向く。
〇〇は美波と律が乗っている車両から2車両開け乗り込んだ。
〇〇:うぇ....人多いな。
休日ということもあり中々に人が多かった。密になっている車両へ先に乗り込み、茉央を扉側に乗り込ませた。
扉が閉まり、茉央は扉に背中をつけ、〇〇と対面する形になる。
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茉央:///
〇〇:(やっぱ....こいつめちゃくちゃ可愛いな...)
シューー ガタンゴトン ガタンゴトン シューー
線路上で電車がカーブする。吊り革を掴んでいない乗客はカーブに釣られ、蹌踉ける。
〇〇:うおっ!
後ろの乗客に押され、〇〇は前のめりになった。
〇〇:ったく......あ....
目の前にあったのは茉央の顔だった。
茉央:.....近いね//
〇〇:くっ// ご、ごめん。
これだけ顔が近くなってしまうと、否が応でも思い出してしまう。あの夏祭りでの出来事を。
〜〜
あの日の夏祭り
〇〇:な....何して//
今、俺はキスをされた。しかもとんでもない美少女と。
茉央:....ごめん....勢いでしちゃった....
こっちはこんなにも恥ずかしがっているのに、してきた側の茉央は少し悔いているようだった。
茉央:〇〇の気持ちも考えんと...我慢出来んくて...
茉央:き、嫌いになった?
少し泣きそうな目で問うてくる。
〇〇:い、いや....嫌いになんてならないけど...//
茉央:良かった....今のキスは無しってことにならんかな....
〇〇:え?
茉央:〇〇と付き合えた時に....ちゃんとキスしたいから///
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風に靡く茉央の髪と、小さな頃とは違う茉央の表情を見て、胸が痛くなった。
もう小さな頃の茉央じゃないんだ。何も出来なくて後ろをついてくるだけだったあの小さい茉央じゃないんだ。ちゃんと...成長しているんだ。
俺も、いつまでも過去に囚われてちゃいけないんだと。そう思った。
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プシューー 電車の扉が開く。
律:着いたね。
美波:.......うん。
楽しいデートの始まり....な気がしたのに。会った時から美波の元気がないように思えた。
律:.....なんかあった?
思い切って聞いてみることにした。
美波:......なんかあった?じゃないよ....
予想外の答えが返ってきた。
律:ご、ごめん....なんかしちゃったかな...
美波:せっかく...せっかくのデートなのに全然こっち見てくれないじゃん!
駅のホームに少し大きめの声が響いた。
実際その通りだった。待ち合わせをした時から緊張してしまって美波をあまり見れていなかった。
律:ご、ごめ.......ん....
謝ると同時に意を決して美波の方を見た。
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目の前に立っていたのは、とても高校生とは思えない。大人びた女性が立っていた。背も高くお洒落で、まるでモデルのようだった。
律:うわ......綺麗....
荘厳な景色を見たかのような感想が口から出ていた。
美波:.......ぷっ笑.....あはははは笑 何その感想笑
律:いや....ごめんつい笑
美波:あはは笑 ありがと。じゃあ...行こっか?怒ってごめんね?
律:あ....うん//
律は美波の後を追うように着いて行った。
〇〇:(......あいつリードされてんじゃねぇか笑...)
茉央:これから〇〇はどこ行くん?
〇〇:あ......えーっと....
どこに行くかは決まっていない。なぜなら律の監視が目的だからだ。
ブーッ スマホに通知が入る。どうやら茉央にも通知が来たようだった。
律L:これから映画見ることになった。恋愛映画。
〇〇L:俺恋愛映画得意じゃねぇんだけど....まぁいいや。わかった。
〇〇:俺この後映画見るけど、茉央は?
茉央:え!? 〇〇も!?
〇〇:え、茉央も?
茉央:う、うん.....最近話題の恋愛映画なんやけど...
〇〇:あー....俺もだ笑
茉央:〇〇って恋愛映画なんて見るタイプやっけ?
〇〇:んー笑 なんか見たくなってさ笑 まぁいいや。行こうぜ。ガシッ(早く行かないと見失っちまう)
茉央:あっ//
〇〇は人が多い駅のホームを茉央の手を繋いで、進んでいった。
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映画館
律:結構混んでんだなぁ....
美波:話題なんだよ?この映画。
律:へぇー....恋愛映画とか初めて見るかも...
美波:デビューだね笑
〇〇:(やっべぇ......あいつ席どこか教えとけよ...)
運悪いことこの上なく、律と美波の後ろの席に〇〇と茉央という順番になった。
〇〇:(これバレるだろ....茉央も気づくってこれ...)
少し目を瞬かせ、隣に座る茉央を見ると、かなり慌てふためいた様子だった。
〇〇はまだ気づいていない事を加味して聞いてみることにした。
〇〇:.....茉央?どうした?ボソッ
極力声を抑えた。
茉央:え、え?あ.....あの....楽しみやなぁって思って....
手を胸の前でブンブン振りながら答えた。
〇〇:そ、そう......(気づいてないのか?)
映画館が暗くなり、モニターには撮影禁止を促す男が踊り始めた。
律:あ、始まる。
美波:そうだねー....
〇〇:(まぁ...バレてないならいいか)
少し不安な気持ちを残しながらも、映画を見ることにした。
途中、あれ?映画館では話しないんだし、俺見る理由なくないか?などと思ったりもしたが、野暮だと思ってやめた。
〜〜
映画もクライマックス。主人公の気弱な男性とヒロインの女性のキスシーン。
律:(うわ........え!?)
キスシーンに驚いていると、左手に柔らかい感触を感じた。
美波:////
映画のかすかな明かりでもわかるほど美波の顔は赤く染まっていた。
今、俺の手は美波に握られている。手を繋ぎながら映画を見ているんだ。
〇〇:(はっ.....ありがちなストーリーだな...でも....キスシーンはなぁ....)
キスシーンと聞くと、反射的に思い出してしまう。
ちらっと茉央を見ると、両手で顔を隠しながら指の隙間で映画を見ていた。
〇〇:(.......ヒロインより茉央の方が可愛いじゃねぇか....)
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映画が終わり律達が席を立った。〇〇は咄嗟に頭を屈め、椅子に座りながら土下座をしているような格好になった。
〇〇:(やべぇ....これ絶対茉央に変に思われる...)
少し時間が経って、前の方から音が聞こえなくなってようやく気づいた。
〇〇:......茉央、何してんの?笑
茉央:ま、〇〇こそ!
茉央は〇〇とまったく同じ格好をしていた。
〇〇:お、俺はちょっと落とし物しちゃってな....
茉央:ま、茉央もや....//
〜〜
〜〜
律L:カフェ行くことになった。
律から文章と位置情報が送られてきた。
〇〇L:はいはい。別に俺いなくても順調に進んでね?
律L:いやこっからが会話増えるから不安。
〇〇L:わかったわかった。
〇〇:なぁ...茉央これからどうすんの?
茉央:私はこれからカフェ行こうと思ってる。
〇〇:か、カフェ!? ば、場所は?
茉央:テゾーロって店なんやけど...
〇〇:テゾーロ.......あぁ...俺もそこ行く予定だわ...
茉央:また一緒!
律から送られてきた位置情報からは"テゾーロ"とはっきり表情されていた。
〜〜
TESORO
〇〇と茉央は磨りガラスと木で作られた壁で隔てられた席に座った。隣は律と美波だ。
〇〇:ふぅ.....(これならバレないし...ちょっとゆっくり出来そうだな)
茉央:〇〇何食べる?
〇〇:んー...とりあえずアイスコーヒーかな...
茉央:コーヒー飲めるん?
〇〇:うん。甘いの苦手だからさ。
茉央:え....甘いの苦手なんや....
急に茉央は困り眉を浮かべ、悲しそうな顔をしている。
〇〇:ど、どうした?
茉央:......これ食べたかったんや...
茉央が指差したメニューは「カップル限定 特大パンケーキ!」だった。特大と言っても二人で全然食べ切れる量。
それよりも気になるのは
〇〇:......カップル限定って書いてるけど....
茉央:.....あかん?
どうしても食べたいという目で見てくる。
〇〇:.....まぁ...カップルに見えるか。
茉央:へっ!?//
〇〇:いいよ、食べよ?
茉央:やった!
テーブルにある呼び出しボタンを押す。少し経って店員さんが来た。
店員:はい!お決まりでしょうか!
〇〇:えっと、いちごミルク1つとアイスコーヒー1つ。それと.....この..カップル限定のパンケーキください。
店員:わかりました!では....証明をお願いします!
茉央:しょ、証明?
店員:はい!カップルかどうかの証明です!
〇〇:な、なにすればいいんですか?
店員:どこでもいいのでキスをお願いします!口でも頬でも良いので!
茉央、〇〇:は!?
なんだこの店は。嘘だろ。ちょっと待ってくれ。
〇〇:い、いやー.....ちょっとそれは.....
否定気味の言葉を並べてようとする。その前に茉央の方を見ると、対面に座っていた茉央が、自分の目の前まで来ていた。
茉央:チュッ
〇〇:なっ!?//
頬に柔らかい感触を感じた。頬にキスされたのだ。
店員:証明ありがとうございます!少々お待ちください!
店員さんは笑みを浮かべて去って行った。
茉央:い、今のもノーカウントで......パンケーキの為やし//
〇〇:あ、え、うん///
〜〜
美波:何頼む?
律:うーん.....悩むな....(ここは何頼むのが正解なんだ...)
律がテーブルの下で〇〇にLINEを送ろうとしたその時だった。
「カップル限定のパンケーキください」
隣の席から声が聞こえた。カップル限定のパンケーキ?そんなのがあるのか。
対面に座っている美波を見ると、どうやら美波にも隣の席の声が聞こえていたらしい。
美波:あ、あの....カップル限定のパンケーキ...食べない?
律:お、俺も食べたいと思ってた!
食い気味に答えてしまった。その焦りを消すかのように呼び出しボタンを押した。
店員:はい!ご注文お決まりでしょうか!
律:アイスティーと....
美波:いちごミルク一つ。
律:それと....カップル限定のパンケーキください。
店員:では、カップルの証明をお願いします!
律:しょ、証明?
店員:はい!口でも頬でもいいのでキスをお願いします!
美波:キ、キキ、キス!?//
店員:はい!それがカップルの証明になります!
律:ま、まじか......
店員さんに向けていた目を美波に移す。いつも凛としてかっこいい美波は顔を赤くし慌てふためいていた。
律:.....よし。美波、こっち向いて。
美波:え? あ........
律:これでいいですよね?
店員:はい!では少々お待ちください!
律は美波の頬にキスをした。美波は顔をさらに赤くさせ気絶寸前だった。
〜〜
コーヒーが届いたが、口をつけられない。というか顔の火照りが抑えられない。
茉央:飲まへんの?
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〇〇:え、あぁ、飲むよ....
さっきから茉央の方を見れない。茉央が可愛く見えて仕方がない。なんだこれは。
〇〇:ちょ、ちょっとトイレ行ってくるわ。
茉央:あ、うん。わかった。
〇〇は逃げるようにトイレへ向かった。
〜〜
〇〇:ふぅ.....よし!
一旦落ち着きを取り戻してトイレを出た。
美波:あ.....〇〇君?
〇〇:あ..........やぁ....ぐ、偶然だね....
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To be continued